登山者情報610号

【2002年03月09日/祝瓶山/吉田岳調査】

 快晴。6時30分、自宅を出発。小国の町中で食糧を調達し、五味沢方面へ向かう。途中、徳網地区に住むOTJ宅に立ち寄り、雪の状態・ルートの確認等、アドバイスを受ける。今日、明日とこの付近で催される「マタギと歩く雪の学校」に講師として参加するとのだった。除雪止まりに車を止め、準備を始める。ここで帽子に耳当て付きの物を持って行くことにしたが、首ひもがじゃまだったため、それを切断。しかし、この行為が後で悲劇を生むことになろうとは、分かるはずも無かった。
 8時、スキーシールを付け出発。右側斜面からの雪崩に注意しながら林道を歩いていく。気温が上がるにつれ、昨日降った雪が湿雪になり、重りのようにスキーにくっつく。たまらずシールを外し、スキーだけで歩いていく。雪に埋もれた針生平のぜんまい小屋を通過した辺りで、東側に祝瓶山が見えてきた。雪にすっぽりと覆われたその姿は非常に格好いいのだが、それにしても高く、遠い。早くも林道歩きでバテ気味になる。2時間かかって、やっと大石橋に到着。踏み板が一列だけかけられている。スキーをザックにつけて慎重に渡る。更に大石沢をジャンプでクリア。そこからコースを東に離れ、尾根に取りに付く。これはOTJに教わったルートだが、確かに近道の上、樹間も勾配も手頃である。さすがここ一帯を荒らし回っているだけのことはあると感心する。
 標高730mの所で登山道と合流する。所々ピンクの目印が付けられていた。11時30分、817mの小ピークに到着。この向かいの斜面は勾配がきつく、立木も多い。ここにスキーをデポしていく方法もあるが、あえてスキーで行ってみることにする。登り返しての急斜面には昨日の雪がその下の堅雪の上に積もり、滑りやすく危険な状態。出来るだけスキーで登ろうと思って無理をしていた時、スリップして転倒。すぐに止まったものの、その下は雪崩の巣のような所になっており、冷やっとさせられた。すぐ、スキーを外しザックに付ける。堅雪のため、かんじきはいらない。ブナの灌木帯になった所で、またスキーに履き替え、1239mの一ノ戸に到着。かなり疲労がたまってきた。景色は祝瓶山頂の裏側以外は全て見晴らせる。しかし、その山頂がなかなか近づかない。
 1250m辺りでスキーをあきらめ、その場にデポする。風がかなり強くなって、雪の表面もクラストし、ハイマツの樹氷で波打っている稜線ではとてもスキーにならないのである。ハァハァ言いながらダマシピークを一つ越え、13時40分何とか祝瓶山頂に到着した。360゚の白銀の世界は感動を超え、あきれて笑うしかないという感じである。無線を出して会の人たちを呼んでみるが反応無し。カメラも途中でフィルム切れになってしまったため、一人自分の目に収めておくしかない。とその時一段と風が強まり、突然帽子が飛ばされた。あっという間に遥かかなたへ。今朝あごひもを切った帽子である。悲しむ間もなく下山を決めた。
 キックステップでスキーデポ地まで下り、スキーシールのまま一ノ戸まで滑り降りた。そこでシールを外し、滑降開始。雪質はクラスト、ザラメ、パウダー、湿雪と次々に変わるため慎重に滑る。膝にかなり負担がかかる。1050mからの急斜面は南側に巻き込む感じでルートを取る。谷間へ次々と表層雪崩が落ちて行った。800mの鞍部まで来て、風がやっとおさまったので、ゆっくりと腰を降ろした。
 15時30分、大石橋を通過。スケーティングで飛ばせばあと1時間かなと思っていたところ、違和感を感じていた左膝が痛み始めた。針生平まで来た辺りで、かなりの痛みになり、引きずりながらスローペースでしか歩けなくなった。「これはまずい」と思っていた所、何故か急に痛みが消えた。「今だ」と思い、その後も痛みがきたが休まずに歩き続けた。17時10分やっとのことで車場に到着した。太もも、膝への負担が関節にきたのだろう。私も無理の出来ないお年頃の様であると反省。おしまい。

針生平のゼンマイ小屋 大石橋を渡る
針生平より祝瓶山(中央)