登山者情報920号 (投稿)

【2005年06月18-19日/日暮沢〜以東岳〜大朝日小屋〜日暮沢/山田亘調査】

6月18日
 6月は日が長い。日暮沢から朝日連峰を周回しようと出かけた。06月18日03:00起床、03:38新潟発、海沿いを行き鶴岡から内陸に入る。高速区間が少なく、06:50過ぎ日暮沢着。既に7台ほど車があり、小屋脇のホースから水が出ていた。
07:05日暮沢発(620)、少し歩き尾根に取り付く。ブナに姫子松の混じる尾根ををゆっくり登る。何かザックが軽く、高度計を忘れたのに気づく。でも今回はGPSに以東岳までポイントを落としてあるのでそのまま進む。首回りが軽く、高度計のないのもいいものだと思う。07:33斜度緩みピーク(809)。歩き出すと、カエルの声、蝉の声、鳥の声が、ゲコゲコシャワシャワと騒がしい。948mピークへの登りは見通しが良い分、急登を実感する。08:00ピーク付近(940)。
この先タムシバが増えてくる。08:42ゴロビツ清水分岐、右手から水音が聞こえる(1150)。足下にキジムシロの黄色、行く手の青空にタムシバの白を楽しみながら歩き続ける。08:56平坦部(1226)から、1359ピークが雪をまとって見える。これも悪くないが、2003年の5月17日の雪に覆われたブナ林が忘れられない。少し来るのが遅かったかと思う。
藪を交え、急な雪面を登ると、1330で斜度が緩み、デフ棒代わりの笹が2本雪面に刺してあった。南に大朝日を見て、カタクリとショウジョバカマの咲く夏道を抜け09:29 1359ピーク付近(1350)。また夏道に入ると、タムシバが2本、門のように咲いている。程なく清太岩山という所で宮城の学生4人組が休んでおり、てっきり清太岩山と思い腰を下ろした。彼らは今日本山小屋泊まりで、明日ハナヌキ峰から日暮沢に戻るとのことだ。ここは障子が岳がきれいに見えたなと振り向くと、記憶より少しずんぐり見えた。以東は遠くの空に浮かんでいるが、それほどきつそうには見えない。問題はヘッドランプで、さっきから嫌な予感がしていたが、やっぱり忘れていた。それでローソクは持ってきたのだから、お笑いだ。少し雪の上を歩き、10:09清太岩山(1464.5)で、振り返ると障子ヶ岳が記憶の中の美しい三角形で浮かんでいた。清太岩山からは少し下り、ユーフンへの登りになるが、以前来たときは雪をターッと降りれたのに、今回は夏道を地道に下るのでつまらなく感じた。10:43ユーフン山(1565)からは、小さなピークの向こうに雪を着けた竜門山の稜線が伸びやかに見えた。竜門山への登り近くまで進むと、さっきの4人組が、最後の雪を苦労しながら登っていた。自分はそのステップを利用して楽々登った。ピーク手前で北を向くと、今度は寒江山の連なりが迫力を持って見えた。雪が気持ちいいので、尾根沿いに雪を降りた。小屋前で藪になったが予想通り踏み跡があった。導水管沿いに歩き11:45竜門小屋(1570)。ここは電話が通じた。水を飲んでると、小屋から安田のハタノさんが出てきた。ハタノさんに少し遅れ11:55発。
小さなピークを二つ越え、振り返ると鮮やかな緑の山肌の向こうに大朝日がちょこんと頭を出した。南寒江山への登りで日暮沢から日帰りという人とスライド、ウェストポーチにストックという軽装で山慣れた感じだった。12:51南寒江山(1670).。この辺りから寒江山の北側までヒナウスユキソウ、ハクサンイチゲ、イワカガミなどのお花畑だ。13:03寒江山(1694.9)。この辺りは相模山に向いケルンが積まれている所が多い。その中に一つ星形というか五角形のものがある。自分はそれをクマを模したものでないかと思う。13:36北寒江山(1658)からは、以東岳がずっしり見えた。三方境の方に降りていくと左手から水音が聞こえた。相模尾根の北側の雪が解けて滝のようになっていた。雪の残る山肌に、赤白黄の花々が咲き、水音の合間に、岩ヒバリの声が響く。山にBGMがあるなら朝日には「新日本紀行」の主題がぴったりだと思う。13:48三方境(1591)から右手の雪へ降りるとハタノさんが上がってきた。狐穴小屋を勧められたが、ヘッドランプなしで一人の小屋は怖いし、弓を引き絞るイメージで一旦北まで退いてから南下したくて、以東に行くと答えた。雪渓を降り14:00〜14:13狐穴小屋(1500)。雪渓末端で水を2L採り、以東で楽できるようにした。
