登山者情報766号

【2003年11月01-02日/ダイグラ尾根〜大日岳〜丸森尾根/井上邦彦調査】

先週の梶川峰では登山道に雪があり軽登山靴では厳しかった。今回のコースは硬雪になると滑落の危険性もある。かといってプラスチックブーツ(プラブー)で雪のない尾根道を歩くのは非常に大変である。急遽半長靴を購入しプラブーと併用することにした。この長靴は底の凹凸がしっかりしているが、衝撃吸収性はなく、保温性も全くない廉価のものを選んだ。
06:00長靴を履いて天狗平を出発する。砂利道ですら足裏が痛く感じる。冬山装備の上に背負ったプラブーが重く感じる。06:17温身平の十字路を通過する。この辺りでもブナは落葉が始まっている。06:26車道が下り始める所で右側の登山道に入る。06:37−44桧山沢吊橋の袂で休憩。この橋は冬期間取り外されるので注意して欲しい。
何時もながらの急登に喘ぐ。07:02ホダワラを通過する。気温は11℃と高く汗が滴る。07:23尾根筋を右に巻く。ストックを忘れたが、ひとりでに両手が触れる急傾斜なので、それ程不便とは思わない。遠くでポンポンと動物を追う音がしている。腹が空き始める。周囲は殆どが落葉しており、時折残っているカエデの鮮やかな紅が目立つ。07:31尾根筋に戻り、07:34傾斜がなくなる。07:36種蒔ノ池を通過する。07:46−55新しく立てた「長坂清水」の標柱の脇で食事を摂る。以前に私が自作しナラの樹に取り付けた水場の標識が役目を終えたことになる。休んでいると寒くなってくる。08:16再び傾斜がなくなると米栂ノ平(仮称)である。08:24から最後の急登となり、08:39-47休場ノ峰に到着する。
ここで夕食の肉を自宅の冷蔵庫にいれたまま忘れてきた事に気付いた。ODDと交信、気温は10℃。宝珠山まで見えるが、主稜は雲に覆われている。08:59-09:03食事を摂る。09:23千本峰標柱、09:27千本峰ピーク。NOOと交信、今日は温身平散策ガイドとのことである。幻の水場について確認する。鞍部を過ぎて暫く登った所にザックを置き、09:51食事。お腹を満たしたところで、10:05-57沢に下り役50m下部の藪をトラバースし幻の水場を探すが、確認できなかった。
11:28宝珠山の肩、標柱が倒れている。所々登山道に雪が出てくる。来年には千本峰・宝珠山・飯豊山々頂ダイグラ分岐の標柱を立て直す必要があるだろう。暑いのでズボンを膝まで巻くって登る。11:48-57宝珠山岩稜、食事を摂りODDと交信。12:22-27岩小ピークで休憩。藪を漕いだ時に枝にぶつけた額が痛い。御前坂を登り、12:47より雪を踏む。半長靴なので靴の中に雪が入り、その都度靴を脱いで払う。登山道の雪に所々露出している岩の上を八艘跳びのように進む。登山道にダイグラ尾根分岐の標柱が倒れているとすぐ、13:19飯豊山々頂となる。
山頂の石祠が壊れていた。本山小屋に向かう途中で山頂まで往復したらしい登山者1人の足跡があった。突然携帯電話が鳴り会話。13:36-14:17本山小屋に着く。入口の雪が溜まっていたが難なく開ける事が出来た。誰もいない。2階の窓が1箇所開け放たれていた。新潟県側の冬期で入口から雪が吹き込み、それが融けて1階に滴っていた。冬山用のデポが置いてある。冬は新潟県側の冬期入口は凍りついて使用できなくなる。いっそのこと、この入口を完全に遮蔽し雪や雨水が吹き込まないように改造すべきだろう。また風下側の窓を改造して冬期出入口とすべきである。登山者が工夫して外から窓を開ける事が出来るようにして「鍵を掛けないで下さい」と張り紙がしてあったが、事情を飲み込めない?登山者によって、鍵が掛けれたり、そとから開ける針金が壊されていた。一応直しておく。ラーメンを煮ていると、千葉から来たという単独行者(川入より日帰り往復)と会う。本日始めて人と会った。
14:29-30飯豊山々頂。14:44駒形山を通過、この辺りから時折ガスが切れ始める。14:43-15:01玄山道分岐にザックを置き、弘法清水で水筒を満たす。草月平の秋、誰のトレースもない。僅かに残っている御鏡雪の周囲は露岩となり、下部はカール地形となっている。ここまでで64MBのCFフラッシュが満タンとなり128MBに換える。デジカメの良い所は枚数を気にせず撮影が出来るので、もっと良くなるだろうと期待してシャッターチャンスを逃すことが少ないことだ。
