登山者情報679号

【2002年12月28日/大規模林道〜小枕山/井上邦彦調査】

除雪車とすれ違いながら慎重に運転し石滝へ向かう。途中から降雪が激しくなってきた。人家が出てきた所に三叉路があり、栗の支柱の標識がある。ヘッドライトに浮かぶ標識には雪が付着しており標記内容は分からないが、右の道はすぐ先に橋があり除雪がなされていないので、ここが大規模林道の基点と判断。車の中で登山靴を履き、身支度を整え、06:19スキーを履いて歩き始める。
橋を渡り終えるとゲートがあった。数日前に除雪がされた様子、車が強引に入って行ったようだ。車の轍を辿る。06:36(標高325m)ヘッドランプを消し。雪が小降りとなってきたのでカッパを脱ぐ。07:13(標高460m)除雪の痕跡がなくなり、車の轍もなくなった。雪は降ったり止んだりを繰り返し、その都度にカッパを着たり脱いだり繰り返す。07:19-26握り飯を頬張る。小鳥の集団が鳴きながら飛んで行った。07:41(標高525m)林道の脇に大きな石がある。確か赤ペンキで「山の神」と書かれていた石である。付近は吹き付けとなっており、今後は雪崩の注意が必要になってくる。07:59(標高580m)道脇に国土交通省の「三体山雨量観測所」施設がある。
08:19(標高630m)ようやく小枕山トンネルに到着する。トンネルの全長は471m、スキーを両手に持ってトンネルを抜ける。トンネルの前後は雪崩植生であり、通過できる期間は限られている。また風が石滝側から金目川へ吹き抜けるため、途中まで雪が吹き込んでいた。トンネルを抜けると天候が回復し、金目川を挟んでヨモギ平のブナ林が広がる。08:29-44(標高600m)食事を摂る。ここで地図とコンパスをセットする。林道はここから下りとなる。08:59(標高555m)在所平に差し掛かった所で、左のノリ面を登り、平坦なブナ林に入る。葉が繁っている時は気が付かないが、在所平は大きなうねりをもって広がっている。尾根部を登ると、どうしても西北西に進んでしまう。目標の最低鞍部は真北である。コンパスを睨み方向を直しながら登る。09:40-46食事。雪の状態から判断して雪崩の危険性は感じられない。小枕山南東斜面は十分に柴が露出しており、雪が安定している。ブナ林の緩斜面から急斜面に変化するラインを辿る。通常積雪期は通れないラインである。10:21-24(標高780m)食事。高木がなく、大きな角のある転石のある平坦地を通過する。始めは雪崩による地形かと思ったが、よく観察すると、地滑りを起こした土砂の最上端であることに気付いた。
長谷川氏と話した時のことを思い出して整理すると、小枕山南東斜面は急な崖であり雪触植生となっている。途中からこんもりとした斜面が不規則なうねりをもって在所平と呼ばれる緩斜面を形成し広大なブナ林が発達している。さらに在所平の南西部には傾いたブナの分布が見られた。つまり、在所平は河岸段丘ではなく、典型的な地滑り地形であり、傾いたブナは、彼らが成長するある時期に土砂が動いたため、そのまま固定したものと考えられる。
10:39(標高820m)小さな雪庇を崩し主稜に出る。ここから上は主稜にも高木がなく潅木となる。石滝側には杉の植林地が見下ろせる。雪崩の危険性が少ないので、そのままスキーで登り、10:58-11:26(標高875m)小枕山々頂に立つ。気温は0℃。視界はあまりない。この先は主稜が細めとなり金目川側が急斜面となっている。足場を固めてラーメンを煮、缶ビールを飲み、ODDと無線交信をする。
シールを剥し、靴紐を締め直しカンジキ用のゴムバンドで登山靴を締め、スキーで滑降を始める。始めは斜滑降で下るが次第に身体が慣れて来る。11:43(750m)最低鞍部の標識でコンパスをセットする。快適にブナ林を滑降する。胸高直径1mを優に超える巨大なブナが散在している。コンパスを確認すると、どうしても左に行ってしまっている。何度か小さな沢を横切り小山を越える。所々に遊歩道の標識が頭を出していた。大きなブナの根元で立ち止まり、ふと見上げると干からびた茸が沢山しがみついている。何の茸か分からずに見上げていると、茎の様子からナメコであることが分かった。永年山を歩いているが、このような積雪状態でナメコの大群を見たのは始めてである。
12:32-40林道に出る。気温4℃。シールを貼り付ける。遊歩道登り口の標識とトイレを横目に見て、登る。また天候が良くなってきた。12:49今朝のトレースと合流する。12:59-13:07食事を摂る。13:19-25トンネルを抜け、13:30シールを剥ぎ下り始める。13:52山ノ神通過、14:00(470m)カンジキの足跡と車の轍が出てきた。車の底で圧雪された部分と轍に片足づつ置いて速度を調節しながら快適に下る。14:22(標高290m)大規模林道の基点に戻った。
今回の山行は直前の降雪により軽く層のない積雪であり、雪層の滑り面がないため雪崩が発生しにくい条件であった。もし層があれば今回のルートは危険性の高いものとなるであろう。また全行程を通して動物の足跡を全く見なかった。これは動物がいないのではなく降雪により足跡が隠されてしまったと言える。最後に、地滑り地形は複雑な起伏に富み、方向感覚を失い易いことを痛感した。

大規模林道 山ノ神の石
三体山雨量観測所 小枕山トンネル石滝側入口
左から柴倉山・合地ノ峰・孫守山
トンネル金目川入口 金目川
ヨモギ平のブナ林
在所平のブナ林
在所平のブナ林
傾いたブナ サルノコシカケに雪が積もっていた
徐々に高度を上げる
まだ枯葉が残っている 鞍部に登る斜面
雪崩危険地帯を行く 見上げたブナの枝
緩斜面の最上部
ようやく主稜に上がる
山頂直下 小枕山々頂
小枕山々頂にて 主稜の南
在所平を一望する
不動岩が見えた 主稜の最低鞍部
巨大ブナ 雪に埋もれた標識
在所平のブナ林
ナメコ
在所平 林道に出る
ヨモギ平のブナ林
遊歩道入口とトイレ ヨモギ平のブナ林
ヨモギ平全景
石滝集落と県境の山々
今回のルート