登山者情報968号

【2005年11月13日/権内尾根〜杁差岳/井上邦彦調査】

メンバー:JF7HZU・JO7MNH
 雨の音で目を覚ます。車に乗り込み集合場所へ。大石ダムに向かう途中、雨がふっているにも関わらず星が見えた。
 東俣第1橋の袂で水を汲もうと川に下ると、左足先に冷たい感触、その時はさほど気にしなかったが、この後このことが泣きを齎すことになる。
 05:52ヘッドランプを着けて橋を渡り、河岸段丘のブナ林に上がると、ライトなしでも歩けるようになった。人登りして松尾根を進む。行く手を白いロープが夫妻である所から右の崖をへつるように下る。小さな岩を登ると、目の前に目指すカモイ峰までの尾根が望めた。光量不足で写真にならない。ブナ林を斜降するが、ついつい倒木に目が行く。藪の中に道ができており、大勢の茸採りが入ったようだ。
  ブナ林を抜けると湿地になる。石を利用して足が濡れないように歩くのだが、長靴の強みで平気で歩いていると、左足先にまた冷たいものが触れた。よく見ると、長靴の先に大きな亀裂が入っており、水が中に入ってくるのである。ここでようやく昨年長靴に穴を開けた記憶が蘇ってきた。廃棄をしていなかったのでそのまま履いてきてしまったのである。もう戻ることはできない、このまま進むことにした。
 06:18東俣第2橋を渡り、ブナ林を登る。両側の倒木に目を凝らすが、ナメコの気配すらない。06:24-30尾根に出た時点で茸は諦めた。服を脱いで急な尾根をたんたんと登る。「あった!」突然の声にMNHが飛び上がる。ナラの根元にクリタケが株をなしていた。ナイロン袋に入れたクリタケを、始めて天然の茸を見るというMNHのザックに結びつける。これで小屋でのラーメンが楽しみになった。
 07:03雨量計の土台を通過する。対岸に大境山と枯松山が連なっている。時折急になるが、快適な尾根道に高度を稼ぐ。
 07:29カモス頭の標識はブナの根元に置かれていた。この先で主尾根が合流する。付近はブナ林である。07:30-40ブナの倒木に腰を下ろして食事をとる。ふと見ると僅かだがヒラタケが出ている。これもラーメンの具にすることとした。
 楓ノ峰を知らずに通り過ぎると、目の前に権内峰が聳え立つ。本日一番の急な岩場にはロープも設置されている。08:08権内峰山頂の標識は藪の中に埋没していた。目の前には白く輝く峰が覆いかぶさる。よく見ると、途中の峰から右に伸びた尾根に気象観測所が確認できる。このピークが千本峰である。
 気象観測所に行く道を右に分けて08:38-48千本峰山頂に出る。ここで今冬始めての雪を踏む。雪は硬く、一度積もって溶けたものである。靴を載せると、若干沈む。一歩一歩穴を開けるようして登るので、ペースがやや落ちる。古い雪に薄っすらと新しい雪が乗り、小型の獣の足跡が沢山ついていた。雪がだんだん深くなってきたので09:19-22MNHがスパッツを履く。HZUは靴下とズボンの上にインナーを履く。通気性は全くないが、保温性はある。
 途中から潅木が一斉に霧氷に覆われる。一歩毎に雪面が割れるので疲れる。MNHと先頭を交替すると、体重差によるものか、殆ど割れずに雪面を歩いている。その後を行くHZUも雪面を騙し騙し進む。風が出てきたので潅木に着いた氷が頬を直撃する。帽子の上からタオルを頬被りする。
 右手から大きな尾根を合わせ、09:54-10:08ようやく前杁差岳に到着する。霧氷に覆われたナナカマドは薄紅色に染まる。ハイイヌツゲの赤い実はまるでクリスマスツリーのようである。ここで輪カンジキを履き、HZUはピッケル、MNHはダブルストックとする。
 狭い尾根となり、足元の雪が動いて左斜面に落ちたら助からないだろう。慎重に下る。山頂部は雲に覆われ、次第に色の失われた世界に入っていく。
 輪カンジキの爪を効かせて、10:37長者平に到着する。あいにくと主稜線は雲に覆われていたが、大石山まで確認できた。風が強くなりバランスを取るのが難しい。よろけながら、10:48-51杁差岳山頂に到着する。ピッケルにカメラを固定して記念写真を撮影するが、風のためなかなかうまく行かない。なんとか撮影して眼下の小屋に下る。振り返ると、MNHが風に飛ばされて転倒している。助けに行かずにカメラで撮影(薄情なHZU)です。それに反し途中でHZUがザックから落とした無線機を持って、MNHは追いかけてきた。
 10:55-12:45杁差小屋に到着。小屋の入口は凍り付いておらず、すぐに開いた。早速2階にあがり、雪を溶かして茸ラーメンを作る。小屋内の気温0℃、震えながらビールで乾杯し、ラーメンを啜り焼酎のお湯割で身体を温める。トイレも使用できたが、風が強く往復が大変であった。
 いつの間にか小屋で2時間近く過ごし、大熊尾根を下る気力をなくす。カッパの上下を着込み、冬用の手袋をし、2人ともピッケルを出し完全装備で小屋から出発。その途端にデジカメがバッテリー交換の表示、小屋に戻って乾電池を入れ直し、再度出発する。
 長者平から下り前杁差岳近くになると、私達のものではない複数の足跡が出てきた。せっかく此処まで登って下山したのだろうか。足跡を観察すると大きいものと小さなものがある。男女混成パーティか子供同伴だろう。また、先の尖っていない杖の跡がある。夏山専用のゴム製杖だろう。装備不足のためここから先は危険と判断したのかもしれない。
 13:18前杁差岳を通過する。雪が湿り気を帯びている。やがて小雨が降ってきた。13:42千本峰が見えた時点で輪カンジキを外す。
 13:56-14:04千本峰で休憩を取る。後は夏道であるが、天候が下っている。14:27権内峰を過ぎた所でHZUの帽子が風に飛ばされた。幸い潅木に引っかかったので、無事回収。14:51カモス頭から右折してどんどん尾根を下る。尾根からブナ林で入る所で登山者2名に追いつく。5名で登ったが前杁差岳を過ぎた地点で強風のため下山したとのこと。15:32第2橋を渡り、3名の女性を追い越し15:57東俣第1橋に到着した。

