登山者情報618号

【2002年04月28日/大境山/井上邦彦調査】

午前中に帰宅できる山という条件から、大境山を選んだ。中田山崎の酒店前の駐車帯に車を止め、高度計を200mにセットする。06:03酒店脇を流れている沢の右岸を歩き始める。正面に立ち塞がる砂防ダムの手前から水路が入ってくるが、ここに大きな標柱が立っている。左に折れて水路沿いに進む。足元にはカタバミが咲いている。水路の左岸は杉林、右岸の歩道には民地に入らないようにとロープが張られている。程なく「大境山」と書かれた標柱が再び目に留まる。ここから右に折れて杉林の中に入っていく。沢に出て左岸を進むと湿地を通る。今回は長靴を履いてきたので構わずに進む。ミヤマスミレ・キクザキイチリンソウ・ユキツバキ・ショウジョウバカマ・オオバキスミレが咲いていた。沢を渡り右岸に移ると、シラネアオイを見ながら急な上りになるが、次第に傾斜は落ちる。潅木の中に広く刈り払われた歩道を行くと、鮮やかな新緑の中に、ムラサキヤシオ・タムシバ・ムシカリ・イワウチワが咲いている。
06:31両側から沢がせり上がり、ついには400mで右手の沢が歩道のすぐ側まで登ってきて水も汲めるようになる。カッターシャツを脱ぎ、ザックからタオルを出す。ここから本格的なのぼりが始まる。時折残雪が歩道を覆っている。雪が融けた直後の斜面には、ブナの押し葉が幾重にも重ねられアイロンをかけたような平滑で、その上に弾け飛んだブナの新芽の皮と、毛玉のようなブナの花が一面に散乱している。480mより残雪が多くなり、昨日のものと思われる人間の足跡が見られた。気がつくと沢状の残雪が大蛇のように上に伸びており、次第に傾斜がきつくなる。雪は堅くなり、スパイク長靴でなかったことを悔やむが仕方がない。長靴のサイドと残雪の凹凸を利用して登っていく。
記憶では一度左にトラバースしたような気がするが、以前に私が地図に落としたラインを確認すると、尾根を最後まで直登している。うっかりザックを落とそうものなら下まで滑っていきそうな急傾斜である。580mで周囲に高木がなくなる。このままでは危険と判断し、ザックからピッケルを外そうとして、誤って熊スプレーが落ちてしまう。慌てて残雪を走り下って追いかけ、運良く藪に入った所を拾う。戻ってザックを背負い、見上げると岩場に微かな記憶がある。そのまま急な残雪を詰めると、周りには歩道がない。面倒とばかりに岩場を登って、雪崩に磨かれたヒドを詰め、07:08〜19残雪の末端で1回目の食事とする。飯豊連峰から朝日連峰まで素晴らしい展望である。ピッケルをザックに取り付け藪漕ぎを再開する。07:27、730m小ピークに立つと前方に歩道が見えた。歩道を目指して尾根上を進む。最近の鉈目がある。今春の熊狩りのものであろうか。
07:30、740mようやく夏道に出る。予想通りに歩道は左斜面から登ってきていた。歩道を登ると再び高木が出始め、07:39、840m残雪に上がると、県境稜線である。誰が付けたか赤布があった。下山時に視界がない時はポイントが分かりにくいと思われる。残雪の上には数人のスパイク靴の足跡が続いていた。県境稜線を南に向かうとすぐにブナ林が出てくる。夏道は西側を巻いている筈だが、構わず東側からブナ林を巻き、右手に下り始めると沼川の源流一帯は一面雪に覆われて高山の雰囲気を醸し出している。記憶を辿り、夏道のラインで一度沢に下り手前の尾根を登って、07:58、890m県境の歩道に出る。960mに左からの雪斜面が歩道を覆っている。短いが急で堅く、長靴では足場が作れない。両手の指先を立て四つん這いになって乗り越える。何時ものことであるが、このコースには騙しが多いく、なかなか山頂に至らない。それでも騙される度に傾斜が落ちていく。オオバキスミレ・ショウジョウバカマ・マンサクが咲いている。MXLと無線が繋がる。ODDと二人で祝瓶山に向かっているとのことである。08:16、1070m平坦な残雪の上を歩く。池はすっぽりと雪に埋まっている。
08:22〜51、1,100m(地形図は1,101m)大境山々頂は雪が消え、三角点と小さな標柱が確認できた。雄大な飯豊連峰の右手には日本海が広がり、新潟東港や粟島が見え、朝日連峰の左手には光兎山が目立っていた。ラーメンを煮ているとLFDと無線が繋がった。百石山の蕨園でこれから山焼きとのことである。無風快晴、誰もいないのを良いことに、上半身裸になって、しばし展望を楽しむ。
今年始めて膝バンドをして下山を始める。長靴なので靴紐を締めることができず、足先を痛めやすいので、急な箇所は靴を横において力が足先に当たらないように気をつける。ギフチョウに先導してもらい下る。登るときに四つん這いになった残雪はピッケルで足場をカッティングして下る。そこから左側の雪渓が下方まで続いていることを確認できたので、下の沢までグリセードと波乗りで滑り降りることとした。百国山方面に巨大な煙が数箇所立ち昇っている。LFD達が山焼きをしているのだろう。
09:20県境尾根から歩道に出る。3人の男性登山者とすれ違う。09:25、730m(登りは740m)で尾根から右手に下ると720mで残雪に歩道が消えている。ピッケルを出して、左斜めに下る。660mで登りのルートと合流し、そのまま波乗りやキックステップの要領でどんどん下る。490mで下方に水の音がしたので、右の尾根に右手の平坦地にブナ林が広がっていた。再び左の沢に下り、長靴なのを良いことに雪のない沢を下って、地図を確認。先ほどの平坦地のブナ林から現在地を推し量り、410mで左の尾根に上がると歩道に出た。後はそのまま下り、09:58水路に出て、10:02酒店前の駐車帯に戻った。高度計は180mを示していた。
砂防ダム手前の標柱 カタバミ
水路の標柱 オオバキスミレ
キクザキイチリンソウ ここから急登が始まる
ムラサキヤシオ 大蛇のように伸びている残雪
上部の急な傾斜地
飯豊連峰が見えてきた
登ってきた尾根を見下ろす 最上部の藪漕ぎ
ようやく歩道が見えた 県境主稜に着く
県境主稜から大境山を仰ぐ
ここから正面の沢に下る
騙し峰が多いが展望は抜群である 山頂部の平坦地に出る
山頂からの飯豊連峰(クリックすると拡大します)
山頂から望む権内尾根と日本海
大境山々頂の三角点と標柱 山焼きの煙
登ってきた県境主稜を見下ろす
ギフチョウ