登山者情報706号

【2003年05月17日/大日杉〜飯豊山/井上邦彦調査】

自宅発、子持ち峠・九才峠経由で大日杉に向う。岩倉で車を止められる、山菜採り入山料徴収である。登山であることを話して通してもらう。前を走る車が岳谷の1軒家に入って行った、追いかけてみるとやはり山田守氏であった。久しぶりの再会である。大日杉の駐車場まで自宅から38.5km。
05:43駐車場発。沢に掛かる橋を渡る。大日杉小屋はまだ雪囲い板が外されていなかった。右手の広場を横切り杉林に入ると、左手にコンクリートで固められた「大日杉の根跡」がある。キクザキイチリンソウ・エンゴサク・エンレイソウ・スミレサイシンの咲く中を登って行く。ザンゲ坂は一部が硬い雪で覆われ、部分的に鎖が露出していた。
06:03◇標識「ザンゲ坂」で一汗を拭う、付近のタムシバは終わりかけていた。若干登るとタムシバは勢いを取り戻し、ムシカリやムラサキヤシオ、イワナシ、オオバクロモジと共に目を楽しませてくれる。ブナの新葉は緑濃くなり硬さを増している。06:24◇標識「長之助清水」は水音が聞こえる。すぐ先に倒木があり脇を通り、雪の上を登ると左からの尾根を併せて広い雪原となる。06:31巨大な杉の根元に御田の標柱、ここより夏道となりブナ林を快適に進む。06:42-50、1,090m剣ケ峰が良く見える所で食事とする。1,130mは尾根を軽く左から巻く。明瞭なカモシカの足跡が雪の上に残っている。所々夏道が雪に覆われている。登山道にはショウジョウバカマ・カタクリが咲いている。1,230mからは雪道が続く。1,310mでブナの新緑が終わる。夏道と雪道が交互に登り、やがて夏道がなくなる。騙し地蔵は左から巻くがトラバースの雪が硬い。07:25滝切合を通過し、1,470mから再び夏道と雪と交互となり、07:44-53地蔵岳山頂に到着する。
広場には標柱2本が雪の上に出ており、三角点のある上の広場は露出している。ここで日焼け止めクリームを塗る。無線はまだ誰も出ないので、電話で自宅に現在位置を知らせる。雪原を下って鞍部からは夏道と雪道が交互になる。イワナシ・カタクリ・マンサクが咲いている。08:33-40、1,520mで食事。
前回の朝日連峰で始めて新しい軽登山靴を履いた。今回の山行で2回目である。雪が多いが防水は大丈夫、キックステップはプラスチックブーツに到底かなわないが、夏道は格段に歩きやすい。
朝のせいか虫がいない。ショウジョウバカマ・カタクリ・エチゴキジムシロが咲いている。ナナカマドの芽がおいしそうだが、食べたことはない。08:58御坪は露出している。青空の下、飯豊山から種蒔山に連なる主稜が眩しい。09:04御沢分岐、標柱の頭が出ている。御沢に下り雪渓を詰める。最後の急登でピッケルを抜く。急斜面の表面から2cmの所に硬い雪層があり、軽登山靴のキックステップは厳しい。
09:33、1,740m切合小屋の脇を通過する。大日岳が見え隠れし、眼下には雲海が広がる。09:59草履塚も脇の雪の上を通過し、笹薮を漕いで北峰手前の鞍部から夏道に上がる。ここからは全て夏道である。10:05-15御前坂を眺めながら食事。ウラシマツツジが咲いていた。下って姥権現、御秘所と過ぎて行く。ミヤマキンバイ・ヒメイチゲ・コメバツガザクラが咲いている。突然ウサギが5m脇の石垣藪から飛び出す、まるでバスケットの選手のような軽やかなフットワーク、これを脱兎のごとくというのであろうか。ウサギは全体に薄茶色となっていたが腹部はまだ白い。
10:39御前坂基部にある標柱は風上側のボルトが浮いて、冬季間の風の強さを思う。御前坂は大きく2段に分かれている。最上部の石垣を目指して登りきる、11:00一王子の標識から本山小屋が見えた。水場は深い雪の下である。蔵王刈田岳駐車場にいるJR7YTDと交信。11:07本山小屋を通過。11:18-12:06飯豊山々頂、標柱にホシガラスが留っていた。若干戻って雪を取り、缶ビールを冷やす。同時に雪を溶かしてラーメンを煮る。電話と無線で現在地を連絡する。のんびりと展望を楽しむ。大日岳は直下に急傾斜の雪田が残っている。
12:19-21本山小屋を確認する。外にある便所2穴のうち、1穴は扉が壊れ、もう1穴も窓が割れていた。
12:27一王子を通過する。夏道を歩いて13:06草履塚着。トンネルのように掘れた夏道から雪の上に出る。一面の雪原であり、このあたりは視界がないと迷うので注意が必要である。13:21-24切合小屋を確認する。便所は3穴のうち1穴は鍵が掛かっていた。この先、ピッケルを出し、急斜面をグリセードで直滑降。御沢が左に曲がる所から、わずかに露出している右手の夏道に入る。13:39御沢分れで、ピッケルをザックに着ける。13:45御坪を通過する。男性の声が聞こえたので振り向くと、種蒔山稜線から数m下に人間らしい二つの点が見えた。下の点は丸く動かない、上の長い点がゆっくりと下の点に近づいている。もしかすると2名パーティの一人が滑落したのかもしれない。ここからはかなり距離があり、声は届かない。さっきの声はよほど大きな声をだしたか、風に乗って聞こえたのかもしれない。ともあれ暫く観察していると、丸い点はようやく立ち上がり、2人で下山を開始したようだ。安心して私も下山を開始する。14:12-19食事、黒と白模様のケラが幹に留まり、瑠璃色の鳥が目の前を飛んでいく。
朝には流れていなかった地蔵岳手前鞍部に融雪水が出ていた。雪道を登って、14:56-15:01地蔵岳山頂着。若干降った所からは雪道となる。15:12滝切合通過、騙し地蔵を巻いて尾根を下るが、迷いやすい状態なので注意する。1,250mまでは全て雪上を降り、15:37御田を通過する。15:38-15:46長之助清水で水を汲み食事、水場への道は足場に留意。15:57ザンゲ坂を通過、16:11駐車場に到着する。