15:40ガスに巻かれた御西小屋に到着する。水場に下るのも面倒なので、周囲に残る雪を融かして水を作る。NOOと交信する。下界からは御西岳が見えるというが、小屋周辺の視界は20m程度である。突然、ハツカネズミのような生き物が顔を出した。真っ白な細いからだ、尻尾の先だけが黒くなっている。幽霊のように両手を上げてちょこんと立ち上がる。オコジョである。今夜は誰もいない、オコジョと2人だけの夜となった。ラジオから「本日は例年より4℃高く、米沢では20℃を上回った」と放送されていた。
翌2日、カッパを着込みプラブーを履きヘッドランプを点けて、04:20御西小屋を出発する。視界はない。気温3℃、かなり高めである、氷すら張っていない。04:41文平ノ池を通過する。登りになると暑くなってきたのでカッパを脱ぐ。05:09雲を突き抜けると、月のない一面の星空、パラパラと星の欠片が落ちてきた。よく観察すると小さな氷のようである。吾妻連峰の雲が色づく。刻々と空の色が薄くなり、星が一つまた一つと姿を消していく。09:17から雪が堅くなり始める。ピッケルを抜き、キックステップで登る。登山道は尾根筋から左に巻いている。ウイダーインとお湯を飲む。空の赤さが増すものの、雲が駆け登ってくる。05:28みるみる登山道の明るさが増してくるのを実感する。ライトを消すが、雲の動きが激しい。中途半端なクラストで歩きにくい。まるで高所登山のように1歩1歩ゆっくりと高度を上げる。
05:39大日岳山頂着。牛首山方向に若干下って風を避け、カッパを着て休む。磐梯山と吾妻連峰が確認できる。蔵王連峰は飯豊山と重なっている。竜の姿をした白雲が頭上から飛来し、実川に下っては消える。吾妻連峰の右端が変化していく。久しぶりに見る日の出である。雲の縁は溶けた鉄のようだ。06:06ついに太陽が昇る。撮影しようとしたらカメラが作動せず、あれこれ試した後にバッテリー切れに気付く。このため一番良いシーンは撮れないでしまった。撮影しながらゆっくりと下る。カメラは全自動のためストロボが作動し、満足には撮れない。06:41左下に文平ノ池を見て、朽ちて倒れた標柱の脇を通過する。登りになると道が二つに分かれる。下道は広くなり植生が壊れたため通過しないように、石が積まれていた。07:11御西小屋に到着、朝食を作る。御西小屋は何となく古い梅花皮小屋の匂いがする。08:21長靴スタイルで御西小屋を出発し、快晴の稜線を満喫しながら北に向かう。08:34天狗岳で尾根を回りこむと、日陰に残っている雪は硬く、フリクションで下るのはやや緊張する。数年前に烏帽子岳で発生したかつらく事故を思い出す。旧道は急斜面のトラバースであるが、主稜線を歩く新道は安心である。08:55天狗ノ庭を通過し、09:20御手洗ノ池を通過する。池は静かに澄み切っている。大学生らしい登山者数人パーティとすれ違う。聞けば昨夜の梅花皮小屋は彼らだけだったとのことである。09:39亮平ノ池から見上げると、烏帽子岳山頂に2人の姿が見えた。笹原を登りながら、ここを喜美と一緒に刈り払いしたことを思い出す。登りきった所で登山者2人とすれ違う。昨夜の門内小屋は彼らだけとのことである。10:07クサイグラ尾根分岐には倒れた標柱がある。ここで念のためピッケルを出す。トレースがあるので助かる。硬雪のときトレースなしで歩くのはピッケルが必要だろう。10:19―34烏帽子岳で食事を摂りODD、MDEと更新する。MDEはトットビ沢源頭を登っているとのことである。10:52梅花皮岳を通過する。11:07−12:02梅花皮小屋に着く。気温は7℃、管理棟でラーメンを煮る。ここにいると時間を忘れそうだ。
12:26−41北股岳山頂でMDEと合流し、情報を交換する。下る途中、数人の登山者とすれ違う。13:23門内岳山頂から胎内尾根に下る廃道は完全に分からなくなった。門内小屋を過ぎ、すれ違った登山者は水場を知らないので下から水を担ぎ上げてきたとのことである。13:39胎内山通過。13:44−53扇ノ地紙で自宅にTEL、ODDやMDEと交信する。この先はやや藪となる。14:15地神山を通過し、14:26地神北峰で主稜と分かれる。
14:29−37食事。14:56丸森峰通過。長靴なので足先を痛めないようにゆっくりと下る。一瞬獣の臭いがしたので熊スプレーに手が伸びる。15:29−39石楠花尾根(仮称)で食事、暑くなってきた。15:44−49休憩。15:52夫婦清水を通過する。長靴を履いた仙台の単独行者に追いつかれる。そのまま一緒に下る。16:21、756m峰を通過し、16:45天狗平に到着する。

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