登山者情報967号 (投稿)

【2005年11月06日/徳網山/蒲生章調査】

【メンバー】2名(妻)
【山行形態】冬山装備、日帰り
【山域】朝日連峰周辺
【山名と標高】 徳網山(とくあみやま)787.5m
【天候】曇り
【温泉】西置賜郡小国町「白い森交流センターりふれ」500円
【行程と参考コースタイム】
徳網山登山口9:50〜636mピーク11:20〜徳網山(昼食)12:00-30〜徳網山登山口14:30
  
【概要】
 徳網山は小国町の北西部に位置し、北小国村の五味沢地区のさらに奥の集落である、樋倉地区のすぐ裏手に聳えている山である。この徳網山とはちょうど荒川をはさんで白太郎山や祝瓶山が対峙しており、以前から「知る人ぞ知る眺望の素晴らしい山」として地元の住民には登られていた山のようであった。私は井上邦彦氏のホームページ「飯豊・朝日連峰の登山者情報」で今年の9月19日にこの徳網山への登山道が切り開かれたのを知り、ついで10月29日の山形新聞によって、つい先日の10月7日に地元住民の協力によって登山道が新たに整備されたという記事を読んだ。整備された月日に違いはあるものの、山頂からの展望がかなりよいというので、これは近いうちに登ってみなければと考えていた山であった。登山口の標高は300m。徳網山の標高は787.5mとたいしたことはないのだが、登りの高度差が500m近くあって、登りは2時間近くみなければならないようであった。新聞記事によると傘を差しながらでも登山できる道幅を確保しているという記載があって、これならばとカミさんも誘って出かけることにした。
 登山口は宿泊施設でもある「白い森交流センターりふれ」から少し進み、荒川に架かる橋を渡ると樋倉地区である。その樋倉集落手前の左手に登山口を示す標識が立っていた。ここから8kmほど先には小国側から祝瓶山に登るための大石橋登山口がある。県道から細道にわずかに入ると駐車スペースがあったがそれ程の広さはない。井上さんの記録によれば、ここは昔の採石跡地とのことでせいぜい5、6台程度の広さしかなかった。駐車中の車は2台だけで、うち新潟からの3人組が準備を済ませて、まもなく先に登っていった。
 天気予報では今日は快晴のはずだったが、早朝からの濃霧は一向に晴れる兆しはなく、薄雲が上空を一面覆っている。それでも薄日は差しているので、山頂での好天を期待しながら山道に入った。薄暗い杉林を抜けるとまもなく明るいナラ林となる。いかにもキノコなどが豊富に採れそうな感じで、昔から地元住民にとっては山菜を採ったりする生活圏の山のようであった。最初の急坂を20分ほど登ると目的の徳網山が沢をはさんで正面に見えるようになる。しかし、尾根道は左から大きく迂回するように続いていて、山頂はなかなか近づかない。周囲もナラからブナ林となり、カエデなどの広葉樹も多く目立った。この付近は紅葉が真っ盛りであり、特にモミジが多いためか、鮮やかな赤色がとくに美しさを際だたせている。これで陽射しさえあれば絢爛な登山道になるのは間違いなさそうであった。
 山道は途中刈り払いされたばかりの区間が目立ったが、それでも半分以上は昔からの登山道があるような感じがした。確かに傘も差しながら歩けそうな山道ともいえそうだったが、それはちょっと大袈裟で一般の登山道とそれほど違わない。ただ今日のカミさんは、先日捻挫した足の快復がまだ十分ではなく、途中で何回も休憩をとり、ゆっくりと時間をかけながら登った。カミさんは傘を差して登れる山と聞き、遊歩道のような道を想定していたらしく、これでは誇大広告ではないかとしきりにぼやく。それでも途中の636mピークを超えると比較的なだらかな尾根道となった。左側が急峻なヤセ尾根となっているが、潅木が多いので特に不安は感じられない。黄色に染まったブナ林の間からは右手奥に大朝日岳から西朝日の稜線が見えていた。ここでは取り残しのクリタケやコガネダケのキノコを少しだけ採取しながら道中を楽しんだ。最後は小さな岩場と五葉松の混じる100m足らずの急坂を一気に登って徳網山の山頂に到着した。
 山頂には三角点と山頂を示す新しい標柱が立っていた。登りはじめてから2時間10分。今日のカミさんの足の状態からすれば早い方であった。ちょうど昼時間で、山頂では2パーティ、7人ほどが標柱を囲んで休憩中であった。山頂からの展望は新聞記事に違わず、祝瓶山から以東岳までの稜線が全て見渡せるのでびっくりするほどだ。西には下越の名山、鷲が巣山や光兎山なども至近距離に聳えており、まさに360度の大展望である。反対側には冠雪した飯豊連峰が一望のもとで、飯豊本山から北端の杁差岳まで連なる各々のピークも全て指示できるほどであった。こうしてみると山の魅力というものは、単に標高だけでは判断できないものだなとあらためて考えさせられる。飯豊には3日前に登ったばかりだったが、今日は薄曇りのためか、さらに積雪が増したようにも見えて、冬がもう目前に迫っているような、ひっそりとした寂寥感が漂っていた。

山頂はそれほど広くはなく、私達は端の方に陣取って昼食をとることにした。残念ながら天候だけは予想した快晴にはほど遠かったものの、高曇りの状態ながら予想以上の眺望を楽しめたのだから文句はいえない。風だけは冷たいので防寒着に身を固め、熱い味噌汁をすすると冷えた体が内部から温まった。心配していたカミさんの足もどうにか大丈夫だったらしく一安心しながらの昼食であった。早めに登っていた女性の4人組が山頂から去ると、私達も後を追うように後かたづけを始める。新潟からの3人組は大きな鍋を担ぎ上げてきており、山頂での宴会はまだまだ終わる気配はなさそうである。
 山頂を後にするとカミさんの足が再び痛みだしたのか、登りよりも時間をかけながら慎重に下っている。天候は確実に下り坂に向かい始めているらしく、上空の雲は午前中よりもさらに厚みを増しているようであった。見上げるとまもなく雨が降り出しそうな気配だったが、稜線から離れるに従って冷たい風も徐々におだやかになっていった。しかし、体は冷え切っており、下山後は一刻も早く「りふれ」のお湯に浸りたい気分であった。

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