登山者情報947号 (投稿)

【2005年08月20日/ダイグラ尾根/山田亘調査】

記録
 日が短くなる前に、本山を往復しようと思った。03:00起床、03:32新潟発、満月の磐越道を行く。05:44御沢野営場(540)、GPSの現在地表示が遅い。杉林を抜け05:53御沢小屋跡(570)。GPSを出すと、「poor gps coverage」。どうもおかしい。自分のGPS「V+」は、堅実がウリで、上空条件が悪くとも、捕捉不能になることは滅多にない。よく見ると外部アンテナとの接合部が破損し、芯線が出ている。思えば剱の下りから変だった。うかつだったが、ある程度採れるので、記録を続けた。
 杉林を抜けブナの斜面を歩く。まずまずの斜度だが、梶川尾根ほどでない。ただ登路が崩壊している箇所が多い。これは赤土の軟らかい登路に加え、よく歩かれるためだろう。今日は荷が軽いのであまり気にならない。06:06東からの尾根が合わさり標高650m。その少し先で、靴の半分位の長さのナメクジを見る。ブナの向こうに杉林が見え06:27下十五里(820)。06:44また杉が見え中十五里(940)。5人パーテイが休んでいる。07:05上十五里の杉は2本。うち1本は枯れている(1080)。下中上十五里だけ杉があるのは、建物建替に利用したのだと思う。
 下十五里と中十五里は尾根分岐上にある。上十五里は尾根分岐ではないが、刈払いすれば、笹平から東南東に派生する尾根が見えそうだ。いずれも、正規の道以外から入ろうとする人を監視したのかもしれない。そんなことを考えながら、掘れた赤土を歩く。
 けれども、と思う。それは考え過ぎで、尾根の合わさる所は平坦部が出来やすいので、掛小屋候補地が、自然に尾根の合わさる所になっただけかもしれない。いずれにせよ、会津蓮華寺が滝不動をつぶした後、登路をどうやって押さえたか(集金したか)、そのやり方に興味がある。コクワガタの雌がひっくり返っていたのを直したりしながら、そんなことを考える。左手に松平峠から疣岩山へ続く尾根の緑が濃い。あちらも随分ご無沙汰だと思う。
 07:32笹平(1230)は笹が生えているだけの場所だが、やはり南東に尾根が派生している。この先で緑っぽい格子柄の蛇と目が合う。「うわっ」というと、鎌首をもたげ白い腹を見せ消えた。マムシと思ったが、アオダイショウの小ヘビのようだ。07:47〜07:52横峰小屋跡(1320)、トタン屋根などが積まれている。程なく07:56小白布沢からの尾根が合わさる(1320)。ちょうど右手からパーティが上がってきた。ここで、「お早う下向」の単独行とスライド。しばらく平坦に歩き、08:07水場分岐から左手のバイパス道に入る(1360)。地形図で見ると等高線が詰んでいるが、幅のある道で歩きやすい。行く手に人声が聞こえ08:16〜08:26峰秀水(1390)。腰を下ろし、今日は、本山小屋までという地元の単独行と少し話す。更に上から人の気配がするので、先に水を汲む。冷たくて流量もありおいしい。熱中症対策でポカリスウェットを混ぜる。更にタオルを濡らし頭に巻く。シンプルだが快適だ。ザックに戻ると若いカップルが居た。飯豊で若い人を見ると嬉しい。
 08:35剣ヶ峰分岐で地蔵岳から来る道に合わさり、三国岳と正対する(1440)。ここからだ、と思う。七森東面のスラブを見ながら緩やかに歩く。1410鞍部付近で余裕ありそうな人とスライド。現代は「御山晴天!」とは言わない。「晴れてこの先登り暑そうで大変だな」と言われ、「暑くて、ばてるんじゃないかと心配です。」と合わせる。剣が峰の岩稜の前で、会津盆地の山波を見ながら立ち休み。登りににかかると2〜3カ所鎖があるが、剱の別山尾根のように肝を冷やす所はない。ほとんどダブルストックで歩き、09:06剣ヶ峰の標柱(1550)、09:19水場分岐(1590)岩に「水→」と書いてある。水場の沢は遠目には乾いており、水音も聞こえなかった。09:27三国小屋(1644)から本山へのピークの重なりを見る。今日は北西から雲が湧き、種蒔山の先は隠れている。三国岳からの下りは、ほんの少し足場が悪い。最初の突起の鎖場で夫婦連れとスライド。あとは七森の手前で少し足場が悪い。10:07七森標柱(1700)。緩やかに歩き種蒔山の手前で西にカーブし、切合を見下ろす。晴れていれば本山まで見えるのだが、今日は草履塚の先からガスだ。10:30種蒔山の標柱(1770)。えぐれた赤土の登山道を降りて10:48〜10:53切合小屋(1740)。
 年配の人が薪を割るのを見ながら、おにぎりを食べる。その人に年配の婦人が二人「飯豊に熊はいますか」と聞く。「姥御前と御秘所の辺りに出る。あとは本山小屋に大熊がいる。怒るとおっかねえぞ〜」と答えている。水を汲んでいると、別な小屋番さんが、頭に巻いた梅花皮荘のタオルに目を留め話しかけてきた。この小屋は評判どうかなと思っていたが、好きになり、今度泊まろうと思った。