今回のコース
クリタケ 尾根を登る
ハナビラニカワタケ 急な尾根だが良く手入れされている
カモス頭で主尾根に合流 権内峰へ岩場を登る
権内峰にて
大境山 権内峰の標識
狭い尾根を進む 一歩一歩慎重に
枯松山 大境峰を背景に
久しぶりの山行と言いながら順調な登り 千本峰にてMNH
千本峰から前杁差岳を仰ぐ 雪が出てきた
森林限界を抜ける 雪は硬く締まっている
霧氷原となる ナナカマド
前杁差岳山頂で輪カンジキを履く ナナママドの霧氷は艶めかしい
痩せ尾根の登りが続く 前杁差岳を振り返る
霧氷 ハイイヌツゲのクリマスツリー
ハイイヌツゲ 大熊尾根
背景は前杁差岳
長者平にて、風が強いので帽子ごと頬被り
長者平から杁差岳を目指す
杁差岳 風が強くよろめきながら歩く
前杁差岳
杁差岳山頂にて
山頂から小屋に下る 強風に飛ばされて転倒
何とか立ち上がる ようやく杁差小屋に到着
下山途中の雪は湿っていた HZUの割れた靴先
ムシカリの芽
バランスを取って下る 白と黒の幻想的なブナ
急坂を下る 次第に暗くなってくる
東俣第2橋より 東俣第2橋を渡る
三吉ノ峰手前のヘツリ 途中で追い抜いたパーティ
ようやくブナ林に着く 白く光っているのは雨
東俣川
新潟の山際さん達と一緒に