登山者情報498号

【2000年08月27日/石転ビ沢〜梶川尾根/木内茂雄(単独)調査】

タイム
飯豊山荘02:55→03:25温身平→03:55ウマイ水清水04:15→05:30石転び出合→05:40雪渓末端06:00→07:20黒滝07:30→08:20梅花皮小屋→11:10→11:30北股岳→12:40扇ノ地紙→13:00ケルン→13:10梶川峰→13:40五郎清水→14:00滝見場→14:35湯沢峰→15:35飯豊山荘
記録
前日、芝の上のつき合いが有ったので日帰りを計画した。今山行の目的は唯一つ、イワインチンの写真を撮る事だ。先週はやっと咲き始めだったので、今週は盛りだろうと登った。昨日の夜、天気予報は快晴に変わったので何の心配も無く朝早く出発する。
飯豊山荘のゲ−トを出発する時の夜空には星が見えなかった。朝霧だろうと天気予報を信じ、ライトを点けて砂利道を歩く。何も見えないがライトに照らし出されるブナの木の“白い幹”の太さに改めて驚く。日中は他にも何か見えるので気にしなかったせいか。ライトの先を唯、唯見て歩く。ウマイ水清水で一服し、食欲は無いが無理してオニギリを1個食べる。汗ばんだ体を冷やしながら、空を見上げると三日月と星が輝いていた。快晴間違い無し。この頃より周りが明るんできた。梶川出合近くでライトを消す。梶川出合の雪は先週より少なく、ほんの一寸ではあるが、かえっていやらしい雪渡りがある。まあ、落ちても打撲傷程度かもしれないが注意が肝心。もう1週間もすれば雪が無くなり歩き易くなるだろう。赤滝を過ぎてだったろうか?登山道が岩場の斜面で高度をかせいでいる時、草付きが雨で崩され、足場が少し悪くなっていた。
石転ビノ出合に着いた時には完全に夜は明け、稜線には梅花皮小屋がクッキリと見えた。門内小屋は朝霧の中で見えない。出合の雪は相変わらず多く、本流は雪の下、雪の上を石転び沢の方へとトラバ−スする。そして、右岸で夏道になり、暫く歩いてから雪渓の末端となる。此処で一服しながら軽アイゼンを付ける。今時は雪がスプ−ンカットになっているので、アイゼンなしでも登れるが一般の人は付けた方が安全である。雪渓の上は、稜線から吹き下ろして来る風で、先程までの汗かきとは別世界、心地良い登りである。そのせいか、十日前に来た時とは大違いで高度が稼げる。ワンピッチで雪渓を登り切り、黒滝に着いた。
雪渓全般に亘ってクレパス、穴とか見当たらず問題無く、上部末端も危ない処無く夏道に移れる。今年は残雪が本当に多いと思う、新雪が降るまでどの位残るだろう?アイゼンを外し、沢水でアイゼンを洗いながら稜線を見上げる。今日は余裕が有るせいか直ぐ近くに見えるし、花を見回す事も出来る。しかし、夏の花は終わりで少し有るのはミヤマキンポウゲ、トリカブト、梅花皮小屋近くでオタカラコウ、コバイケイソウ等である。テント場直下でODDと同行の二人とすれ違う。そしてテント場に出るとまだ残雪が有り、この融雪水が相変わらず登山道に流れ出ている。何時まで残るだろう?
小屋に着いて早速、管理人の関氏(JN7OTJ)に冷やした泡を出してもらう。なにはともあれ“花より泡”だ。今日は二本目が美味く、そして、さらに三本目が美味かった。一段落した処でイワインチンの撮影に出る。予想通り満開だ、デジカメで撮り、そして、本格的に三脚をたて、重い思いをして持ってきたカメラに収めた。それから、小屋の傍にはハクサンイチゲが狂い咲きしていた。これで、今回の目的は達成と満足していると、OTJが“あそこに白のトリカブトがあるよ”と言うのでそこに行って見た。成る程ある、四〜五本ある。言うまでもなく二つのカメラに収めた。これは予定もしない大収穫であった。ついでに傍に咲いていたウメバチソウも撮った。後は安心して、小屋に戻り一眠りした。
