登山者情報732号(投稿)

【2003年07月05-06日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/山田亘(wataru@infoibis.ne.jp)調査】

コースタイム
7月5日 曇り後晴
05:55天狗平(410)→06:15十文字分岐(450)→06:46〜07:00桧山沢吊り橋(470)→07:39 666m地点→08:37池の平(926)→08:45種蒔の池(920)→09::04〜09:37長坂清水分岐(962)→10:58〜11:14休場の峰(1320.7)→12:20千本峰標柱(1430)→12:28千本峰ピーク(1460)→12:39千本峰岩場(1430)→13:20〜13:42 1499m峰南側鞍部(1460)→15:10宝珠山の標柱(1710)→15:58宝珠山の岩稜(1820)→17:03鞍部(1770)→18:29三角点(2105.1)→18:54本山小屋(2100) 
7月6日 晴れ後曇り
02:30起床→03:07本山小屋発(2100)→03:27三角点(2105.1)→04:20玄山道分岐(2060)→05:15〜05:55御西小屋付近(2080)→07:22天狗の庭(1830)→08:09御手洗の池(1830)→09:46烏帽子岳→10:00梅花皮岳(2000)→10:49〜11:30梅花皮小屋(1850)→12:53本石転び出合付近(1220)→13:35〜13:47石転の出合付近(890)→14:20梶川の出合(810)→15:07彦衛門の平(670)→15:12うまい水(660)→15:44二号砂防ダム(470)→15:54十文字分岐(450)→16:17天狗平(410)
(カッコ内の数字は地形図と高度計とGPS3+より求めた高度です。GPSログはダン杉本氏のカシミールで表示しています。)
記録
 この週末は,、大熊尾根かダイグラ尾根かで迷っていた。金曜日の雨で大熊小屋までの渡渉が心配になりダイグラ尾根
にした。ダイグラ尾根は去年の8月31日に登っており、今度は花の時期に登りたいと思っていた。折しも村上大祭が近づ
いており、4日の夜にかみさんと子供を村上の実家に預けて登ることにした。
7月5日 曇り後晴
04:00窓を打つ雨音にやめようかと思う。あの長い登路を雨の中歩き続けるのを想像するだけで気が滅入る。布団の中
でやめるつもりになっていると雨音がやんだ。04:30起床。小さなめしを8個位作り、実家を出て7号線と113号線で横根か
ら県道を経て05:55天狗平発。曇っている。おなじみのブナの林道を歩き06:15十文字分岐。平坦な道を歩いていくとダイグ
ラ尾根下部が見える。いかにも普通の尾根のような顔をしている。06:31二号砂防ダム。階段を登ると道は狭くなるが平坦な道が続く。やがて大又沢が左から合わさり06:41落合(470)。06:46〜06:57桧山沢吊り橋付近で水を採りバナナを食べた。
07:00吊り橋を渡ると道は北東に回り込み、尾根に合わさると急登が始まった。一口に急登と言っても色々ある。自分の感覚では梶川尾根ほど容赦なくはない。けれど先週の燕岳の合戦尾根とは比較にならない厳しさがある。07:20〜07:22斜度緩み登路に岩が出ている(590〜600)。この岩を過ぎたたところで下からニッカボッカーをはいた人がリズム良く登ってきた。昨日掲示板でアドバイスをくれた相馬さんであったが、自分は遅いので挨拶程度で別れた。このとき青空が出ていたが主稜上にはガスが降りていた。07:27再び登路に岩が出ている(610)。そしてまた尾根沿いにキタゴヨウの続く急登だ。07:34斜度が緩み振り返ると倉手山が見える。左には大又沢、右手にはクサイグラ尾根があり、尾根の奥に雪のついたピークが見えた。石楠花に覆われた岩(上の方は枯れかけていた)を過ぎると、ほどなく07:39 666m地点で一時平坦になった。