山道から大日杉小屋と広場を振り返る 大日杉の根跡
ザンゲ坂には硬い雪が残っていた 長之助清水と倒木
タムシバ 登山道と雪道を交互に進む
1,310mで新緑は終わる 剣ケ峰と七森を望む
滝切合から地蔵岳と飯豊山
騙し地蔵を振り返る 地蔵岳山頂の標柱
地蔵岳から種蒔山方面を望む 雪道と夏道を交互に進む
地蔵岳方向を振り返る
種蒔山 御坪
草履塚と飯豊山
御沢分レの標柱 御沢
切合小屋脇から草履塚と飯豊山 草履塚から種蒔山を振り返る
大日岳が姿を現した 草履塚下から剣ケ峰と一王子
ウラシマツツジ
姥権現 ミヤマキンバイ
コメバツガザクラ 御前坂から草履塚を振り返る
一王子から水場分岐と本山小屋
飯豊山々頂を目指す
山頂の標柱に留ったホシガラス 山頂から本山小屋を振り返る
飯豊山々頂からのパノラマ
ダイグラ尾根宝珠山 本山小屋
飯豊山神社 トイレの様子
地蔵岳から種蒔山に伸びる尾根全景
ヒメイチゲ ミネザクラ
切合小屋 中央の屈曲部から夏道に上がる
種蒔山の人影(重なっている) 二人で下山を開始した
大日杉〜五段山〜三国岳
地蔵岳を目指す 種蒔山を振り返る
地蔵岳〜大日杉 全景
雪の重さで曲がった潅木が起き上がる エチゴキジムシロ
地蔵岳山頂から飯豊山とダイグラ尾根上部
新緑のブナ 御田杉
長之助清水 ニリンソウ