登山者情報832号

【2004年07月3-4日/ダイグラ尾根〜梶川尾根/山田亘調査】

 ダイグラ尾根は、桧山沢と大又沢の間から立ち上がり、飯豊山山頂へと突き上げる。自分は、この登路が好きだ。(今回の山行はレベルに達していませんが、事故体
験をフィードバックする趣旨で投稿しました。)
7月3日
 05:57天狗平(420)、まだ眠くブナ林に目もくれず林道を歩く。06:15温身平(450)でダイグラ尾根の下部が見える。砂防ダムで広い道は終わり、玉川沿いの細い道となる。進む内、ダイグラ尾根下部の右上に宝珠山が覗き、主稜も少し姿を見せる。06:40桧山沢吊橋(480)を渡る。ギンリョウソウを見ながら東に回り込み、尾根に合わさると姫小松の急登が始まった。標高590mで登路に岩が露出しており斜度が緩む。また急登となり右手にクサイグラ尾根が見え始める。標高610mで登路に岩が露出しており再び斜度が緩む。また急登となりシャクナゲに覆われた岩を過ぎると程なく07:19〜07:27平坦部(666)。クサイグラ尾根がよく見え、大又沢側から日が射していた。
 尾根通しに登り、07:57畳のような石から尾根を桧山沢側に外れる(840)。灌木の中を歩き08:13〜08:26尾根に戻り休む(910)。行く手に休場の峰上部が見える。少し進むと立ち枯れた木があり、08:29 926m平坦部付近(920)。西に主稜が見えるが、越後側から雲が近づく。程なく種蒔の池。アキアカネが飛んでいる。緩やかなアップダウンを繰り返し休場の峰に近づく。右手姫小松の樹間からクサイグラ尾根がよく見える。08:48〜08:55左手に大きな楢の木があり、長坂清水の標識(960)。この少し上で登路が崩れている。右手の倒木を越えると道がある。水場を過ぎると急登となる。09:11梶川尾根がよく見える。先程の雲は梶川尾根の上まで来た。以後主稜が次第に見えてくる。斜度緩み09:37米栂の平付近(1170)。昨年より下生えが茂っており、米栂が目立たない。振り返ると光兎山があり、大丸森尾根の向こうに朝日連峰が続いていた。この先、休場の峰まで急登が続く。急登を表現する言葉で「木の根、岩角に縋る登り」というのがあるが、あまり縋れるところのない、見通しのよい登りが続く。10:07休場の峰(1320.7)。青空に千本峰から宝珠山への稜線がつながり、左奥に本山が覗く。まだ遠いが落胆しない。富士を歩いてから距離感が大きくなった気がする。西の主稜に雲が迫る。いつの間にか、あの雲とは別の不気味な雲が下から来ている。
 10:11〜10:20休み場の峰先の日陰で休む(1320)。樹間から西の稜線が見え、針葉樹と岩と苔の組合せが日本庭園のようで美しい。ここから1499m峰南側までアップダウンが続く。モミジカラマツ、キバナノニガナの二重咲きなどを見ながら無心に歩く。11:20千本峰の標柱(1440)。千本峰は、南北に長い。11:28千本峰付近(1450)でアキアカネの飛ぶ中、宝珠山を見る。11:34千本峰の岩場(1430)から西の主稜を見ると大分雲が多くなっていた。次のピークは大又沢側を巻くが、その途中11:53融雪水を採り、12:00に1400m鞍部で尾根に戻った。桧山沢側を巻いて12:18〜12:261499mピーク南側鞍部で休み(1450)、歩き出すとダケカンバが登路に被さるように生えている。宝珠山への門のような気がして好きなところだ。この先、地形図では緩い登りが尾根通しに続いているように見える.実際はやや大又沢側に道がつけられており、足場は良くない。花は多く、ツマトリソウ、イワカガミ、盛りのヒメサユリなどを見ながら歩く。西の主稜の雲が、こちらに近づいてくる。