 666m地点から長坂清水まではやや緩い登りという印象だ。尾根沿いにやや桧山沢側を歩き、08:18登路に畳のような岩があるところから尾根を桧山沢側に外れる(840)。この区間ブナの間からクサイグラ尾根を越えて石転び沢が見える。中の島が大きく出ており、この時期にしては早いと思う。08:37池の平(926)で登路は尾根に戻り平坦になった。少し歩くと登路から休場の峰と米栂の平が見える。実景から長坂清水の大体の位置を推測した。緩いアップダウンの後、種蒔の池直前で枯れたキタゴヨウがあった。落雷に打たれたのか何か印象に残る。08:45種蒔の池(920)。まだ穂は出ていない。再び軽いアップダウン。途中、桧山沢側のキタゴヨウが1本切られクサイグラ尾根の展望が良いところがあった。09:04大きなナラの木に「水」の標識がつけられている。長坂清水分岐だ(962)。GPSをザックに残し、プラティパスを2つ持って東の沢に降りる。平らになったところで倒木をまたぎ小さな尾根を越えて右手の沢に降りると水が湧いていた(950)。プラティパスでは汲みにくく09:12〜09:20水場にいた。急斜面を登り返し09:25〜09:37長坂清水分岐で休む(970)。GPSのスイッチを切らずにおいたのでログが赤くにじんだようになった。休んでいるうちにこの尾根のことを段々思い出してきた。
水場を過ぎると休場の峰までがすごい急登なのだ。少し緩やかに歩くと強い急登が始まった。09:55斜度緩み(1070)針葉樹がある。10:05尾根をやや桧山沢側に外れ(1100)急登が再開した。10:17斜度緩みコメツガとブナが混生し、10:24コメツガの平(1180)。ここからの休場の峰は標高差の割に高く見えた。桧山沢側の景観がいいが、稜線のガスはとれない。1220m位から急登となる。この登りがダイグラの中でもっともきつい気がする。10:58〜11:14休場の峰(1320.7)。宝珠山の向こうに飯豊山が見える。去年は「かっこいい」と思ったが、今年は遠く感じた。去年より20分位早く出ているのだが、ここまでで30分位遅れている。アイゼンとピッケルの分荷物が増えたこともあるだろうが、一番の理由は去年より5キロ太ったからだろう。
ここから1499m峰南側鞍部まではアップダウン区間で、三角点との水平距離を縮める大事なところだ。しかし実景で見ると遠い。休場の峰を降りて最初の巻くところはコメツガがきれいで日本庭園のようだ。次に休場の峰の南1340mピークを降りていく。この箇所は下ってくると強烈な登り返しに思える。急ごうとしたが12:20千本峰標柱(1430)、12:28千本峰ピーク(1460)(下りにヒメサユリがあった)、12:39千本峰の岩場を降りたところ(1430)と去年と同じ時間がかかった。千本峰から南を見ると三角点ピークは宝珠山に隠れていた。西を見ると米栂の間から主稜が見え、ガスは消えていた。この先大又沢側を巻くところに雪があったが問題なく通れた。13:20〜13:42、やっと1499m峰南側鞍部付近まで来た(1460)。ここから宝珠山までは緩やかな登りだ。少し登ると登路に枝を伸ばしたダケカンバが印象的だ。ほどなく薄色のシラネアオイが3株あった。14:17桧山沢側のヒメサユリが盛りだ(1590)。14:22ダケカンバに混じりまだコメツガがある(1610)。
15:10宝珠山の標柱(1710)を過ぎると大又沢側に雪が出てきて通過に時間がかかった。15:58宝珠山の岩稜(1820)から主稜を見る。自分の大好きな景色だがこのときは時間も遅く、気が気でなかった。GPSで日の入り時刻19:06を確認し、19:00まで着けばいいと気持ちを切り替えた。この先鞍部までは水平方向の長さを感じた。地形図では尾根道に見えるが、アップダウン+岩の歩きにくい登路を大又沢側をへつっていくという感じだ。17:03やっと鞍部だ(1770)。登り返しには雪が残り、最初は登路も崩壊した感じだ。一部草かぶりしたところをくぐり抜けると登路がはっきりしてきた。登り返して、1969mの脇辺りで空の青さが目立つ。斜度が緩み三角点へ水平距離を詰めていくと茶色い動物が足下から飛び出し三角点方面に走って行った。山兎のようであった。
18:29三角点(2105.1)。なんとか着いた。ここで今後の予定を考えた。@明日ダイグラ尾根を下るA今日御西に行き明日石転びで降りるB今日本山に行き明日早立ちして石転びを下る、だ。もう2年近く主稜を歩いていないし、さっき相馬さんに無愛想だったかもしれない。御西に行くと言っていたのでちゃんと挨拶したい。ダイグラを往復するだけではただの遅い記録になってしまう。主稜を歩いて意義ある山行にしたい。エアリアを広げよく考えたが、今日は無理せず明日無理しようということで本山小屋へ移動した。