 草履塚の登りはじめで先ほどの婦人達をパス。沢筋を歩き上の方で尾根に乗り、11:21草履塚(1908)。大日岳は沸き立つ雲に飲み込まれ、稜線は駒形山位しか見えない。ここで本山泊まりという単独行と一緒になる。奥の方のピークを巻くとき、一王子が見え、やる気になる。姥御前の降りはじめで若い男女6人パーテイとスライド。行く手は御秘所の上からガスで覆われ、山気に満ちている。11:33姥御前(1820)に手を合わせ、11:36御秘所標柱(1830)。岩場を通過し、緩く歩く。11:51〜12:00御前坂標柱(1910)。最後の登りに備え、おにぎりを2個食べる。御前坂は、がれた登路で、下部はおおむね西側を歩く。振り向くと草履塚の西にガスが迫っている。斜度が緩んだ所から、東側に移り、12:24一王子の右に出た(2070)。斜度が緩んだ中、水場への分岐を過ぎ、本山小屋に向かう。息も乱れず、疲れも感じない。飯豊が合うのだろうか。
 12:31〜12:45本山(2102)。鐘を叩いたら想像以上に大きな音で反省。神社に入りお札を買う。神主さんの側に管理人さんがいた。お祈りをして、小屋前でパンを食べながら人々の話を聞く。下の雲から遠雷が聞こえる。剣ヶ峰で雷だけは、避けたい。そろそろ出ようかと思った頃「この先にイイデリンドウがある」と聞き、ピクッとなる。もう終わったかと思っていた。一輪だけでも見たいので、先に進む。一瞬ガスが切れ三角点ピークが見える。きょろきょろしながら歩くが、コゴメグサしかない。先程の人の言葉を疑いながら、緩く降りていくと、草むらの端にイイデリンドウがあった。まともに見るのは5年ぶり。写真を撮り顔を上げると三角点も近い。進もうかと思ったが、遠雷が気になり、12:52引き返した(2070)。13:00本山(2102)、水場分岐で先ほどのグループに礼を言い、その先で切合の女性二人とスライド。ダブルストックを伸ばして、一王子から下り始め、すぐに若い夫婦連れとスライド。旦那さんが重荷で先行し、奥さんがサブザック。いい感じだ。13:21御前坂(1910)、ここにも石組み遺構がある。タカネマツムシソウを見ながら緩やかに下り、御秘所の岩場を過ぎ13:39姥御前(1820)。登り返して13:55草履塚(1908)。時折水の流れる沢筋を下り14:15〜14:23切合小屋(1740)。今朝中十五里でパスした5人パーテイが居た。
 談笑する人々を尻目に、歩き出し14:40種蒔山(1770)。先程から遠雷が聞こえていたが、七森の手前から弱雨が降り始めた。14:57七森(1700)。今日の日没は18:20頃。三国小屋には15:20頃着きたかったが、15:30三国小屋(1644)。軒先で遠雷を聞きながら行程の検証をする。「なんとかなりそうだ」と呟いていると、ガチャリとドアが開いて管理人さんが出てきた。そして「のんびりしてられないよ。雷が近づいていて、雨で岩も段々滑りやすくなる。この先2時間半から3時間かかるので早く行きなさい」と言われた。もっともだ、食いかけのカロリーメイトをザックに入れ、梨もGPSの近くに突っ込み、雨具の上を羽織り歩き出した。このとき梨が、破損した接合部を直撃したらしく、剣ヶ峰の先からlogが乱れた。剣ヶ峰の下りも結構ダブルストックで歩けた。15:48剣ヶ峰標柱(1550)。先ほどの梨をサイドポケットに移す。もう少し岩場が続き、土の登路に降りた。自分としては、剣ヶ峰で雷に遭遇するのを最も怖れていたので、ほっとした。この辺りで登りの単独行者とスライド。今日最後の人だった。16:17剣ヶ峰分岐でポイントを打とうとしたら「poor gps coverage」(1440)。接合部を伸ばし歩き始めた。16:24峰秀水(1390)を過ぎた辺りで、左足大腿四頭筋下部に軽い違和感。ダブルストックで荷重を分散して歩き続ける。雨が止んだので、このトラバースの途中で合羽を脱いだ。16:34水場分岐(1360)、16:43小白布沢分岐(1320)、16:44〜16:48横峰小屋跡(1320)で梨とカロリーメイトを食べた。
 あとは800m下るだけ。「うおう」と気合いを入れて下り始めた。さっきから左膝が浮くような感じがしてたが、下り始めると楽になった。16:55笹平(1230)位からlogが東西に乱れ始めた。ここから下のlogはかなり間引きしている。17:10上十五里(1080)、17:21中十五里(940)、17:33下十五里(820)は遠くから杉林が見えるのを目印に下った。後は水を飲んでポイントを打って、その繰り返しだ。下十五里の先は、標高差250m。標高650mで尾根が分かれ次第に斜度が緩んでくる。御沢の瀬音が聞こえ、下の方にこんもりと杉林が見える。17:57御沢小屋跡(570)、無事降りれて嬉しいと大杉に手を合わせる。「poor gps coverage」が出たので写真で時間記録をする。思いの外明るい杉林を抜け18:04御沢野営場(540)。飯豊の湯に寄り、下道で新潟に戻った。その夜は足が火照りなかなか寝れなかった。翌日に月曜の休みを加え海辺のホテルで家族と過ごした。海を見ながら飯豊の記録をアップするのは楽しかった。

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