登山者情報567号

【2001年8月11日/復元道〜川入切合〜五段山〜谷地平分カレ〜復元道 /井上邦彦調査】

切合(キリアワセ)とは、登山道が合わさる分岐点をさしている。飯豊連峰では、単に切合と言うと会津道と米沢道が合わさる地点を言い、切合小屋の名前は分岐点に位置することによる。また、大日杉から地蔵岳に登る途中のダマシ地蔵に「滝切合」がある(エアリアマップ:5-I北)。現在は廃道になっているが、小国町の滝集落から鍋越山を経て来る登山道との分岐点である。さらに五段山と谷地平分カレのほぼ中間に「川入切合」がある(エアリアマップ:6-J東)。ここはかつて福島県山都町川入集落と山形県飯豊町岳谷集落を結ぶ街道として利用されていたものと思われる。おそらくは、川入・岳谷・大石沢(小国町)に小椋姓(小椋姓は木地師特有のものである)があるのは、これらの集落に婚姻関係があったということだろう。
私が登山を始めた時には既に岳谷と川入を結ぶコースは手入れがなされず廃道化していた。それが最近、岳谷側から復元されたと聞いて、歩く機会を狙っていた。たまたま、今はアブがいるので沢沿いのコースは避けたいし、ダイグラ尾根・梶川尾根と2晩続いた遭難事故処理で腰が痛くて歩けない状態であること、さらに天気予報が悪天を示していたので、ブナに覆われたこのコースを調査してみることとした。
飯豊町中津川から入り、民宿惣兵衛(釣堀)で大日杉への道と分かれ葡萄沢沿いの大規模林道に入る。すぐに「用事のある方は右手の事務所に回ってください」と看板があったが、早朝なのでそのまま進んだ。惣兵衛から6.6kmで「飯豊トンネル」に到着する。標高は850m、トンネルの右手から沢が来ており、沢沿いの広い道を約50歩登ると、沢が二つに分かれ、真ん中の尾根に登山道を示す「川入切合登口」と書かれた標柱が立っている。水はここで簡単に汲める。道脇に車を止め、07:24上り始める。登山道はブナに包まれた尾根をジグザクグに登っていく。標高970mから左に折れ斜面を横切るように斜上していく。985mで小沢を横切る。この先も2箇所小沢を横切った。今回は雨後なので全て水が流れていたが、渇水期はどうなるか分からない。07:44(標高1,022m)川入切合に到着する。見慣れた菱形の標識のほかにも新しく「岳谷ブドウ沢口」と書かれた標柱が立っていた。川入側を覗くと、踏み跡がまだ残っているが、確か途中で無くなる筈である。ここまで高度差170m所要時間20分ということになる。
07:47川入切合を出発し五段山を目指す。途中にほんの僅かな降りがあるだけの、一直線の登りである。登山道はブナ林の中、真に広く綺麗に刈り払われていた。1,250mから道は平坦になり、微かな降りになったと思うと、08:16五段山の分岐に到着した。川入切合からここまで標高差290m所要時間30分であった。ここで偶然に永井氏と出会い、暫し歓談。08:52五段山発、09:09川入切合着、所要時間17分。川入切合から今度は谷地平分カレを目指す。09:26〜10:10ラーメンを煮ている間、道脇の枯れ木でシロタモギタケを見つけ、茸ラーメンとする。10:14(1,118m)月夜岳を通過する。道脇には地名なしの菱形標識が置かれてあった。10:18(1,030m)ひょっこりと道路に出る。ここが谷地平登山口である。約100m高い月夜岳を挟んで川入切合とほぼ同じ標高、所要時間25分である。10:56谷地平登山口発、11:20〜22川入切合(所要時間24分)。もう一度復元道を確認しながら11:34(所要時間12分)トンネルに到着した。
五段山コースと復元道を比較すれば、登山口の標高は前者が612mで後者が850mである。登り返しは前者が白川とコブ山の2箇所あるのに対し、後者は殆どない。五段山の標高が1,312mであるから、標高差は前者が700m+α、後者が462mである。とすれば私の通常の速度では前者が70分、後者が45分となり、3分の2の時間で登れることになる。ただし、コブ山経由は大日杉小屋を基点に一周できることに利点がある。なおエアリア2001年度版ではコブ山経由のコースタイムは190分(井上の約2.5倍)としている。

飯豊トンネル 右の車道を登った所に標柱が見える
トンネル脇の登山標柱 川入切合の新しい標柱
川入切合の古い標識 五段山の分岐
五段山の分岐 谷地平登山口
月夜岳を振り返る 五段山の登りを遠望する