登山者情報971号

【2005年11月26日/町境:出ヶ峰〜622m峰/井上邦彦調査】

 前日の天気予報では雨、行くか行かないか、暫し寝床でうつらうつらし、ゆっくりと起床し、適当に山道具をザックに放り込んで自宅を出る。今回の予定は、885号で歩いた出ヶ峰から町境を南進することである。町境は尾根にあるのが普通なのだが、今回の場所は直線で沢を横切っている。この時期を逃すと歩けないかもしれない。
 車で白子沢から高松に入り、森残川を遡る。右手に林道を分ける。右手の林道には「林道大平峠線」の看板が設置されていた。分岐の先で路肩に車を止め、07:21ザックを背負って歩き始める。07:30森残川を越えて出ヶ峰から伸びる尾根に登っている林道を分ける。地形図によると長畑集落跡には砂防ダムの記号がある。林道を歩いていると砂防ダムを見落とさないとも限らないと注意して歩く。林道から左へ下る車道があるので、てっきり砂防ダム工事用の道路ではないかと思い、左の道を選んだ。
 森残川に人が通れる幅の鉄骨橋が架かっており、上流に砂防ダムが見えたので、ここが長畑集落跡だろうと見当をつけた。右岸には水田跡が認められ、石を組んだ住居跡も確認できた。イリミズ沢の右岸に広い歩道を見つけたので辿ってみると、07:56枝沢に集水施設があった。ここから飲用水を引いていたのだろう。
 イリミズ沢本流に下りて、沢筋を登ることとしたが、僅かだが長靴の中に水が入ってくる。この長靴も穴が開いているのだろう。途中から左岸に取り付いた。スパイクのない長靴なので登りにくい。
 08:09真南に上がっている尾根に出ると踏み跡があった。一枝残っている紅葉が輝いていた。カラマツ林となる。カラマツの葉が雪の上に散乱して作る模様が面白い。ブナの葉は硬く、タムシバ等の半透明な葉との違いが楽しい。
 標高500mから尾根は東に折れる。倒木にムキタケが出ていたが、殆どの倒木は雪に埋もれ、他に茸を見かけることはなかった。カモシカの足跡がやたらに多い。大きな窪地があったので南側の尾根に移った。885号で下った尾根と合流すると、宇津峠方面の視界が大きく開けた。
 09:01出ヶ峰山頂で食事を取る。標識石が頭を出していた。木の枝にカメラを縛り付けて記念撮影をする。朝日連峰も見えたが、朝日幹線(送電線)と重なっていた。
 09:20山頂を出発し、藪を漕いで南下する。雪に覆われた枝に足を取られて歩きにくい。西には真っ白な飯豊連峰が連なっている。若干雲があるが、天気予報とは大違いの快晴である。
 東から来る大きな尾根上に車道が見える。09:42尾根が合流したので、ほぼ平行に足下を林道が走っている筈だが、杉の植林地に覆われて確認できない。雪は膝下程度、藪と絡み歩きにくい。
 670m峰から町境は90度右折し、すぐに尾根が左右に分かれる。GPSで確認をするが、方向は分からない(わたしのGPSにはコンパス機能がない)。今回持参した25,000地形図「玉庭」には磁北線を記入していないので、コンパスが使いにくい。感覚でコンパスを合わせて若干下りGPSで確認すると、本来とは違う右の尾根を下っていた。気付いた時点で斜面をトラバースすると、鞍部が確認できた。
 621m峰で10:00-11とODDと無線を交信し食事を取り、GPSの電池を替える。地形図は広い斜面になっており顕著な尾根がない。急遽地形図上に磁北線を引き、コンパスを進行方向にセットする。若いブナ林を下ると10:20車道が出てきて杉の植林地となった。コンパスを頼りに植林地を下る。
 植林地が終わると急斜面になる。フゾロイ沢対岸の崖を避け、下流に大きく回り、痩せた尾根を下って川原に降り立つ。渡渉点を探し10:40長靴のまま沢を渡り、傾斜のある林を登る。GPSを見ると「衛星が捕捉できません」と表示されていた。急な斜面を登り終えると、10:48広い植林地に飛び出た。
