登山者情報540号

【2001年06月09日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

04:45天狗平発。温身平ではブナの樹間から目指すダイグラ尾根が見えた。タニウツギ・ムシカリ・タムシバが咲いていた。ブナの巨樹に挨拶して登山道に入る。雪崩跡の雪道をとおり落合の標柱を過ぎると桧山沢の吊橋であるが、一見して唖然とした。本当にズタズタになっており、とても渡れるものではない。539号に記載の通り上流のスノーブリッジを目指す。スノーブリッジは下流部は薄く、上流部は泡立っている。スノーブリッジの下には勢い良く白くなって沢が流れている・全く気持ちの良いものではない。まだ朝方なので比較的安定している筈なので、上流部を恐る恐る渡って、ミズバショウの咲く対岸に移り藪をトラバースして、05:22〜25(480m)吊橋の袂に着く。今回は長距離なので、履物はスパイク地下足袋のみとし、藪漕ぎも想定して短いストックにランニングシャツというスタイルで身軽に登っていく。05:59(830m)登山道は右斜面を登る。ヤマツツジ・エゾユズリハが咲いている。06:10(920m)オ池ノ平を通過する。池は残雪に埋まっていたが、僅かな水面の上にモリアオガエルの卵塊が下がっていた。06:19〜28水場の分岐で食事とする。ランニングシャツを絞って幾分でも乾かそうと枝に吊るす。水場の標識は以前に私が自作し設置したものだが、かなり古ぼけてきた。作り直さなければなるまい。水場を覗くとまだ雪が残っているようである。この時期のダイグラ尾根は、水に不自由しないので、降らずに出発した。ムラサキヤシオ・タニウツギが咲いている。登山道に、車状のままホウの葉が散在している。良く見ると花の付いている葉だけで、花の芯だけに食べられた跡がある。頭上を見上げると大きなホウノキがある。恐らくグルメな動物が、花弁だけを食べ散らかしたのだろう。シラネアオイの花が登山道脇を埋め、スミレサイシンも咲いている。06:49(1,170m)コメツガノ台地(仮称)で1匹の猿と出会う。先程のグルメな動物はこいつだろうか。マイズルソウ・カタクリ・ツクバネソウ・タニウツギ・デワツクバネウツギ・ナナカマド・ガマズミ・ツバメオモト(盛)・シラナアオイが咲く急登を登る。07:03〜14(1,300m)休場ノ峰に到着する。ここまで標高差820m所要時間98分(除休憩89分)まずまずの調子である。ここで無線機のバッテリーを換え地下足袋の爪を掛け直し、虫除けのハッカ油をつける。
いよいよダイグラ尾根特有の登り降りが始まる。ヒメサユリが咲き始めていた。ナナカマド・オオイワカガミ・オオバキスミレ・カタクリが咲いている。降ると鞍部で雪を踏む。熱くなっていた足裏に気持ち良い。マイヅルソウ(盛)・タニウツギ・ウゴツクバネウツギ・サラサドウダン・ガクウラジロヨウラク・ハクサンチオドリ・ツバメオモト・カラマツソウ・ムラサキヤシオ・シラネアオイが咲いていた。道が二つに分かれている所は、左の新道を登り、07:41コメツガの樹林の中に千本峰と書かれた標柱を通過する。タムシバ・ムシカリが咲く中、岩場を降り雪の上となる。大又沢側の急斜面についた雪庇のなごり雪が夏道を覆っている。ピッケルを抜く。オオバキスミレ・イワウチワが咲いている。1,499m峰を巻いて、08:04(1,445m)鞍部を通過する。1,480mより雪の上を登る。マンサクが咲いている。08:13〜27(1,510m)雪の上で食事を摂る。OTJと無線が繋がる。日焼け止めと虫除けをつける。虫除けの効果は絶大である。1,545mから夏道となる。タケシマラン・カタクリ・ミツバオウレン・ミヤマシキミ・エチゴキジムシロが咲き、ギフチョウが飛んでいた。1,610mから雪道となり、すぐ夏道、また僅かで雪道となる。1,660mからは夏道・雪道どちらも可能となり雪道を進む。1,700mからは完全に雪道となる。08:53(1,725m)で宝珠山ノ肩に着くが、標柱は雪に埋まっている。ガスが湧き始めた。宝珠山々頂直下まで雪上を詰めて、一旦夏道にで、すぐ雪の上になり、1,800mでようやく夏道となる。09:10〜21(1,820m)岩稜で休憩とする。ODDと無線が繋がる。御西小屋には小椋氏と吉田君がいるらしい。
降り始めてすぐに吉田君(JO7AXL)と無線が繋がる。1,790mで平坦な雪の上を歩き、1,770mから再び雪道となるが、この残雪から夏道に移る所が嫌らしくなっていた。1,790mから夏道となり、09:43(1,775m)最低鞍部を通過する。若干登ると雪が出てきて1,830mまで続く。いよいよ御前坂の登りに取り掛かると、チングルマ・ハクサンイチゲ・イワウメ・オヤマノエンドウが咲き始め、コメバツガザクラ・ミヤマキンバイ・ヒメイチゲ・ミツバオウレン・ウラシマツツジ・ミネズオウが盛りとなっていた。10:21〜28(高度計を2,080mから2,105mに直す)飯豊山々頂に到着する。北股岳方面や大日岳は雲の中である。
