登山者情報560号

【2001年7月21日/石転ビ沢〜ダイグラ尾根/井上邦彦調査】

来週のサポート登山に備えて荷上げ山行のため、日帰りにしては少々重めの22kg。寝坊して天狗平に到着すると駐車場は満杯、天狗橋まで車が溢れている。天狗橋袂の水場に車を止める。登山者カード記載所には小国警察署員が二人で登山者の指導をしていた。06:02湯沢ゲートを出発する。06:26上の砂防ダム通過、発酵させた木材チップをコンクリートの表面に吹き付けていた、緑化するのだろう。06:46うまい水通過、新しく飯豊朝日を愛する会で設置した標識が目立つ。飯豊朝日を愛する会では今後、長坂清水(ダイグラ尾根お池の平)、夫婦清水(丸森尾根1,030m)、治二清水(梅花皮小屋)、丸森峰に標識を設置すべく準備中である。登山道の刈払いは丁寧にされている。06:58〜07:05休憩。落合を巻いて残雪に上がりすぐに夏道に入る。07:19梶川出合通過、沢の合流点直前の雪渓状態が極めて悪い、巻き道があるので迂回すべきである。私は状況調査のためあえて雪渓を通ったが、最後の部分でかなり緊張した。また沢を渡渉し雪渓に上がる部分も良いとは言えない。雪渓からすぐに夏道に入る。黄旗をあちこちに付けてあるのでルート選択が楽である。赤滝の雪渓はズタズタとなっている。登山者の方に道を譲ってもらいながら、07:43〜51石転ビノ出合(門内沢出合)に到着、右岸の水場で食事とする。ここで知人と偶然出会い驚く。雪渓を登っていくと、左岸よりに水の音がして小さな穴が開いていた。大岩から上は右岸寄りに歩くべきである。
まもなくホン石転ビ沢出合という所で、無線が聞きなれた声で「緊急!緊急!」と音を立てた。発信者は竹田君である。梶川出合の巻き道で3人パーティの1名が転落し、左後頭部から出血しているとのことである。雪渓の上で立ったまま交信していると、KRSと無線が繋がった。山形休暇村一行のサポートでNOOと共にうまい水に居るとのことである。確か沖庭小学校の案内でPWDも来ている筈である。梅花皮小屋のOTJにPWDが使用している周波数を探してもらう。出血も治まったようだし、自力下山も可能とのことなので、後はKRSとPWDに任せて、08:35歩き始める。
09:05〜15北股沢出合の清水で食事とする。北股岳に直登する北股沢はまだ雪が豊富である。黒滝は完全に穴が開いており、上部で滑落したら滝に直行するので慎重な行動が要求される。例によって落石を避けるため左岸沿いに登り途中から草付キ(中ノ島)に斜登する。ミヤマガラシ・オオサクラソウ・ノウゴウイチゴ・モミジカラマツ・ミヤマキンポウゲ(盛)などが出迎えてくれた。水場を過ぎた所で、左の雪渓の右岸を登っている単独の登山者を見かけたので注意を与えたが、「休憩している、何時もここを登っている」等とこちらの注意に耳を貸すつもりはないので、そのままにした。故意であるなら人騒がせな登山者である。草付キ(中ノ島)最上部のトラバースは斜登ではなく、平行にステップが切ってあり、対岸の草付キに直登する踏み跡が出来ていた。長さ10m程度であろうか。沢状の夏道を登り、草付キの広場に出て緩い雪渓を登ると、ハクサンコザクラ・ハクサンオオバコ・オタカラコウが咲く中、09:57〜10:20梅花皮小屋に到着する。関氏から手渡されたキリキリに冷えた缶ビールを飲み干し、荷上げ品をお願いする。無線で先程の負傷者の処理が終了したことを確認し、安堵する。
梅花皮小屋から歩き始めると、マルバコゴメグサ・ムカゴトラノオ(盛)・タカネマツムシソウ(始)・オヤマノエンドウ(終)・チシマギキョウ・ホソバヒナウスユキソウ・タカネアオヤギソウ・ハクサンシャクナゲ・シラネニンジン・ヨツバシオガマ(盛)・ニッコウキスゲ(盛)・ミヤマシシウド・ミヤマコウゾリナ・クルマユリ・ハクサンフウロ・ヤマハハコ・エゾイブキトラノオ(盛)・ヨツバムグラ・イイデリンドウ(盛)・イワテヒゴタイ・マルバシモツケ・ミヤマホツツジ(始)・タカネニガナ・コケモモ・ハクセンナズナ・ミヤマキンポウゲ・オンタデ・タカネヨモギ・ヤマトウバナ・オタカラコウ・ゴゼンタチバナ・ミヤマアキノキリンソウ・イワイチョウ・モミジカラマツ・タニウツギ・ハクサンコザクラ・アオノツガザクラ・ハクサンボウホウ・イワオウギが咲いている。10:54烏帽子岳通過、シナノキンバイ・ウサギキク・ダイモンジソウ等一面のお花畑を通りクサイグラ尾根分岐を通過し、チングルマ・イワカガミ・ハクサンイチゲを楽しむ。この辺りからあまりにも多いので、花のメモを取る気がしなくなる。
