登山者情報796号

【2004年03月27日/光兎山/山田 亘調査】

曇り後晴
コースタイム
08:27千刈除雪終点(160)→09:24平坦部尾根合わさる(370)→10:00中束分岐(458)→10:48虚空蔵山(629.4)→11:11観音峰(621)→12:24雷峰(805)→13:12鞍部(790)→13:53〜14:34光兎山(966.3)→15:29雷峰(805)→16:16観音峰(621)→16:43虚空蔵山(629.4)→17:08中束分岐(458)→17:42登山口(200)→17:48千刈除雪終点(160)
記録
 冬の早い時期、国道290号線を新発田から下関に向かうと、森の向こうに白く輝くピークが見えはじめる。周りの山は黒くても、この三角形のピークだけは雪で輝いている。これが光兎山(こうさぎさん)である。鷲ヶ巣、二王子、エブリサシといった山から、この美しい山を見て、必ず登らなければと思っていた。
 08:27千刈除雪終点(160)からアイゼンを着け歩き出す。雪は軟らかく、アイゼンでは変だが、スノーシューをつけると遅くなるし、最後の登りには通用しないだろう。林道を10分程歩き登山口から杉林に入る。下の方は夏道が出ていたがすぐ雪になる。最初尾根を東に回り込んでいったが、杉林と明るい斜面との境で道がわからなくなり、270m位で尾根に合わさるつもりで、杉林の斜面を登り始めた。地形図で見るより斜度がある。09:08 尾根がはっきりしてきて、樹間から北に鷲ヶ巣が見えた(270)。更に登ると、杉が少なくなり薄いヤブが出てきて、赤松も加わる明るい道になった。09:23赤松の樹間から光兎、鷲ヶ巣が見える。海側の空は晴れているが、内陸の南側はまだ雲が多い。程なく09:24平坦部で尾根と合わさる(370)と斜度が緩み、薄い藪の明るい広い尾根を歩く。09:28その藪にマンサクを見つける。タムシバの花芽もあり春を感じる。前を見ると、一段高くなった尾根に赤松林が見え中束分岐とわかる。尾根の合わさるところにオレンジ布をつけながら進む。細い尾根を過ぎ420m位で尾根が合わさると赤松林の斜度の緩んだ歩きになり10:00中束分岐(458)。既にここまでで腹が減っている。先週より雪が軟らかくロスが大きいのを実感する。
 カロリーメイトを食べ歩き出すと夏道がところどころ出ており、イワウチワの葉が見える。緩やかな尾根を歩くうち、登路がまた雪に覆われてくる。標高500m前後でちょっと斜度が出ると尾根が合わさった。細いブナの中を緩やかに登ると、石灯籠が雪の中から見え10:48虚空蔵山(629.4)。樹間から光兎と雷が見える。空にはまだ雲が多い。歩き出し、左手の細長いピークに移り、いい感じのブナの中を東端に進み、南南西に続く細い尾根を緩やかに下りていく。地形図で登路がU字状にくびれているところを緩やかに登り返し11:11観音峰(621)。光兎山の上に青空が見え、正面に雷が大きく見えた。
 この先は地形図では標高差30m位の下りだが、水平距離が短いためずいぶん急に感じた。水場の標識の辺りはところどころ夏道が出ており少し歩き振り返ると、観音峰が釣鐘のようにどっしりと見えた。右手に飯豊を見ながらの登りだが、上の方の雲がなかなか取れない。標高700mの平坦部がだましピークのようになっているが、ここを過ぎると雪が増え、気持ちよく歩けた。前にピークと青空が見え、近づいていくと雪面に出ていたブナがなくなり12:24雷峰(805)に出た。気持ちよいピークだが南側の雪は信用できないので、北側の木の生え際に立った。この先の登路を見下ろす。先週より尾根が丸みを帯びている。鷲ヶ巣の後に化穴山と以東岳が白く見え、その先は光兎山への最後の登りに遮られていた。
 ピッケルを抜いてゆっくり降りていく。先週より怖くないが、尾根は痩せている。北側は木が生えてるので心理的に楽だが、南側に落ちると止まる所がない。登路に集中した張りつめた歩きが続く。姥石は先週ちょっとしか出ておらず、通過するのが怖かったが、今日は殆ど出ており回り込むように通過した。それから、先週は830mピーク付近が生クリームを絞ったようなナイフリッジになっていた。まだ怖かったが、今日は大分丸くなっていた。830mピークからの下りは、夏道も少し出て歩きやすくなっていた。13:12鞍部(790)。
 上を見ると既にだましピークになっている。最後の登りは、初めたいした斜度でないが、すぐにヤブ混じりの雪になりきつい登りになる。登るうち尾根の右側に祝瓶が覗く。あまり急なのでピッケルを刺し、残りの3本の手足をずぼずぼ突き刺し登る。900m位で斜度が緩むと前にピークが見えた。雪が北から吹き付けられた白いピークにゆっくりと近づき、ピッケルを刺し13:53〜14:34光兎山(966.3)。四方を拝み、仕事と山が長く続くよう祈った。すごい展望だ。この山を中心として中条から山北までの地形が箱庭のようだ。飯豊の雲は殆ど取れ、エブリサシが離れて見え、その奥に二王子が青く見えた。海沿いに櫛形山脈と高坪山があり、荒川の光る流れがあり、朴坂山へと続いていく。その後は海沿いに葡萄山塊が見え、日本海の向こうに粟島がぼんやり見えた。葡萄山塊の手前に小さな二つの固まりがあり、これは実家の裏山の臥牛山だった。鷲ヶ巣の後には化穴山から祝瓶へと続く朝日の連なりが完全に見え、そして東には壁のように頭巾山が控えていた。頭の芯が覚醒するような展望で、コーヒーを飲みながら静かに見ていた。
 山頂を出ると一気の下りだ。鞍部の手前で与兵衛戻しの尾根が830mピークに卍のように突き上げてくるのがよくわかる。15:29雷峰(805)を過ぎると普通の道になる。16:43虚空蔵峰(629.4)で朴坂山の向こうの海が光っている。日暮れは近い。山スキーが引き返した跡と長靴の跡がある。いずれも中束から往復したようだ。17:08中束分岐(458)。17:21下り420m付近で尾根が狭くなるところで左の尾根に入りかけ引き返している。これはログでもわかる。鷲ヶ巣が桃色に染まる。夕日は朴坂山に隠れた。薄暗い杉林を急ぎ足で下る。17:42登山口(200)。17:48千刈除雪終点(160)。ちょうど下の家の人が上がってきたので少し話し、村の酒屋で清酒「光兎山」を買って帰った。本当にいい山だった。

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