【2006年05月03日/デト平尾根〜西俣尾根/井上邦彦調査】
以前にイリ平尾根を登った時、デト平尾根は険悪そうで気が進まなかった。天狗平に入るのも気が進まないので、どうせならとデト平尾根を目指すことにした。
民宿奥川入の駐車場は混み合いそうなので、手前の梅花皮荘駐車場に車を止め、05:02歩き出した。梅花皮荘の桜が咲き始めていた。
05:09奥川入にはQKGが見送ってくれた。山は何処となく色づき始めていた。田はまだ雪に覆われていた。05:20枝尾根に取り付くとイワウチワ・カタクリが咲いていた。対岸の林道は倉手山取り付きの先にユンボが止まっていた。僅かだが先日より除雪は進んでいるようだ。
05:44主尾根に出る。05:52熟年楢(仮称)を通過する。今年は不思議なほどマンサクが咲いていない。06:03雪の急斜面になり、06:05夏道になると平坦になる。06:07-15十文字ノ池で夏道は終了である。池は埋まっている。食事を取っているとマンサクが咲いていた。山鳩が啼いている。高度を上げるに従い次第にガスの中に入って行く。後ろから1人の登山者が登ってくる。
06:58-07:13西ノ俣峰山頂で食事をしていると先ほどの登山者が登ってきた。西俣ノ峰まで日帰り往復とのことである。ここで地形図を再確認し、山頂から東俣川に落ちている小さな尾根にコンパスを合わせる。
雪面を下るとすぐに藪になる。時折急な雪があり肩に差したピッケルを抜く。ストックが邪魔になる。雪崩が怖いので忠実に急な小尾根を下る。
東俣川が覗ける場所まで来ると、流れは飛沫を上げている。長者沢合流点ではなく、右岸下流、右岸の小沢から落ちてきた雪崩が作ったスノーブリッジを渡ることにしてトラバースをすると、スノーブリッジに亀裂が入っていた。恐る恐る左岸に渡り、07:45-47広い段丘で食事を取る。昔、泉岡集落の方々がゼンマイ小屋を建てていた場所である。
先ほど下降途中から見た尾根の状態はかなり悪い。とりあえず小屋跡から真っ直ぐに雪面を登り、慎重に左の雪面に移行し尾根に登る。若干雪頭を進むと雪が不安定になってきたので尾根上の藪に入る。何時もどおりの強烈な藪を過ぎ、雪面と藪を交互に進む。藪も部分的に獣道があり助かる。鉈目など人跡は全くない。
08:22-31食事をしている時、万歩計がなくなっていることに気付く。この先は緊張の連続である。雪面が多くなるが、部分的にある嫌らしい藪、右手の急な雪面の亀裂沿いに巻く、痩せた雪稜と亀裂、藪に入るとほっとする。1,350mの岩塔が視界に入ってくると心中穏やかならぬものがある。
09:40-56核心部手前の土の上で食事を取り、ルートを観察する。右手は完全な岩場で論外である。左手に広い雪斜面があるが、左に向かって亀裂が伸びており、最上部には雪庇が張り出している。直上するには猛烈な藪を力任せに登ることになる。
心を決めてアイゼンを履き左斜面に踏み出す。斜面の真ん中で亀裂を越え右に戻って尾根を直上する。幸い急ではあるが雪庇はなく、10:11無事1,305m峰から上がっている巨大な尾根上に出ることができた。
アイゼンを外し日焼け止めクリームを塗ってサングラスを掛け、ストックで快適に登る。10:14-19熊の足跡を見つける。昨日のものだろう。足跡は下っている。良く見ると大きな足跡の上に小さな足跡が重なっている。仔付きである。上を見るとジグザグに蛇行し、上部では一面に足跡が散乱している。このような足跡は始めてみる。
ガスが薄くなり右手に白い鯨のような山が青い海の中に浮かんでいる。10:30-40カメラの電池を交換し食事を取る。頼母木山方向に警察ヘリが飛んでいる。偵察であり事故でないことを祈る。
飯豊本山から鉾立峰までの展望が素晴らしい。クラストした雪の表面が音を立てて落ちていく。風が冷たい。11:02杁差岳山頂が見えた。11:08長者平に到着する。潅木は一面氷が張り付き、花が咲いたようである。
11:17-25杁差岳山頂、三角点にカメラを置き記念撮影をする。メールを送ろうと試みるが圏外の表示。11:27-34杁差小屋を点検する。特に問題はなく別棟の便所2穴とも使用可能であった。携帯電話でメールを送る。
夏道を歩き11:58鉾立峰山頂、ここから急な雪斜面を下る。鞍部からは一部夏道を歩き雪上を歩く、最上部から夏道となり、12:39-13:11大石山分岐に到着した。分岐の広場は露出しており、途中から雪で冷やしてきたビールを飲む。
13:38カメラバッテリー交換、法外な景観の中、千鳥足で夏道となった稜線を歩く。13:52-54頼母木小屋には昨秋建設された便所が加わり3棟が並んでいる。本棟と便所は雪がないが、便所は囲いがされて使用出来ない。管理棟の水は出ていない。
14:15頼母木山々頂直下から廃道沿いに下山することとした。メールは不安定であるが何とか送ることができた。14:19尾根に行き往復のトレースを見つける。騙シ峰からスキーで滑降している。
