登山者情報533号

【2001年05月19日/針生平〜大朝日小屋/井上邦彦調査】

06:47車道終点前の広い駐車場に車を止めて歩き始める。なお、昭文社エアリアマップ「朝日出羽三山」の基点が針生平入口の小屋付近になっているが、これは適切でない。大石橋直前に広い駐車場が新設されているので、変更すべきだろう。車道終点で登山者カードを記入していたのは、何時もインターネットでお世話になっている蒲生さんであった。大石橋を渡るとムラサキヤシオが迎えてくれた。昨夜の深酒がたたり、まだ酔いが体中を駆け回っている感じである。07:00祝瓶山分岐通過、このまま真っ直ぐ旧道を進んだため、吊橋の取り付きで倒木を越えなければならなかった。新道は分岐の標識から5m先の赤布から右手の河岸段丘に上がると、そのまま進み吊橋のすぐ上に出る。07:15〜20休憩。07:29角楢小屋通過、登坂さんと会う。角楢平の新緑は真に清々しい。途中に残雪が1箇所あった。07:53〜55(550m)大玉沢で水を汲み、吊橋を渡る。ここの吊橋もV字形になったので楽である。いよいよ尾根に取り付く。ヒメシャガ・ヤマツツジ・ムシカリ・チゴユリ・ウゴツクバネウツギの咲く中、ぐんぐんと高度を稼ぐ。08:21(879m)小ピークを通過する。左下の船窪には雪が残っており、すぐ上の急登にはロープが設置されている。足元の潅木の中にヤマドリの雄が悠然と遊んでいた。ようやく昨夜のアルコールが抜け始めてきた。08:35(1,020m)尾根が平坦になり、イワウチワが咲いている。08:38〜45、水場への旧分岐で休憩。標識はない。食欲が全くなく、ここまで水とコーヒー以外は口にしていない。ウィダーinを1袋飲む。ブヨがうるさい。潰すと私の腕から数箇所、血が出てきた。大玉山からの尾根の向こうに祝瓶山が聳えている。旧水場道を除いてみるが、残雪が多く水場は埋まっている様子だ。尾根上の新道を登る。08:47蛇引清水への新しい分岐には、立派な標識が設置されていた。08:52旧水場道上の分岐を通過する。タムシバ・ムシカリ・ムラサキヤシオ・スミレサイシン・カタクリが咲いている。雪が融けたばかりの、ブナの葉が敷き詰められた。急坂を登る。僅かの雪を踏むと、09:03(1,240m)尾根は平坦になり森林限界に飛び出た。ブナの新緑はほぼ森林限界と一致していた。09:05〜07登山道脇の残雪を水筒に詰め、水を補充する。イワナシ・イワウチワ・カタクリ・タムシバ・アヅマシャクナゲ・ショウジョウバカマ・エチゴキジムシロ・ミツバオウレン・オオバキスミレ・ノウゴウイチゴが咲いていた。2〜3箇所、登山道が雪に埋もれていたが問題はない。
09:02稜線の分岐を通過する。ミネザクラの花に囲まれて平岩山を目指す。09:33北大玉山を通過する。山頂にあったヌルマタ沢保全地域の標柱は壊れていた。鞍部に向かって故意に右側の残雪を下る。2箇所ほど亀裂があったがジャンプして飛び越える。鞍部は一部、登山道が埋もれていた。09:49水場分岐を通過する。標識の板の文字は消えている。水場は雪に埋もれており、使用できない。試みに立ち止まって登行中の脈拍を数えてみると100回/分であった。10:00旧分岐の広場を過ぎ、10:03〜16、平岩山手前で食事を摂る。ODDと無線が繋がり、今朝の新聞に以東岳の小屋トイレが焼失したと教えられた。幸い本棟は大丈夫らしい。残雪を水筒に詰めて水を補充する。10:18平岩山々頂手前の分岐を左に折れる。標識は文字の消えた板が置かれているのみである。トラーバース道は道刈りがなされておらず、背の低い笹が足にまとわりつく。道刈りは山頂を経由しているのだろう。10:21平岩山々頂からの道を合わせ、砂礫地帯となる。何時ものことながら、ここから大朝日岳までの間は風が強い。鉄製の標識は、その殆どが倒れていた。足元には、コメバツガザクラ・ミヤマキンバイ・ミネズオウ・ヒメイチゲ・ミヤマスミレが咲き、ハクサンイチゲも数輪が綻んでいた。遠望すると大朝日岳は単純な登りのように見えるが、地被けば幾度となく騙される。このあたりは飯豊山の御前坂と違う所だ。10:49騙しピーク通過、いよいよ最後の登りに差し掛かる。11:04大朝日岳山頂到着。腰を下ろすまもなく小屋に向かう。中岳方面の夏道は殆ど雪に覆われている様子だ。下山中に雪を踏む所があったので、用心のためここで雪をビニール袋に確保する。
11:13大朝日小屋に到着。やはり小屋周辺には雪がなかった。水洗トイレの浄化施設と、周囲の植生復元ネットが印象的である。飯豊においては植生復元の施策が全くなされていないことに腹ただしさえ感じた。小屋は一見すると梅花皮小屋に似ている。中は清潔で二階は広いし天井裏にも泊まれるようになっている。先ほど取って来た雪で缶ビールを冷やし、うどんを煮る。ふと携帯電話を見るとアンテナが3本立っている。試しに自宅に掛けてみるとクリアに繋がった。下山は、今回始めて膝バンドを使用してみることとした。
11:55小屋から出発しようとすると、雨が幾粒か落ちてきた。12:04〜06大朝日岳山頂通過。鉄標柱を直しながら下っていると、蒲生さんが登ってきた。できれば蒲生さんと小屋で酒を酌み交わし様々な話を伺いたい所だが、今回は立ち話程度で分かれる。なお蒲生さんは明日、御影森山から葉山を経由して下山する予定とのこと、快適な雪庇歩きが楽しめそうだ。明日の好天を祈る。風に雨が混じってきたので、旧道(トラバース)を通り、12:57〜13:00今朝食事を摂った所でカッパを着る。雷鳴が響き、山々は急速に雲に覆われ、雨風となってきた。急いで下山することとした。13:28稜線と蛇引尾根の分岐を通過、13:41森林限界を通過する。ここまで来れば雷の心配はなくなる。13:50蛇引清水の標識を通過、14:20大玉沢の吊橋を渡る。雨の中のブナ林は何とも言えず美しい。14:44〜15:16角楢小屋で食事を摂る。雨が小降りになってきた。15:40白布橋を通過、15:56駐車場に到着した頃には、雨が上がっていた。

角楢小屋 大玉沢の吊橋
清水付近のブナ林 蛇引清水の標識
森林限界からきた大玉山 森林限界から祝瓶山
北大玉山から水場と大朝日岳 平岩山分岐から大朝日岳
コメバツガザクラ ミネズオウ
ミヤマスミレ ヒメイチゲ
イワナシ ミヤマキンバイ
大朝日岳から中ツル尾根と御影森山 葉山へ続く主稜
小朝日岳と鳥原山 平岩山と祝瓶山
中岳と北に連なる主稜線 大朝日小屋と蒸散装置
大朝日小屋 墓石のように立つ石と鉄の標識