降り始めるとヘリコプターの音がして、私の頭上をかすめて行った。ミヤマキンバイ・ミネザクラが咲き、オヤマノエンドウも散見できる。10:41駒形山の標柱の文字は風雪に削られ読めない。ハクサンイチゲ・ミツバオウレンも咲いている。10:47玄山道分岐となるが標柱は雪に埋もれている。次のピークは残雪の上端を通ると、夏道も出始めていた。尾根の部分は雪面が細くなっていた。まもなく夏道となって草月平に向かうが、融雪水が流れていた。草月平にはショウジョウバカマ・ハクサンイチゲ・ミヤマキンバイが咲き始めていた。草月平を過ぎると雪面を歩くが、稜線まで雪が続いており、視界が閉ざされた時は磁石が必要になるだろう。御西岳は雪がない、小屋の3分ほど手前で豊富な融雪水が取れた。11:18〜12:52御西小屋に到着する。小屋には小椋氏とAXL(他に女性客1名)が居て、入ると同時に缶ビールが飛んできた。ふたりはヘリコプターを待っているのだが、視界が悪く引き返したようで手持ち無沙汰であった。結局ここで食事を兼ねてささやかな宴会が始まった。
僅かなアルコールであるが、運動した後だけに効いてくる。今日は梅花皮小屋の小屋番であるAXLとふたりで御西小屋を出発する。小屋からいきなり雪の上である。天狗岳も豊富な残雪なため危険性は感じられない。面倒なので天狗ノ庭も残雪の上を行くことにした。旧道の笹薮は胸まであるが、笹薮以外は全て雪の上である。13:36御手洗ノ池は殆ど雪に埋まっている。池からの降りだけが夏道となっている。南陽山の会のふたりとすれ違う。咲いているのはショウジョウバカマ程度である。13:51亮平ノ池も僅かに出ているだけである。鞍部から夏道を登る。ハクサンイチゲ・ミヤマキンバイ・ミヤマハタザオ・ミネザクラが咲いている。梅花皮小屋から飯豊山まで往復と言うふたりに追いつく。主稜を越えると雪上になり、クサイグラ尾根分岐から夏道となる。14:20〜32烏帽子岳々頂で休憩する。ミヤマハタザオ・ミヤマキンバイの咲く中を進む。梅花皮岳の登りは雪道となっていた。14:47梅花皮岳々頂で「本当にここからスキーで降ったのか」と確認すると、AXLは「最近ようやく何処から落石がくるか、雪面にどのように力を加えたらどうなるか分かるようになってきた。山頂だけに雪庇が出ていなかったので兼用靴で滑った。スキー技術だけでは限界がある。問題になるのは山に対する総合力でないか」との返事であった。梅花皮岳を過ぎると、ハクサンイチゲ(盛)・ミヤマキンバイ(盛)・ヒメイチゲ・コメバツガザクラ・イワカガミ・オオバキスミレ・ミヤマカタバミ・ミネザクラ・シラネアオイ・ミツバオウレン・バイカオウレン・ミヤマハタザオ・オヤマノエンドウなどが咲き乱れていた。15:02〜28梅花皮小屋到着。梅花皮小屋の水場は細いが使用可能。水洗便所にも水が来ていたので、AXLは早速貯水槽の鍵を開けて調整したり水源地の確認に出かけた。私は一人でラーメンを煮て降る準備をする。
ストックをザックに固定しピッケルを持って下降を開始する。スパイク地下足袋なのでグリセードで滑っていくわけには行かない。雪が軟らかい所は足袋のサイドでキックステップし、堅い所はスパイクを利用して慎重に降る。下降中に持参した傾斜計で測定したら、ちょうど40度であった。北股沢・ホン石転ビ沢共にまだ雪が豊富で間違いやすくなっている。16:03石転ビノ出合(門内沢出合)を通過する。赤滝対岸(右岸)の水場が使用できるようになっていた。この1週間で雪渓はかなり融けている。大きな石があちこちに顔を出している。梶川出合上の水場は既に夏道が露出して、水場としては不適である。梶川は出合のすぐ上に穴が開き始めていた。先週と同様に、地竹原から夏道に入る。オオバキスミレ・スミレサイシン・キクザキイチリンソウ・サンカヨウ・ミツバアケビ・ニリンソウ・タニウツギ・ムラサキヤシオ・タムシバ・ムシカリが咲く中を進む。ツブテ石の雪も殆ど消えていた。16:52砂防ダムを通過し、17:18天狗平に到着した。

桧山沢吊橋の破損状況 ホウノキ花芯が食べ散らかされていた
休場ノ峰から宝珠山 烏帽子岳〜梅花皮岳方面
梶川尾根の状況 千本峰から宝珠山
天狗岳〜亮平ノ池 千本峰を振り返る
宝珠山が近くなってきた 宝珠山から岩稜と飯豊山
岩稜から飯豊山 宝珠山を振り返る
御前坂から飯豊山々頂 飯豊山山頂から御西岳方面
ヘリコプターが頭上をかすめて行った 駒形山から飯豊山とミヤマキンバイ
飯豊山を振り返る 左からAXL・小椋氏・筆者
広い雪庇の上を歩くAXL 烏帽子岳より御手洗ノ池方面
烏帽子岳よりクサイグラ尾根分岐 ハクサンイチゲが咲き始めた
梅花皮小屋から北股岳 北股沢出合から仰ぐ
石転ビ沢全景 門内沢に迷い込まないように
地竹原から夏道に上がる 温身平のブナ林