【2002年03月23日/栂峰/井上邦彦調査】
仕事を終えて、QVH・PWDと一緒にフォレスト飯豊に向かう。ここは、小屋集落と大日杉小屋への分岐点にあり、晴れると白川ダム湖を挟んで飯豊山が見える。3人で7年前に富士山で故人となった齋藤喜美雄・横山秀一両氏を偲んで会食する。
05:30頃、AXLから電話があり、外を見ると靄っているが雨は降っていない。朝食を終え、AXL・UWS・立川君を加えた6人パーティで小屋集落に向かう。集落の末端で道路の除雪は終わっていた。小雨が降っている。ここに車を止め、シールを貼ったスキーを履こうとして、前回の山行時に登山靴にビンディングを合わせていたため、QVHにドライバー付きナイフを借りて直す(私のナイフはシンプルでドライバーは付いていない)。
08:30林道を歩き出す。QVHは登山靴に山スキー、立川君はテレマークスキー、他は兼用靴に山スキーである。カモシカの足跡が多い。ザゼンソウの新芽が出ていた所で水筒に水を汲む。スリットの入った大きな砂防ダムを過ぎる。釣り人の足跡だろう、川沿いに続いている。暑くなってきたのでカッパを脱ぐ。ヤナギの綿毛が開き、フキノトウも見かける。AXLがマンサクの黄色い花を見つけた。春は間違いなく訪れている。一箇所ほど今朝落ちたらしい雪崩跡を通過したが、全体としてこのコースは雪崩の圧迫感をあまり感じない。09:30〜42休憩を取る。林道が大きくS字に曲がり高度を上げ、10:01正面に砂防ダムが立ちふさがり林道は終点となる。
数箇所のスノーブリッジを観察したところ、倒木?の上に雪が被さっている個所を見つけ、右岸に移る。急斜面を登ると杉林になる。何処でも登れそうな広い杉林を順調に登る。21日のものだろうか、スキーのトレースが確認できる。10:26〜34杉林の中で休憩、何時の間にか雪となっていた。ルートを確認するため、900m付近から左手の尾根沿いを進む。右手は杉林が続いている。カラマツの植林地を過ぎた地点からデフ布をつけ始める。990m峰は雑木林であり、右手の杉林もここで終わる。PWDはシールの具合が悪く、遅れがちである。右前方の急斜面は雪庇が向かって来るように思えたが、難なく登りきり11:28、1,102m地点に達する。
ここから風景は一変する。平坦な尾根が北西に続き、見事なクロベが点在している。シールに雪が付着し(ボッコが着いて)、重くかつ滑らない。風下にやや下り11:43〜12:06食事を取る。雪庇は全体としてそれ程発達していない。天候は、青空が見え風もなくなったと思うとすぐに風雪にめまぐるしく変わる。1,150mからの急登は、ボッコが着いて滑らないことを利用して直登する。新雪に覆われている部分は逆滑りするので、ウインドクラストした部分を選んで登る。1,210mでブナ林の平坦地を進み右手の急斜面に取り付く。視界のないときのスキー滑降はルート選択上かなり危ないと思えたが、幾つものデフ布が付けられていたので、新しく付けるのは最小限で済んだ。1,402m峰からまた平坦な尾根となり、最後の急斜面を登ると、見慣れない樹木が出てきた。AXL・立川君・HZUで植物談議になる。
葉はコメツガとそっくりだが、長いのでコメツガでないことは分かる(飯豊連峰にはダイグラ尾根とクサイグラ尾根にコメツガが生育しているが、他にはキタゴヨウマツしかない)。栂峰と言う名前はこの樹木に由来するに違いない。であればこれはツガだろうか、しかしこのあたりにツガが生育しているという話は聞いた事がない。とすれば、アオモリトドマツ(別名オオシラビソ)だろう。樹皮の色が灰白色であることから、オオシラビソであろうとの結論に至った。その後、ほんのひと登りで、1,490m峰に到着する。周囲は穏やかな斜面が栂峰まで続いており、問題の樹木が広がっていた。
ピーク到着は13:21、本日はここを終点とすることに決めた。ここも雪庇は殆ど発達していない。風下で大休憩として、早速缶ビールを雪に埋める。やがて、QVH・UWS・PWDが到着し、UWSはスコップで斜面を掘り、ラーメンを煮始めた。とりあえず缶ビールを分け合い、ささやかに乾杯。
シールを外し、14:15いよいよ山頂から滑降を開始する。日頃、親しんでいる痩せ尾根とは異なり、実に快適である。ついつい調子に乗りすぎ風雪で前方が良く見えないのに直滑降、瞬間、身体が空中に舞い転倒。風のいたずらで、樹木の雪庇側は抉り取られているのだ。まるでジェットコースターに乗っている気分である。立川君はテレマークを決めたと思ったらやはり転倒。登山靴のQVHもやや苦戦、UWSは踵固定しない癖がついてしまい、これもやや苦戦。PDWは登りと打って変わって快調そのもの。勿論AXLのスキー技術は、抜群である。ルートを確認するため私が先頭をきり、自分のデフ布を回収する。雪質は申し分なく、充分に滑降を満喫する。
14:55、1,102m分岐からは雪質が一変する。重く深くなり、滑走面に雪が付着し始める。途中で、ワックスを塗り、杉林の中を滑る。思い切って体重移動をしないと曲がらない。AXLだけは雪質の変化をものともせずに滑る。16:07林道に出る。踵を開放する。「雪道とタラ汁は後の方が良い」とはよく言ったもので、後続になると、殆ど苦労せずに進むことができる。16:44栂峰山大神神社でひと休みし、16:59駐車場到着。冷え切った身体を白川荘の温泉で温めて帰宅する。
フォレスト飯豊からの眺め | |
3人で偲ぶ会 | 林道終点にて |
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ネコヤナギ | マルバマンサク |
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林道の途中で休憩 | 杉林を登る |
尾根筋を登る | 途中で休憩 |
1,102m峰直下 | |
風下で休憩する | シールにびっしり張り付いたボッコ |
さすがにAXLは快調 | ブナ林を進む |
平坦な尾根筋、左の大きな尾根は烏帽子山から栂峰に直接続いている | |
立川君とAXL・HZUが先行する | 振り向いたHZU |
風雪の中、PWDが黙々と登る | QVHは地図と磁石で確認を忘れない |
天候の変化が激しい | 立川君はまだ余裕の表情 |
オオシラビソ | 1,490m峰のオオシラビソ |
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ピークにて記念撮影 | 栂峰はガスに霞んでいる |
ささやかに乾杯 | QVHは傘をさして休憩 |
いよいよ滑降がスタートした | |
快適な滑降が続く | 1,102m峰から次々と滑る |
バテバテのPWD | 杉林の中を滑る |
スノーブリッジを渡る | 「栂峰山大神」神社 |