登山者情報782号

【2004年1月25日/勘倉峰/井上邦彦調査】

同行者:PWD
当初の予定ではAXL・PWDと一緒に24日白太郎山を登る予定であった。ところが23日に久しぶりに雪が激しく降ったので、延期をすることにして、24日は終日屋根の雪下ろしに汗を流した。一息ついて、明日は何処に登ろうかと考えた時に、東京の星野さんから第777号沖庭山に関わり、女川街道のことをもっと知りたいとのメールを頂いたことを思い出した。AXLは用事があるとのことだったので、さっそくPWDに電話をして、明25日お互いに朝の除雪を終えて7時に自宅を出発することにした。
PWDの知人宅に車を留めさせていただき、高度計を150mにセットして、07:25入山集落から歩き出す。この時期の山行は、除雪の邪魔にならないように車を留める場所を確保することが最大の課題である。
私の記憶を辿り上平集落からスキーを履く、暫く進んで沢を渡ろうとすると、少雪のため沢が塞がっていない。しかたなくスキーを対岸に投げ、あまり登山靴を濡らさないように腐心して浅瀬を渡る。スキーを履いて台地に上がろうとするが、急すぎて駄目。またもやスキーとストックを放り投げ腰まで埋もれながら悪戦苦闘して脱出する。2つ目の沢もやはり塞がっていない。雪の被さっている石に乗り、ストックでバランスを取りながら対岸にジャンプする。またもや垂直な雪壁を力任せにもがいて登りきる。
08:02ようやく目的の林道に出る。ここまでくれば一安心である。トップを交替しながら林道を歩く。昨日の雪は結構湿っており重く感じる。08:09林道右手に鳥居があり、左手に記念碑が建っていた。記念碑には沖庭権現の由来が記されていた。古くはここから沖庭山に登るのがメインのコースだったのだろう。
08:13-22食事、雪が降ってきたのでカッパを着る。以後はカッパを着たり脱いだりを繰り返す。08:52-58舟渡集落が眼下に広がる。標高は290m、林道歩きはなかなか高度が稼げない。
林道を横切って、僅かな水が流れている。深さは2m強。慎重にスキーで底近くまで下り、対岸にスキーを置いて跨いだ状態となる。ストックで雪壁を押してゆっくりと体重を移動し対岸に体が移った。そこで足場を作って登ろうとした瞬間、足場が崩壊し下着1枚の私は雪まみれとなった。スキーを外して放り投げ、がむしゃらに攀じ登る。私の教訓を参考に、PWDは問題なく通過した。
水に濡れたシールは凍り付き大量のボッコを発生させる。スキーの一歩一歩が、鉄玉を足に括り付けられた囚人のように重い。とうとう我慢ができず、09:33-43ボッコを丁寧に取ってワックスを塗る。その後もスキーをストックで叩いてボッコを落としながら、PWDの後をとぼとぼと進む。やはりストックは安い物が良い。伸縮する高価なストックではもったいなくて私のような荒っぽい使い方には向いていない。
長谷峰より高度が上がる。LFDと無線が繋がった。昨日は勤務だったので今日は自宅の除雪に汗を流しているとのことである。10:14-28食事を取る。
10:55標高550mで尾根上に出る。磁石と地図を出し、勘倉峰の方向をセットする。あたり一面樹氷のような杉林で、視界がない時はさぞかし苦労するだろうと思われた。ほどなく林道が二手に分かれるような場所に出る。左は沖庭神社方面であろう。杉が両側からもたれ掛り林道が分からない部分もある。できるだけ忠実に林道を辿る。杉の根元に深い穴が開いており、ウサギの足跡がその穴で消えている。ウサギが潜っているのだろう。PWDが覗いてみたが中は真っ暗で何も見えない。
見事なまでに平坦な造林地を進んでいくと、耳の先端だけが黒いウサギが一匹、目の前を走って行った。
勘倉峰は白く平坦な造林地から、ブナをまとって立ち上がった南北に細長い塊である。ようやくブナ林の登りに取り掛かる。幾つもの奇妙な突起の間を登っていくと、広い平坦地になる。在所平(第679号)を冬に歩いた時と似て、山が動いた感じがする。さらに登ると比較的細いブナ林に覆われた山稜に着いた。目の前に谷を挟んで山が平行に連なっている。地図と磁石・高度計で現在地を確認する。山頂南300mにある細長いピークと判断、北に向かう。予想通りに小さな鞍部を挟んで山が聳えている。
見事なブナの巨樹が2本、並んで天を指していた。ジグザグに登りきったピークは、良いブナ林である。この先、東に雪庇の出た主稜があり、そちらの方が高そうだ。
12:22-27勘倉峰山頂(741.9m)に立つ。高度計は760mを指していた。雪庇はまだ出始めといった感じで小さい。眺めていると舟渡地区が眼下に広がり、町中心部も雲の切れ目から望めた。
12:31-13:27先ほどの小ピークに戻り、ツエルトを被ってラーメンを煮る。今回はノンアルコールビールで乾杯。少々物足りないが、近くの山なので仕方がない。
シールを着けたまま下る。前衛ピークからはそのまま南下してから東に向きを変える。雪が乾いているのでシールでも程々に滑る。斜面は突起が乱立したブナ林で、まるで「迷いの森」か「物の怪の林」に紛れ込んだような不思議な感覚である。枯れた立ち木にキノコが着いていた。近づくと凍りついたムキタケであった。
迷いの森を下っていると突然、私のスキーが外れた。金具の先端が緩んでいる。PWDに修理用具を借りて直す。
14:05造林地のトレースに戻る。14:22-32シールを外し、ワックスを塗る。後は快適にトレースを下る。14:50登る際に落ちた所では、スキーを脱いで慎重に通過する。沢の渡渉は嫌なので林道をそのまま下り、15:30車道に出る。15:33入山集落に到着する。

画像