登山者情報509号

【2000年11月26日/三吉峰〜枯松山/吉田明弘調査】

コースタイム
6:45東俣林道ゲート発(自転車)7:20林道終点着7:25発−一号橋(ブナイデ橋)−7:43登山道分岐通過−7:53三吉ノ峰(445m峰)着7:55発−8:30 670mピーク着8:35発−10:33枯松山山頂着11:05発−12:35670mピーク着12:42発−13:05 三吉ノ峰(445m峰)着13:08発−13:15登山道分岐点通過−13:25林道終点着13:30発(自転車)13:55林道ゲート着

飯豊連峰は主稜線から多くの尾根を派生させ、その支尾根の長さが、この山塊をより一層奥深くしている。その支尾根の一つに頼母木山より派生している山形県と新潟県の県境をなす尾根がある。その尾根には枯松山と大境山の二つの大きな峰を持っている。その内の一つ枯松山に登ることにした。
早朝、新潟市の自宅を出発して、登山口の関川村大石ダムの奥に続く林道を目指した。関川村に入る頃にはうっすらと明るくなりはじめ、大石ダムを過ぎて東俣林道のゲートに着く頃にはすっかりあたりは明るくなっていた。ここで用意していた自転車に乗り換え林道終点まで走った。歩けば1時間半の林道も30分で走ることが出来、林道終点の一号橋(ブナイデ橋)で自転車を降りた。
橋を渡って対岸の高台に登ったところが月夜平、ぶな林がとても奇麗だ。そこからやや急な登りを登って尾根がやせてくると「三吉ノ峰」と書かれた看板が有る。杁差岳へ向かう登山道はここから尾根をからみながら二号橋へ向かって下っていくが、枯松山へはそのまま尾根を登っていく。
登山道と変わらないようなしっかりした踏み跡が続いている。やがて445mピークに着いた。三吉ノ峰の看板は登山道との分岐点に有ったが、そこは峰と呼べるようなピークはないのでここが三吉ノ峰だと思われる。地図を確認して先へ進んだ。
相変わらず踏み跡はしっかりしていて迷う心配はない。470mピークには焚き火の跡が有った。進行左手には葉の落ちた木々の合間から大境山が見えていた。このまま踏み跡が山頂まで続いていたら思っていたよりも楽に山頂まで行けるのでないかと考えていた。地形図の670m地点はちょっとしたピークになっていた。ここにも焚き火の跡が有った。しっかりした踏み跡はまだ続いていた。新しい鉈目もありどうやらこのルートは誰かが道刈をしているということが想像できた。
標高850m付近から踏み跡が薄くなりはじめ、飯豊特有の潅木の薮こぎが始まった。尾根が広くなったところは全く踏み跡が無い、また、ツバキやシヤクナゲが所々道をふさいでいた。シャクナゲが道をふさいでどうしようもないところは山腹をへつってその藪をかわすところもあった。うっすらと踏み跡は有っても、落葉樹の葉が落ちきったこの時期どこが道だかよく分からない。古い鉈目が所々あったのでそれを広いながら進み、要所要所にオレンジ布を付けながら登っていった。それでも葉の落ちた木々の間から目指す枯松山のピークがはっきり見えていた。
県境稜線に出ても踏み跡は全く無かった。いきなり展望が開けて枯松山の山頂に着いた。山頂には三等三角点が埋められてあったが、主三角点の標石が脇に倒れていた。三角点の回りは刈り払われていて、回りは低木のため展望がいい。しかし、飯豊連峰の主稜線は雲に隠れて見えなかった。それでもすぐ近くに大境山が見え、その近くに葡萄鼻山。倉手山から大高地山に続く稜線は確認できた。晴れていればさぞや展望のいい山であろう。静かな山頂で至福のひとときを過ごした。
下山は最初間違って大境山へ続く尾根に入ってしまったが、すぐに気づき、コンパスで進むべき方向を確認して往路をたどった。大境山へ続く尾根にも鉈目があった。ルート不鮮明なところはオレンジ布が付けてあるので安心だ。しかし、残せばゴミになるので全て回収しながら進んだ。
下山途中の藪の中に二人の男性に会った。誰にも会わないつもりでいたので驚いた。焚き火をしながら二人くつろいでいる。話をすると熊狩の人のようだ。そばに猟銃が置いてあった。熊に逢わなかったかと聞かれたので、熊どころか動物には全然逢いませんでしたと報告した。話に聞く通り、我々登山者はガスで火を起こすが、熊狩の人は焚き火をする。それにしても上手に火を焚くものだ。彼らも私がキノコや何かを求めて山に入ったものだろうと思っていたらしく、ただの山登りと聞いて不思議そうな目で私を見ていた。この尾根の道は彼らが刈っているらしい。それも、この地点(850m付近)まででそこから先はめったに行かないので刈らないそうだ。道理でここから下はしっかりした道形があるのに、この上は古い鉈目だけで踏み跡が薄いはずだ。
しばらく降りていくと今度はどこからか「こんにちは」と声がする。回りを見渡しても誰もいない。「おーい、何処にいるんだ」と声をかけると「上だ」と言ったので見上げると男性が木の上にいた。ここでも熊に逢わなかったかと聞かれた。どうやらさっき会った人の仲間のようだ。今の時期里の方へ降りているのかもしれないなと言っていた。この人たちは結局熊を捕ることが出来たのだろうか。
沢の音が近づき、杁差岳の登山道と合流した。一般登山道はやっぱり歩きやすい。軽快に歩いて林道終点に出た。ここから自転車に乗り換えて、林道のゲートまで走った。枯松山はなかなかいい山だった。

吉田 明弘
E-mail akyo@info-niigata.or.jp
Home Page http://www.info-niigata.or.jp/~akyo/