3時間もノンビリしてから、今日最後の本格的登りの北股岳に挑戦した。まだ、余裕だ、洗濯平を見ると、十日前と変わり無い位残雪が残っている。後ろを振り返り梅花皮岳をバックに小屋を撮る。また、途中立ち止まってウメバチソウも撮る。頂上に着き周りを眺める。天気は良く遠くには朝日連峰が浮かび上がっているし、飯豊連峰も見渡せる。食事を作っている男性に挨拶をし、門内方向から登って来る男子をモデルに門内岳を撮り、休む事無く下った。そして、途中で20〜30代の単独行の美人とすれ違った。そして、OTJに期待を持たせる無線連絡をした。しかし、後で判ったことだが頂上にいた男性と二人連れだったそうだ。お気の毒でした。
ギルダ原辺りでトリカブトの群生が満開だったので、デジカメに収める。重いカメラを取り出すのは面倒くさいのでやめた。門内小屋の管理理人は引き上げた様で、管理人室の窓は閉まっていた。そうなるとトイレも閉まっているのだろうか?避難小屋なので、通年開けておいてもらえばと、思うが。
ちなみに梅花皮小屋は、9月4日に管理人は引き上げる予定だが、汲み取り式トイレは通年開けておく。そして、水洗トイレは閉めるが土、日、祝日は時々管理人が入るので、水が涸れない限り水洗可能とする。尚、或る程度は小屋でトイレットペ−パ−を準備してあるが登山者も水に溶けるトイレットペ−パ−を持参願いたい。
話は逸れたが、門内小屋周辺は毎年、トンボが多かった。口を開けていると何匹でも飛び込んで来る程だったのに、前回も今回も少ししか居ない。そう言えば、石転び沢の雪渓の上も、例年足の踏み場も無いほど居たのにどうしたことだろう?今年は雪が多かったせいだろうか?天気が良いため雷注意報が出ていると、OTJから無線連絡も入っていたので、休まず通過する。胎内山、扇ノ地紙と山形県側の斜面にはかなり残雪がある。
梶川尾根を降りて行くと右側斜面は、残雪が融けるのを追いかける様にして、チングルマが咲き終わった物と満開の物とが隣り合わせに同居していた。更に下るとキンコウカがもう咲き終わっていた。そして、イワショウブがかろうじて咲いていたのでカメラに収める。花も此処までであったので、梶川峰でカメラをザックにしまう。
山都から来てこの尾根を登って来る高橋君に未だ会わないと、OTJと無線交信しながら5分も下ると彼に会った。お互い無線を聞きながら歩いて来たので、初対面であるが直ぐ判った。挨拶を交わし状況を話し合ってから別れる。五郎清水の上で3人のパ−テ−に会った。この暑さで大分疲労している様だ。梅花皮小屋から此処まで人に会ったのは7人だけであとは誰にも会わなかった。
湿度が高いのか、暑く額から汗がタラタラと目に入りそうになる。タオルが無いので時々帽子で汗を拭う。行けども、行けども下りばかり、いい加減いやになってしまった。今の時期、此の尾根を登るには体力は勿論いるが、朝早くスタ−トした方が良い。暑さでバテテしまう。私は幸い下りである、唯、唯、足を前に出し、飯豊山荘に早く着いてくれと願うばかり。時々、“イワインチンを撮るために、どうしてこんな苦労をするのだろう?”と後悔はしないが、そんな思いを浮かべる時があった。とにかく、暑いと思いながらも飯豊山荘に着いたのは扇ノ地紙から下り初めて3時間であった。

左上:北股岳を背景にして石転ビ沢を見下ろす人
右上:北股岳山頂から門内岳方向を望む
左下:梅花皮小屋と梅花皮岳
以上