11:28御手洗ノ池を通過する、残雪は小さくなったがまだ融雪水は取れる。来週は危ないだろう。11:42〜49食事とする。11:55天狗ノ庭を通過するが、廃道の笹原に迷い込んでいる一団の登山者を見かけた。仕方ないのでそのまま笹薮を進み湿原から稜線に上がるように指示する。この先の廃道分岐のロープはしっかりしていたので、故意に迷い込んだとしか思えない。私は東斜面の旧道を避け、主稜線上の新道を登る。まだ足場はしっかりしていないが、旧道の危険性と上り下りを避けることが出来る。亮平ノ池〜天狗ノ庭間は、数箇所残雪上を歩くが、無理せず端を歩けば問題はない。天狗岳に登ると飯豊山から大日岳に至る牧歌的な光景が広がり、ハクサンイチゲを始めとする花々に包まれる。
12:30〜13:10御西小屋は中高年の女性を中心として賑わっていた。小屋前で竹田君と交信していると、MDEが冷えた缶ビールの栓を抜いて差し出してくれた。LFD一行と混じり素麺とカップヌードルをご馳走になり、ついでに日本酒で喉を潤す。御西小屋の水場は、若干下るが使用できる。歩き出してすぐAQLとすれ違う。大日岳を背景にチングルマの花と実の両方が楽しめる。アオノツガザクラ・イワカガミも良いが、草月平はニッコウキスゲが盛りになりそうだ。掛橋氏・須藤氏(本山小屋管理人)と無線が繋がる。玄山道分岐から旧赤谷登拝路に入る。弘法清水はまだ雪に埋まっていたが、近くで融雪水が取れる。スパイク地下足袋の足裏が火照っているので雪の上が気持ち良い。弘法清水から若干進んだ夏道に清水がこんこんと湧いていた、ここで水を補給する。その後はチングルマの花園を進み、14:07〜28本山小屋に到着する。荷上げ品をお願いし、ここでも冷たい缶ビールを頂く。
赤トンボの大群が尋常ではない、14:38〜43飯豊山々頂。下り始めてすぐ登ってくる登山者とすれ違う。何人目かの登山者が、宝珠山の下でザックを壊して苦労しながら下山している登山者が居ると教えられる。岩稜手前に僅かな雪がある。15:25コキンレイカに励まされ岩稜を通過する。宝珠山の登りに若干の雪。宝珠山の降り、15:37〜43残雪を取り缶ビールを冷やしながら下る。15:44宝珠山の肩の標柱は倒れている。16:04〜32壊れたザックを持っている登山者に追いつく。背負い紐2本とも縫製が壊れている。針金で応急処置をしてパッキングを直したら、元気に下山していった。先ずは腹ごしらえと、先程の缶ビールでお握りを頬張る。16:52千本峰通過、05:16〜23休場ノ峰で彼と一緒になる。ここからは彼を追い越し軽快に降り、17:43〜50長坂清水で水を補給する。やや細くなっているが充分使える。コップを持って行った方が汲み易い。18:19〜23、2名組登山者が岩場で休んでいた。18:29桧山沢吊橋に到着すると、橋を渡りきった所でザックを背負ったまま仰向けに倒れている登山者がいた。声をかけると反応があり、同行者もいたのでそのまま通り過ぎる。18:38林道に出る。温身平で梅花皮小屋と交信し、19:03湯沢のゲートに到着した。

うまい水の標識 梶川(左の沢)出合付近の雪渓
赤滝付近の雪渓状況 石転ビノ出合から石転ビ沢
北股沢出合から黒滝と草付キ(中ノ島) 北股沢出合から北股沢
北股沢出合から石転ビノ出合 中ノ島上部のトラバースを終えて
クサイグラ尾根下から御西岳方面
主稜線を天狗岳に向かう 天狗岳から御西小屋
御西小屋 御西小屋から北股岳方面
AQLとすれ違う チングルマと大日岳
草月平のニッコウキスゲ 玄山道分岐から旧赤谷登拝路と飯豊山
本山小屋 旧赤谷登拝路分岐から大日岳
御前坂を振り返る 岩稜から飯豊山
岩稜から主稜線
休場ノ峰から宝珠山 修復なった桧山沢吊橋