登山者情報683号

【2003年02月05-07日/山形県山岳遭難対策委員会救助訓練/井上邦彦調査】

開講式の後、菅野講師から「読図とコンパス」について基本的な操作法の実習講義があった。続いて、高貝講師から「レスキューデス」について講話があった。「救助隊員として命がけで助け出した登山者が病院で死亡」を無くするため、低体温症の適切な対応の具体的な方法は、興味深いものがあった。参加者を8人程度の5班に分け、井上・菅野・高貝・吉田・仁科が担当講師となった。
昼食後、リフト最終駅からカンジキを履き御田避難小屋を目指した。高貝班は元気良く避難小屋を越えて刈田岳に向かった。井上が担当したA班は、コンパスを固定し地図なしで目的地の向かう方法、デフ棒を立てるポイント、地図と周辺の目印で現在地を把握する方法等を説明しながら避難小屋に到達。スキー場脇のブナ林に入り、視界のない中コンパスで現在地と目的方向を探しながら宿舎に下山、翌日に備えて登攀用具の操作法を確認した。
夕食後、講師室の打ち合わせ時に「カッパを用いた長野方式搬送法小国改良版」のバージョンアップが検討され、実用に耐えうる評価を得た。この方法は、訓練最終日に受講生に公開された。
2日目は、青い鳥ゲレンデで堅い雪面の歩き方、ピッケル操作法、スタンディングアクスビレイを習得した。クライマックスは仙人沢に下り、荒天の中、急斜面で人間を背負っての吊り上げ吊り下げ搬送。A班は受講生のみでシステムを組み立てて実践さながらの訓練となった(スタート前に全てのシステムを講師が確認して安全性は確保)。昼食は高貝講師手作りのトン汁で身体を温めた。
次は高貝版図合同で、携帯式スノーボートを組み立て1名が乗り、ロープを使って急斜面を登る。何度も繰り返すうちに次第に要領を覚え、受講生どうしで工夫がなされていく。講師は時折アドバイスを行うだけだ。
3日目は、10班に分かれ、地図上に記載されたポイントをコンパスで探し出し、デフ棒を立てる競技。雪崩ビーコンの使用方法、数日前に埋めておいたダミーをゾンデ棒で捜索収容する訓練、県警航空隊員によるヘリコプター利用訓練が行われた。

地図とコンパスを説明する菅野講師 レスキューデスを講話する高貝講師
受講生の方々 現在地を調べながら避難小屋を目指す
菅野班と御田避難小屋 樹氷原を進むA班
コンパスを頼りに宿舎を探す スタンディングアクスビレイ
吊り下げ吊り下げのシステム いよいよロープに命を託す
大声で連絡が飛び交う サイドには懸垂下降のサポートをつけた
背負われている方も恐怖感がある いよいよオーバーハングに差し掛かる
雪庇の通過に苦労する
背負う方も身動きが取れない 宙吊りの状態
訓練現場全景
途中のサポートによる伝令が効果的であった
トン汁が冷えきった身体を温めてくれる 携帯スノーボードを組み立てる