登山者情報977号

【2006年01月03日/町境:600m峰〜九才峠/井上邦彦調査】

 今回は第975号に引き続き町境を南下した。胡桃平の除雪終点に車を置き、06:16スキーを履いて歩き出す。天候は雪。ラッセルと言うほどではないが、カービングスキーのためかスキーの真ん中が沈む。06:39-44カッターシャツを脱ぎ、下着とカッパ姿になる。GPSを確認すると消えていたので電池を換える。昨夜確認した時はまだ余裕があったのだが、低温のため電池のパワーが落ちているのかも知れない。
 06:53赤沢林道入口に到着する。林道に入った所の一本杉が目印である。前回降りてきた林道を進む。雪崩の危険性はまだ感じられない。07:00特徴のある針葉樹の塊が見える、目指す尾根の末端にある401m峰である。07:05左ノ沢伝いに行く林道を左に分ける。沢を見ると埋まっている部分もある。ここからは登りとなりペースが落ちる。沢と標高差が大きくなる。時折、新しいGPSが「ピー」と鳴るが意味不明。
 07:15小沢の手前、前回降りてきた所から尾根に取り付く。若干高度を上げると、もう少し先の尾根が良かったかなとも考えたが、結果的には大差はないだろう。雪に覆われた杉の間を縫うように登る。
 07:35主尾根上に出ると雑木林になる。07:45-50テルモスの紅茶を飲みお握りを頬張る。この後の食事は余裕がなく、紅茶はこの1回のみ、お握りを口の中に押し込んで噛みながらの歩行となった。
 この先、杉植林地を通り、07:56小ピークで読図。ここから雑木林になる。08:02種尾根上に林道が出てきた。林道は単純ではなく、主尾根の右斜面や尾根上を走っているので林道から外れて登る。コンパスと地図の磁北線を合わせ、先がなくなった所が町境と決め、コンパスが指す方向に歩く。
 08:19-23町境に到着する。ここでコンパスをセットし直す。吹雪となり体温が奪われ、視界が乏しくなる。08:46-56針葉樹が立っている570m峰は左に大きな尾根を分ける。ここでカッターシャツを着、軍手からスキー手袋に替える。
 雪庇に注意しながら進む、吹き溜まりに雪崩の気配がしてきた。09:14比較的風の弱いところで握り飯を頬張る。町境がほぼ直角に右折する箇所で一瞬591m峰に行きかける。この付近から尾根は広くなり、複雑な地形で現在地と方角が分からなくなる。小ピークに登り鞍部に下ると左前方は、広い雪斜面になっていた。斜面を登るといきなり電波塔が見えた。眼鏡をかけずに読図していたので、電波塔と林道の記載を見落としていたのだ。実はこのことに気付いたのは下山後であった。
 09:44電波塔は唸るような音を立てていた。ここから林道を左にして尾根上を進み、09:58鞍部に着く。今考えれば619m峰との鞍部であるが、北西に伸びる林道が頭を混乱させる。吹雪は勢いを増していく。コンパスを左寄りに設定し前進する。10:19それまでの野球帽から冬山用の帽子に換える。
 610m峰、GPSで県道のすぐ上にいることを確認する。ここで私は重大な誤りを犯してしまった。本来は南南西に合わせるべきコンパスを東に合わせてしまった。同時に曲がりくねっている林道に惑わせられた。結果、東南東から東北東に下る尾根に迷い込んでしまったのである。
 スキーを踏み出すと雪面に亀裂が入り始めた。さらにスキーで下ろうとすると雪崩が発生した。10:35林道が横切る鞍部を通過する。雪が深くスキーが重い。峠がすぐ近くという心が読図を怠らせたのだろう。
 さすがにおかしいと気付き、GPSでとんでもない方向にいることを確認し、10:48戻ることにする。しかし下って来たトレースは急で使えず、ジグザグに登ることになる。
 ここで助平心が出た。ルートは左側にある、少しでも左に斜上をすることで早く正規のルートに出ることができる。どうしても直登を避けて左斜上になる。
 大きな尾根が見えた。町境はあの尾根に違いない。しかし直登をして尾根に取り付くには雪庇を乗り越えなければならない。観察すると雪庇が一部崩壊して雪崩が発生している。スキーの感触は雪崩の危険性を伝えている。そうこうしている時に尾根の途中に簡単に雪庇を越えることができそうな場所を見つけてしまった。
 ゆっくりと雪庇下の斜面を斜上する。亀裂が入った瞬間、足元から雪崩が発生して落ちていく。切断面の雪崩層を観察する。深さ約20cm の新雪表層雪崩である。雪崩は途中の緩傾斜で止まっている。
 細い樹木を掴み、さらに一歩踏み出す。上から一斉に雪が崩れた。これであとは旧雪だけである。快適に目標のポイントに斜降し、11:19尾根に上がる。
 GPSで誤りないことを確かめ、尾根を下るが風紋状の雪が崩れるので、風上側を進む。急になるとスキーを横にして雪崩を起こしながら下る。11:25林道を過ぎると、雪は膝まで潜り込むようになった。
 11:39-46九才峠に到着する。ここでシールを剥ぎ、立ったまま握り飯を口に頬張る。のり面で雪崩が発生している。県道は傾斜が緩く雪が深いのでスキーは滑らない、ひたすら歩くのみ。
 県道沿いに電柱が立っているので良い目印になる。雪崩危険箇所には電柱がなく、埋設されているようだ。12:58歩きながら食事を取る。
 目の前に雪崩が落ちてきた。それ程の規模ではないので、路肩を通過する。電柱に記載されている番号を目安に歩く。
 13:23左から林道を合わせる。少し疲れてきた。電柱の番号は、以前の集落で区切りになっている。14:15赤沢林道分岐に到着する。微かに期待していたが、やはりトレースは全くなかった。
 山鳴りがしている。最後の握り飯を頬張り、14:58車に到着した。

今回のコース
道迷いのログ
林道を見下ろす 07:39 小沢を挟んだ対岸の植林地 07:39
町境に出る 08:22 町境を南下する 08:38
振り返る 08:38 風雪の合間に前方が見えた 08:48
電波塔が現れた 09:47 深雪に難儀する 10:26
雪崩の前兆が出てきた 10:37 ルートが判然としなくなる 10:37
雪崩が出始める 10:41 ルートを戻る 10:55
雪崩面を見上げる 11:07
雪崩層 11:05 まもなく九才峠 11:33
九才峠に到着 11:44 目の前で発生した雪崩跡を通過する
12:38
カーブミラーを利用して写す 12:45 車に到着 15:00