狐穴から先は景観に引かれ、目標が地形図より近く見える感覚が続いた。こういうときは調子のいいときだ。でも15:08中先峰(1523)を過ぎた頃から遅くなり、15:44 1514ピークの東側(1510)で休んでしまった。この先の松虫岩までの登りが1日目で一番堪えたが、残雪と緑の山肌に励まされ歩いていると、狐穴に泊まるという人とスライドした。その後振返ると、寒江山の向こうに再び大朝日の先っちょがちょこんと頭を出し、再びやる気になった。16:31松虫岩(1650)で、斜度が少し緩み、楽になった。騙しピークを地道に越えて16:55以東岳(1771)。居合わせた若夫婦に挨拶し三角点に移動した。ここのいいところは、登りがきつい分、ほぼ山頂まで突き上げるところで、朝日が十字架のように見えるあの展望に、スゲエスゲエを連発しながら感嘆していた。何より嬉しかったのは化穴山がクリア−に見えたことで、雪は大分少なくなっていたが、地形図を掌に載せているようで、あそこがああだったとか手に取るようにわかった。17:30頃以東小屋(1720)。清掃協力費1500円は細かいのがなく、後日払いますと書いた。一階の先ほどの夫婦の隣に場所を作った。この人達は山で知り合い、5月に結婚したそうで、羨ましい限りだ。そのうち隣の単独行の人が小屋に入ってきた瞬間「あっ」と言って、自分も「あっ」と言った。矢島の管さんだった。それで、さっきハタノさんが登りで秋田の単独行に抜かれたと言ったのもぴんと来た。日暮沢から入ったかと聞いたらやっぱりそうで、なるほど管さんならねと納得した。別に約束しなくても山で良く会う人は居るものだ。この人とは鳥海で2回会い、5月28日の梅花皮小屋でも2階から1階に移ってもらった因縁がある。お隣の山形の夫婦を交え山話に花が咲いた。2階は最初3人だったが18:00頃二人組と単独が入り計10名だった。外に出て、化穴山の方に夕日が沈むのを見てから、チャーシューみそラーメンを作った。金沢のオガの油揚げの味噌漬けは酒のつまみにぴったりだ。焼いて管さんと夫婦に勧めたら好評だった。管さんからはキュウリの浅漬けを貰った。山ではこういうのがおいしい。そのうち、明日どうするのかという話になった。夫婦は泡滝ダムに戻ると言った。自分は、「竜門から降りるのも雪少なくてつまんないよね」、と返し、「やっぱり大朝日だよね。だけど俺は大朝日の上り下りの25分は割愛してもいいと思ってるんだ」と答えた。それで管さんも全く同じことを考えているとわかった。「全く同じ発想だよね。山で良く会うわけだ」と笑いながら酒を飲み寝た。欠け始めた月が南の窓から照らす明るい夜だったが、そのうち月も雲に隠れた。ヘッドランプは、管さんから貸してもらえラッキーだった。
06月19日
 03:30起床。遠慮がちに片づけをする。外はガスだ。「やる気がなくなるよね」と言い合い飯を作る。今朝もチャーシューみそラーメンだ。これは朝からこってりだが、腹持ちが良く、大朝日小屋までチョコレート一かけで歩けた。歩くのが遅いので先に出るといい、04:24以東小屋発(1720)。歩き出すと足の筋肉がこわばった感じで、これは竜門までかなと思った。04:32以東岳(1771)で、ガスの薄くなった大鳥池の方をちらりと見てガスの中に入った。少し風があり手袋を着けた。04:50松虫岩(1650)を過ぎるとガスの中から鈴の音が聞こえ、管さんが来た。自分は「疲れが残っているみたいで、天気もこんなだし9割方竜門から降りようと思う。あなた早いから先に行って下さい」と言った。それで後ろから管さんの下りを見た。歩くスピードは普通なのだが、登路の選択が自分とはまるで違い、直線的で簡潔な感じだった。それであっという間に差が開いた。05:05 1514ピーク脇(1510)、05:33中先峰(1523)を過ぎ、鞍部から登り返していく頃からガスが薄れていった。06:15狐穴小屋に着くと管さんが待っていた(1500)。お礼を言い、疲れ残っているみたいなのでやはり竜門から降りるつもりだというと、自分も多分そうするでしょうと言った。