 食事を取りGPSで現在地を確認するが、地形図に緯度経度の線を引いていなかったので、正確な位置は分からない。この尾根のどの部分を横断するのか分からない。上を見ると広大な造林地に作業用の車道が2本横切っていた。
 天候が良いので、なるようになるさと登りだした時、鉛筆がないのに気がついた。出発前に何時も持参するノートと鉛筆が見つからないので、予備の鉛筆で地形図にメモを記入していたのだが、その予備鉛筆がない。時刻は下山後にデジカメデータから記録することにした。(下山後、ザックの中から財布と一緒にノートと鉛筆が出てきて苦笑い)
 11:21尾根を境にして西側はブナ林になる。地形図を見て町境が西に出ている枝尾根上を走っていることに気付き、この尾根を探すことにした。
 11:26案の定、広い枝尾根が右手に出てきた。ここで先ほど記入した磁北線を利用してコンパスを合わせて枝尾根を下る。ブナ林の中に時折、杉の高木が立っている。天然杉なのだろうか、そうとすれば珍しい。さらに下ると、身長を越えるユキツバキの猛烈な藪が待っていた。
 藪を強引に突破すると、広い斜面が幾つかに分かれ、どれを下るのか判断に苦しむ。GPS上の町境は沢の曲がり具合と等高線の格好で検討をつける。問題は眼下を流れる森残川渡渉点の見極めである。
 下に萱原と対岸に小尾根を確認したので、窪地状の急斜面を観察し使用できる柴のラインを読み、下降をする。
 11:47森残川は雪解け水で濁っていた。長靴とズボンを脱ぎ両手に持って渡渉をする。尾根の藪を漕ぐと、11:58突然車道跡に出た。地形図にある歩道であろう、ここで食事を取り暫く休憩をする。
 後は直登するのみである。若干登った所で踏み跡らしきものを見つけ、順調に高度を上げたが、傾斜が落ちた時点で、厳しい藪漕ぎになった。
 尾根は痩せて両側が切り立っている。藪があるので恐ろしくはないが、残雪期は嫌らしいコースだろう。
 地形図が「玉庭」から「叶水」に替わる。「叶水」には緯度・経度・磁北線をあらかじめ記載しているので、ひと安心する。
 右と左からそれぞれ大きな尾根を合わせ、12:36に516mの鞍部で藪は終りブナ林の中に踏み跡(雪に覆われている)が出てきた。尾根も広くなり、太いブナの根元で食事を取る。
 600m峰13:51ここは平坦である。今日始めて人の足跡を見る。スパイク長靴を履いた二人連れである。町境はここで南にUターンする。杉と踏み跡が出、足跡も町境を辿っている。
 662m峰13:57には2本の木が立っており、ここを今日の山行の終点とすることにした。予定通りに西へ下ると14:06林道に出た。さらに14:14柵が開かれた林道から轍の跡がある広い林道に出た。
 その後は延々と林道を歩き、途中から入倉畑沢とナヘイ沢の間の尾根を下った。444m峰からはそのまま急斜面を北東に下り、15:08森残川に降り立つと、砂防ダムのすぐ上流であった。
 地形図では何故か砂防ダムの前後にのみ車道が記載されていない。確かに砂防ダムの上流には道があるが、砂防ダムを越える道がない。砂防ダムにはスリットが入っており、その脇に穴開いていたので、試しに穴を潜ってみたが、ダムの下流は淵になって通れない。仕方なく、ダムの左岸を巻いて下る。
 ここでも道を探したが見つからない。藪を漕いでいると前方に田んぼが見えた。川に下ると道があった。森残川を2回渡渉して、15:16田んぼに到着。畦道を歩くと車道に出た。
 15:24高松集落で猟友会の服装をした方々に会う。熊を探したが見つからなかったとのこと。そういえば私も今日は一度も熊の足跡を見ていない。まだ穴に入るには早い筈なのだがどうしたのだろうか。
 高松から森残川本流沿いの林道を歩き、15:38車に到着した。

今回のコース

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