ゴゼンタチバナ,アカモノ,ハクサンチドリ,白い花を見ながら歩く。13:17登路に雪がある。ハクサンコザクラを見ながら歩き13:22 1677m峰直下大又沢側の小さな雪渓の前に出た。本来の登路は稜頂に向かってついている。自分はそれを読み取れず、雪の上のトレースと下方の踏み跡を見て、中ほどを進んだ。夏道に下りる前の傾斜がやや急だったので、濡れた草付きに移った所で滑った。全くノーマークだったが、雪渓と草付との間に体がすっぽり入る位の隙間が開いており、そこに吸い込まれた。幸い融雪が進んでおらず、両肘を突っ張ったら、手に持ったピッケルが刺さって止まった。肘を突っ張ったまま体を回転させ、じわじわと這い上がり、13:36草付から下の踏み跡へ下りた(1650)。気づくと体中泥だらけになっていた。踏み跡は途中で切れており、稜頂に道形が見えたのでヤブ漕ぎで10mほど上がると斜度が緩み13:46 1677m峰付近へポンと出た(1660)。興奮が解け、少し歩き、14:10融雪水で肘の傷口を洗った(1710)。そして14:14宝珠山の雪渓の前に来た(1730)。さっきのことで自信をなくし弱気になっていると、前方から見覚えのある顔が来た。Mさんだ。軽快に降りてきて、雪渓通過のアドバイスをくれた。この雪渓は2段に分かれていた。通過後、下から見てくれていたMさんに挨拶し、手を振り、先に進んだ。長いダイグラの登路の中であそこでスライドするとは絶妙だった。
 程なく小雨が降ってきた。いつの間にかガスに入っていた。14:49〜15:03宝珠山の岩稜(1820)。本来は主稜から見下ろされるような素晴らしい所だが今日はガスの中だ。岩稜直下に小さなスペースがあった。自分はここから1780m鞍部までの下りが苦手だ。高度計が三度も1800mを割り込む。地形図の等高線の間隔は10mだが、それにあらわれない1〜9mのアップダウンが多いと思う。また地形図からは読み取れない足場の悪さもある。花はよくヒメサユリが盛りで、ニッコウキスゲも咲き始めていた。最低鞍部を過ぎ登路が崩壊したようなところを過ぎると、雨が強くなりはじめた。風の中、御前坂を登る。水平距離は長いが、疲れていても確実に歩けるところだ。1966m峰の右手を過ぎしばらく歩くと、ガスの中山頂が小高い丘のように見えた。さらに進むと17:14ガスの中、上方にダイグラ分岐の標柱が見えた。17:20〜17:23三角点(2105.1)、今日は御西に泊まるのを楽しみにしていたが、この風では本山に行くのが自然と思い、写真を一枚撮り本山に向かった。17:47本山小屋(2102)。30人は居そうだ。もう遅い時間なので皆くつろいでいる。2階に上がると北側の人が場所を作ってくれた。奥から三番目だ。ハンバーグとペンネをつまみに角のポケット瓶を飲んだ。ほろ酔い気分で周りの人と話した。今考えるとリピ−タ−が多い中「ダイグラはダイグラは」と話していた自分が恥ずかしい。酔い覚ましに水代わりのリンゴをかじった。夜半風が吹き、ガスよ飛べと思いながら寝た。22時頃トイレに起きると曇り空の中、星が一つあった。
7月4日
 04:00頃起床、水場はまだ雪の下だ。04:14一王子から蔵王方面の朝焼けを見る。駒形山以西はガスに覆われていた。04:21ご来光、04:24一王子の石組みの上に残月がある。04:55本山小屋(2102)、ここからGPSログが断続するようになった。バッテリー切れではない。ログの取得を37秒毎から60秒毎に変えてからおかしくなった。37秒毎に戻したら採れるようになったがやはり断続した。アンテナの断線か話しに聞く乾電池の瞬断かもしれない。三角点ピーク南面に雪が少し残っており、水が採れそうだった。
