登山者情報677号
【2002年12月14日/倉手山/井上邦彦調査】
06:53大渕橋に除雪の邪魔にならないように車を止める。ここでスパッツと腕時計を忘れたことに気付く。ザックに長靴を入れ、登山靴にスキーを履いて歩き始める。
ゲートを過ぎると、一度除雪した後にまた雪が積もったようである。右の岸壁から小さな雪崩が車道を塞いでいた。ウサギの足跡が続いている。気温は-2℃。手擦りが灰色の偽木の橋を渡り、次の赤い手擦りの橋手前が登山口である。まだ「倉手山登山口」の標識が頭を出していた。
07:21〜35(標高305m)登山口にスキーと登山靴をデポし、長靴に高坂カンジキを履き、ストックを持って登り始める。途端に腰を越すラッセルである。雪の中でもがくだけで一向に進まない。07:53(標高340m)ストックをザックに着ける。両手で雪を胸に掻き集め、身体で雪を押し付け、膝で踏み固めてようやく一歩を踏み出す。柴があればそれを掴んで身体を引き上げる。時折、鳥の鳴き声に混じってサルが騒いでいるようだ。
08:39〜50(標高410m)雪の層を観察すると、上から40cmに僅かに固めの層があるが、ラッセルでは地面から表面まで全く同じ雪質である。尾根に出ると時折、膝が隠れる程度の浅いラッセルは、足を外側に大きく回す花魁歩きで進むが、殆どは両手で雪を掻かずには進めない。軽い荷物なので腰から胸に掛けてのラッセルをこなすが、重荷では無理だろう。
09:23(標高485m)時刻は休憩毎に携帯電話で確認した。10:00〜12(標高550m)、左から小尾根を合わせる。10:24(570m)ようやく展望地に至る。倉手山の山頂左から太陽が昇り始める。休憩するたびにお握りを頬張る。平坦になり大きな楢ノ木が出迎えてくれる。11:37〜48(標高670m)そろそろウインドクラストとなっても良いはずなのだろうが、この2日間は風もなくひたすら降り積もったためかラッセルが続く。最後のお握りを頬張る。この時点で785m峰から下ることに決めた。
大きなブナノ木を過ぎると、ヤマグルマやサラサドウダンが雪面に出ている森林限界モドキとなる。膝までのラッセルとなるが、登山道から離れるため潅木が作る空洞に足を取られる。飯豊連峰は刻々と天候が悪くなっている。
12:41〜50、785m峰に着く。「右倉手山」の標柱が立っていた。ここで記念撮影をする。倉手山に続く主稜には雪庇が出始めていた。
下山は打って変わって快適である。雪質がやや湿り気を帯びて変化してきた。下部で2頭のサルを見つける。13:47〜55登山口に到着する、気温5℃。上流で工事をやっているのだろう、道路が除雪されていた。ここで登山靴とスキーに履き替え、14:13大淵に到着した。
梅花皮荘対岸の岩場に小さな雪崩跡 |
動物の足跡 |
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登山口手前から朝焼けの峰々 |
倉手山登山口 |
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振り返れば峰々が輝いている |
ウサギの足跡 |
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梶川峰から扇ノ地紙 |
平坦部は膝までのラッセル |
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稜線には滝雲がかかり始めた |
腰までのラッセル |
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650m楢ノ木オジサン |
680m付近 |
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高木がなくなる |
樽口峠を見下ろす |
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785m峰と倉手山 |
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ヤマグルマ |
長者原・泉岡を見下ろす |
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雨乞山(三角山)
アバランチシュートとアレートにより、まるで氷食尖峰のように見える(※1) |
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サラサドウダン |
高度を上げる |
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785m直下 |
785mへ最後の登り |
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785m 主稜に出る |
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鍋倉山方面 |
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倉手山に続く主稜 |
720mのブナ |
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リョウブの冬芽 |
ミズナラの冬芽 |
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マルバマンサクの冬芽 |
マルバマンサクの鋸枝 |
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マルバマンサクの実 |
ヤマウルシの冬芽 |
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オオバクロモジの冬芽 |
サラサドウダンの冬芽 |
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リョウブの実 |
カエデの蹄状新芽の正体 |
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民宿奥川入 |
エゾユズリハ |
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ニホンザルがこちらを見ている |
常緑のツツジ科植物 |
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展望地から倉手山 |
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正面の尾根が西俣尾根取り付き |
大淵橋袂の遮断機 |
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「氷河・周氷河作用による地形」より |
アバランチシュート |
雪崩路ともいう。雪崩は30〜50°の傾斜面によく発生するが、このような斜面すべてで雪崩が発生するわけではない。頻発する雪崩の通路は無雪期には擦り磨かれた岩肌を露出し、樋上の凹地形を形成する。 |
アレート |
鋸状山稜、櫛型山稜ともいう。氷食作用によって生じた急峻な稜線を指す。両側からのカールの後退による切合によって生じ、鋸葉状の縦断面をなす。 |
氷食尖峰 |
ホルンともいう。氷食作用によってつくられたピラミッド型の鋭い岩峰を指す。3方向ないし4方向からのカール壁の切合いによって生じることが多い。 |