18:54本山小屋(2100)。一階にスペースを見つけ泊まる。結構人がいたが、管理人さんは入っていなかった。居合わせた人の話だと水場はまだ出ていないとのことでフルーチェとパスタを食べ寝た。寝る前は曇っていたが、夜中にトイレに起きると上の方は星が見えていた。 
 7月6日 晴れ後曇り
02:30起床 03:07小屋発(2100)。星が見える。本当は05:00頃出たいが足が遅いので、展望を犠牲にして早出したのだ。03:27三角点で東の空が白み始めてる。このまま居れば素晴らしい景色が拝めそうだが安全第一で下り始める。本山からの下りでログが乱れているのは、北側の踏み跡に入りかけたためだ。南の標柱に戻り歩き出す。ヒナウスユキソウがあった。04:20玄山道分岐(2060)を過ぎると一部、廊下のように平坦な登路がある。ここで朝日に染まる大日岳を撮る。御西岳の南を過ぎて05:15〜05:22御西小屋付近(2080)。水場はまだ雪の下だった。御西小屋を過ぎたところで05:55まで雪渓から水を作りダイグラを見ながらめしを食べていた。錦松梅のぞうすいに納豆だ。去年もそうだったが、なぜかダイグラを担いできた納豆はうまい。発酵が進んでふっくらしている気がする。この位置からはダイグラの断面図を見るようで、なぜあんなに苦労したかよくわかる。この先烏帽子岳までは山形側の雪の上を多く歩いた。06:47 1890m付近で雪渓が急で曲がっているところがあり、アイゼンを出し通過した。07:04生まれて初めてキヌガサソウを見た。越後の山旅の裏表紙にもなっている花で大変嬉しかった。この先道が2段になっているが、尾根を外れ東側の道を歩いていたら道が消えて、急斜面のヤブ漕ぎをして稜頂に開かれた道に出るといったこともあった。
07:15の1860m付近のログの乱れがそうだと思う。07:22天狗の庭(1830)位から小屋で隣だった人と一緒になったが、この人が雪渓から夏道に降りるところで、カメラを落としてしまった。登り返しに30分はかかりそうなところで、アイゼンもなくストックでトラバースして拾いに行こうとしたので止めた。そうしているうちに相馬さんが来た。大日岳を往復してきたのだ。せっかくなので少し話しながら歩いた。相馬さんのコースの取り方は堅実で無駄がなく勉強になった。このカメラを落としたのは07:54 1802m地点だろう。ログがわずかに乱れており、相馬さんの画像の撮影時刻も07:59となっているからだ。08:09御手洗の池(1830)。この先、烏帽子岳への登りはダイグラの疲れもありきつかった。実は、遠回りでもダイグラよりは安全だろうと主稜を選んだのだが、残雪の歩きは登路の判断が難しかった。09:17ウスユキソウを撮影している。09:46烏帽子岳。少しの登り返しで10:00梅花皮岳(2000)。鞍部に梅花皮小屋が見える。治二の水が楽しみだ。
10:49〜11:30梅花皮小屋(1850)で水を存分に使ってぞうすいを食べた。事故の影響か、雪渓が縮小してきたためか、上がってくる人は少ないようだった。テン場跡まで雪を降りて、水の流れる夏道を少し下り、中ノ島への雪のトラバース。あとどれくらいですかとたてつづけに聞かれながら12:15〜12:20中の島の下部で雪に乗る。後はコースタイム通りだ。石転びの出合は左岸に穴が開いていた。石転びの出合で休んでいるときにログが乱れた。この頃には沢にガスが下り始めていた。石転びの出合から夏道を歩いて思った。やはり時間がかかる。雪はおそろしいけどありがたいものだと。梶川の出合は崩壊が進んでおりルート選択が難しかった。その先は早く砂防ダムが見えないかと歩いた。十文字分岐から林道に出ると、足の裏から痛みが這い上がってきて背を丸めながら歩いた。16:17天狗平着(410)。
飯豊の湯で汗を流し、村上の実家に戻ると、かみさんも子供も祭りを楽しんだようで上機嫌だった。私が新潟にまっすぐ帰らなかったのもよかったようだ。この3年間で最もハードな山行だった。またダイグラ尾根でズタボロになったが、それでもまた行きたい。

詳しくは http://yasumi.web.infoseek.co.jp/