管さんを見送り、水を汲みトイレを借り06:29狐穴小屋発(1500)。雪渓を登り大井沢側から尾根に合わさり06:46三方境(1591)。北寒江山へ登り返す頃から足もほぐれ、花を撮りながらゆっくり歩いた。右手に鷲が巣が見える。左から後ろ岳、中岳、前の岳の順だ。新潟から見るのと逆で遠くへ来たのを実感する。天気も回復し、07:02北寒江山(1658)、07:35寒江山(07:35)、07:44南寒江山(1670)と進む頃には、09:00まで竜門山を通過できたら先に進もうと思うようになった。竜門小屋の登りではシラネアオイが生き生きとしていた。08:20頃竜門小屋(1570)でトイレを借り08:32発、夏道を暑苦しく登り、日暮沢から日帰り周回という二人とスライドした。08:54竜門山付近(1680)、ギリギリセーフと言うことで西朝日へと歩き出す。この先はGPSにポイントを落としておらず、管さんからも古寺山から分岐が多く注意と聞いていた。それで、左手に小朝日からハナヌキへの稜線が見えたとき、地形を観察して頭にたたき込んだ。西朝日までは、アップダウンが少なく歩きやすかった。途中竜門小屋に泊まった人に聞いたら、竜門小屋も10人程の泊まりだったそうだ。この先は振り返っても前を向いても、いい稜線が続き気持ちよく歩けた。ただ体は疲れ始め、腰を下ろしチョコレートを食べ、立ち上がると立ち眩みがした。10:05西朝日岳(1810)で、昨日松虫岩の下でスライドした人から、ハナヌキへの道は、雪がなければ分岐標柱が出ていると聞き一安心。この先は待望の雪が出てきて、鞍部まで涼しく下りれた。登りになると雪堤が後退して夏道を歩いた。中岳への登りはなかなか終わらず、きつかったが、11:07中岳手前で良質の融雪水が採れ、助かった(1780)。ここで昨日遅く以東小屋に着いた人が追いついてきた。この後の下りでログが乱れた。雨蓋をひっくり返したかもしれないが、何もない所なので不思議だ。大朝日小屋への登りはたいしたことないのだが、長歩きの後で疲れた。11:41大朝日小屋(1770)。まだ余力はあるが、12:00には降り始めたいし、さっき立ち眩みがしたので、往復の25分を休憩に充てることにした。それで小屋に入ったら、ハエがぶんぶん飛んでいたので、飛び出て外の日陰で休むことにした。ここはよっぽど快適で、残り飯にタマネギとシラスを入れ雑炊を作ったら体が生き返るようにうまかった。それで、12:03歩き出したときには、今日初めて歩いたようにすっきりした気分だった。銀玉水への下りには、雪が残っており喜んだ。しかし疲れていたのか、へっぴり腰で下った。12:28銀玉水(1630)では、コンクリートで固められたパイプから水が出ていた。ここで水を補給でき助かった。12:34銀玉水を出て崩壊地を過ぎると、熊越への下りが始まった。その途中で大朝日をスケッチしている人を見た。ダケカンバが増えていき13:08熊越の鞍部(1470)。登り返すとかなりきつい。でも程なく13:14トラバース分岐(1500)があり助かった。小さな雪の筋が2本、そして中くらいの急な雪渓のトラバースが一つあった。13:23最初の雪の筋(1520)、13:32中くらいのトラバース(1540)、ここは遠目でもわかったようにステップが切られていた。途中振り返ると大朝日からの主稜の眺めが良かった。雪を歩き、13:44尾根に乗ると正面に障子が岳が青く浮かんでいた(1540)。
ここからハナヌキ峰分岐までが最も長く疲れた。さっき大朝日を出るときは身体が回復した気がしていたが、古寺山の登り返しもきつく感じた。ただところどころ雪が残っており、涼しくて助かった。14:09〜14:15古寺山(1500.7)、ここからの小朝日から続く稜線は素晴らしかった。先ほどのスケッチおじさんと少し話した。ここからの下りは長く、なかなか地形が読めなかった。1460m付近で尾根が別れる所に雪が残っており、デフ棒が立ててあり右に入った。体力が残り少ないのでルートミスはできなかった。ここが迷い安いポイントだった。14:40三沢清水(1360)はホースから水が出ていなかった。古寺分岐はまだか、もう通り過ぎたかと思いながらゆっくり下った。すると15:04ブナ林の中に古寺への分岐標柱が立っていた(1130)。これで無事終わったと思い、しばらく休んだ。ハナヌキ峰への登り返しは嫌らしいと聞いていたが緩やかだった。平坦な道がずっと続き前方に白いものが見えた。雪かと思ったら雪圧で横になったタムシバが密生しているのだった。ホオノキの大きな葉が疲れた体を癒してくれた。長いピークから一旦下って、斜度が緩み、850m位から姫子松の乾性の尾根になると、急なずんどこ下りになった。姫子松の間から以東岳のような山体が見え、沢音が近づき16:17尾根取り付き(700)。沢を3本数え、16:35林道終点(660)この先で、ついに電池が切れログも切れた。地形図を読みながら16:55日暮沢小屋(620)。身体が汗くささを通り越して乳臭くなっていたので、大井沢で風呂に入り、長井から新潟へ戻った。     

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