3人パーティが登ってきた。門内小屋まで行く予定とのことである。雪上に皮膜のように浮いている氷が、一歩毎に流れ落ちる音で会話が聞き取れない。下を見ると煙状に舞い、オーロラのごとく模様を描いて落下していった。
自然と杁差岳から伸びているデト平尾根に眼が行く。デト平尾根の核心部に眼が吸い寄せられた。私が左手の雪斜面に亀裂を避けて回りこんだルートに雪庇が崩壊した雪崩跡が見える。瞬間背筋が凍りつくように思えた。
14:38三匹穴を通過する。これだけ晴れていれば迷う心配もない。下からヘルメットを被った男性が登ってきてすれ違った。14:46大ドミを通過する。
14:53-15:00鞍部で食事を取る。ここから枯松峰まで軽い藪の廃道を登る。15:02枯松峰山頂からは広い雪原を下る。小ピークを越えてゆくが、雪庇は歩けなくなっている所も数箇所あった。3人パーティとすれ違う。
15:40-51西俣ノ峰山頂で杁差岳に名残りを惜しみながら食事を取る。16:08十文字池、16:14熟年楢を通過し、16:20枝尾根を下る。最後は左の藪から雪斜面に出て、16:32取り付きに到着する。
イタヤカエデやミズバショウの花を見ながら杉林を抜けると、鯉幟が旗めく民宿奥川入となる。ここで隆蔵氏と話をして16:52梅花皮荘駐車場に到着した。
今回のコース |
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西俣ノ峰〜デト平尾根 |
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核心部 |
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梶川峰方面 | 除雪は倉手山取り付きを過ぎた |
727m(池)から西俣ノ峰を見上げる | 飯豊山が見えた |
吹き付け付近の様子 | 順調に高度を上げる |
西俣ノ峰から下る途中、目指すデト平尾根 | デト平尾根 |
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東俣川 | デト平尾根から見た西俣ノ峰、下山してきたコース |
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昔、泉岡の方が小屋掛けしていた場所 | デト平尾根を登る |
藪がひどい | イリ平尾根下部 1 |
イリ平尾根下部 2 | イリ平尾根上部 |
雪上を登る | 枯松山方面 |
西俣ノ峰 | 痩せ尾根になる |
イリ平尾根上部 | 核心部が見えてきた |
核心部の全容、コース取りに悩む | 左の亀裂の端を越えることにした |
熊の足跡 | 熊がジグザクに歩いているのは珍しい |
右手の急斜面を登ってきた | 視界が開け、頼母木山が見えた |
頼母木山と飯豊山 | 朝日連峰も顔を出した |
長者平から杁差岳 | 山頂付近は一面霧氷の花が咲いていた |
杁差岳山頂にて | 山頂から杁差小屋を見下ろす |
鉾立峰に向かう | 地神山方面 |
鉾立峰から杁差岳を振り返る | 西俣尾根全景 |
鉾立峰から大石山 | 大石山に向かう |
雪庇の亀裂 | 頼母木山 |
鉾立峰を振り返る | 西俣尾根 |
鉾立峰から伸びるアゴク峰 | 門内岳から伸びる長大な尾根 |
二ツ峰と烏帽子山 | 胎内尾根 |
地神山 | 千代吉沢源頭 |
二王子岳に至る果てしない尾根 | 地神山 |
今頃はLTQが歩いている筈 | 頼母木小屋 |
登ってきた尾根と大境山 | 頼母木小屋 |
昨年秋に完成した便所 | 頼母木小屋は3棟からなる |
杁差岳 | 頼母木山々頂は雪面をトラバース |
今日始めての登山者 | 三匹穴に向かって下る |
デト平尾根全景 | 登りコース全景 |
核心部、雪庇崩壊の跡が・・・怖〜 | ぐんぐん高度を下げる |
ダケカンバ | オオドミに人影 |
登ってきた登山者 | ダイグラ尾根 |
白倉山 | 枯松峰から振り返る |
杁差岳を眺めながら下る | 枯松峰から西俣ノ峰 |
イリ平尾根とデト平尾根 | 見飽きない杁差岳 |
藪が出てきた | 雪庇に注意 |
貴方なら雪庇の上を歩きますか? | 雪庇に注意しながら歩く |
雪庇がずれている、要注意! | 振り返る |
下りの尾根が見えている | 杁差岳が名残惜しい |
西俣ノ峰から頼母木山を望む | ダイグラ尾根全景 |
枯松山 | 倉手山全景 |
車道の状況 | 池を見下ろす |
車道の状況 | ようやくブナが芽を吹いた |
色づき始めたブナ | ブナの芽 |
民宿「奥川入」 | 明日の熊祭り準備が終わっていた |
国民宿舎「飯豊梅花皮荘」脇には桜が雪上で咲いていた | |