 05:12〜05:21三角点(2105)。駒形山以西はガスっており、ダイグラは晴れている。予定通り、梶川尾根に行くか、ダイグラに戻るか思案する。ガスの中に入るのは気が進まないが、遅くとも確実な道ということで御西へ進み出す。しかし少し降りたところで早く家族に会うため、ダイグラに戻ろうかと思う。結局05:24本山のブロッケンが天啓のような気がして御西に進んだ。05:40駒形山(2038)、水を探しながら歩く。ガスの中左手に雪が見え06:20〜06:30御西岳標柱付近で水を採る(2000)。戻ろうとすると雪の上に泥だらけの缶ビールが落ちていた。明らかに日数の経っているもので、ありがたく頂いた。鞍部に緩やかに降りていくと、ガスの中小屋が浮かび上がり06:40〜07:15御西小屋(1980)。ビールを開けハムとカルボナーラを食べると元気が出た。、外に出るとガスが晴れ大日が見えた。トイレの脇にミヤマキンバイのお花畑が広がっていた。少し進むとダイグラから本山への稜線が朝日を受けて黒々としていた。更に進み振り返ると青空の中御西小屋がのどかに見えた。天狗岳を越え緩く降りていき07:58天狗の庭(1830)。右手に朝日連峰、月山と雲に見え隠れする鳥海山が見える。08:09雪堤を歩く。この先烏帽子岳まで雪の上を歩くことが多くなった08:45御手洗の池付近(1840)手前で融雪水が採れた。池の雪は殆ど溶けシラネアオイが咲いていた。烏帽子岳の登りは長かった。09:56 2番目のピークの東を巻き10:08烏帽子岳(2017.8)。南にはダイグラから大日岳の方の烏帽子岳までの展望、行く手には二王子と北股岳の展望が広がっていた。緩いアップダウンで10:34梅花皮岳(2000)から梶川尾根が美しい。夏道を降りていき10:55〜11:25梅花皮小屋(1850)で水を採りパスタを食べた。この頃から時間を計算しながら登り、11:56〜11:59北股岳(2024.9)で家に遅くなると電話した。ここからは緩いが長い道だ。撮りたい写真を我慢して12:57門内小屋(1870)。1枚だけ正面から二の峰を撮った。緩いアップダウンで13:25扇の地紙(1889)。やっと梶川尾根に入れる。所々ヒメサユリを見ながら歩くうち、前方のガスの際にダケカンバが見え14:00梶川峰の標柱(1700)。いよいよここから強烈な下りだ。
 梶川尾根は結婚詐欺師のようで、最初緩くて、後は容赦ない。行く手にダケカンバが見え14:20三本カンバ(1540)、また段差のある強烈な下りになり14:42五郎清水分岐(1370)で6人ほどのパーテイが休んでいる。自分は足が終わりかけており、歩く姿を見られたくないので出るのを待った。少し緩く歩くと、再び段差のある下りが始まった。高度計が1200mを割り込むと斜度が緩んだ。程なく15:18滝見場(1145)で右手に滝を見る。この先は地形図を頭に思い描きながら緩い道を辿る。ずっと下る一方だったので、1021mピークの登り返しは最初楽に感じた。きつくなった頃、斜度が緩み16:08 1021mピーク(1021)。また先程のパーティが居た。ここで止まると足が震えた。歩き出し900mまで急降下。その先800m位まではやや斜度が緩みブナの中を歩いた。また急になり16:57楢の木曲(690)で飯豊山荘の屋根を見る。もう足は終わっている。姫小松の急登をピッケルを杖にして下る。一枚岩の鎖を過ぎて脂汗を流しながら降りていくと、車道が見えた。ここで身なりを整え17:41天狗平(420)。自分の行動に責任が持てるよう確かな技術を身につけようと強く思った山行だった。 

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