平成23年度遭難対策委員会研修会兼総会報告報告

【2011年06月25-26日/関西大学 飛鳥文化研究所/登山副部長、遭難対策委員長:阿曽清浩】

出席者   ― 資料参照 ―
進 行   常任委員 岩切貴乃 氏
 今年の遭難対策委員会研修会及び総会には、東北方面からは私だけの出席となった。

6月25日(土)
 12:30 受付
 12:45 開講式 司会進行 石田常任委員
 13:00〜14:00 報告「奈良県における山岳遭難の現状」:奈良岳連 藤本理事長
  1、 実態の認識不足、経験不足、情報不足等
  2、 準備不足@携行品A天気情報B体力
  3、 ツアー登山@時間的制約A体力、経験の格差B人間関係の希薄
  4、 単独登山者@非常時の対応
 14:00〜15:10 基調報告「安全登山推進の現状」:青山副委員長
  ○ 2010年遭難者数が2300人を超えた。(山のもの全部)山での携帯が使える範囲が広がった為件数が多いのは確か。
   @ 増加は問題である・・・当然、負傷、死傷、死亡、行方不明者が増加する訳であるから重要な社会問題である。
   A 必ずしも問題とは言えない・・・放置すれば深刻な事態に陥ってしまう事故者を、軽度あるいは無事救出するのだから、レスキュー活動の優秀さを示めすもので数が増加しているのは仕方ない。
  ○ 防災から減災へ(地震)・・・災害を防止するのは不可能
   遭難も 遭難防止から 減少へ
   @ 道迷い=環境整備(道、小屋、道標)
   A 救命率改善=救助(夜間レスキュー)日本は夜間行動がおちる。 イギリス、スイス、ドイツは24h以内で救助。真夜中の捜索あり。
   B 行方不明=情報(警察犬導入、登山届け、事故のデーターベース、事故マップ、専門家の養成)  警察犬・・・山形県では山菜取り等には出動している。
   C 疲労性事故=計画(体力、コース、装備、食料)・・・トムラウシ遭難
   D 意思(決断)決定、ミス減少=リスク情報(天候、地形、事故、食料、服装、人)
   E 再発事故=はずべき事故。
   F 自己責任意識形成=教育
   G メディアによる啓発=広域情報(正しい登山情報、窓口設置、)
 15:20〜17:00 研究協議  −山岳遭難について−
  A/B/C班で討議  座長:町田副委員長、青山副委員長、石田常任委員
  ○ C班 遭難の実態、件数など
   ・ 山形県(阿曽)携帯電話による通報が多くなっている。・・・安易な通報。スキー場から離れ雪崩に遭う遭難事故(蔵王)バックカントリー的なもの
   ・ 茨城県(永井)つくばエクスプレスが開通してから登山者が多くなり遭難の頻度が高くなった。山菜遭難は無し。
   ・ 栃木県(渡部)日光、那須方面、道迷いが多い。防災ヘリの出動回数が多い。携帯電話での通報。
   ・ 神奈川県(下越田)丹沢 大クラ 年100万人。山ガール→地上での生活の感覚で山に入ってくる。(山では考えられない感覚・・・指導が必要)
   ・ 山梨県(植松)富士吉田口にクライマーが増えている。林道の整備が進み山菜採りも観光バスで来る時代。行政の問題もあるか。富士山→9月がチャンスとシスト(7,8月)して来る。山小屋は基本的に8月31日までだが、団体の受入等で9月でも営業している。富士山の登山人口はこれからも増える。釣りも同じことが言える。
   ・ 石川県(岡田)白山が主ですが、春先は「笈ヶ岳」(おいずるがたけ)が白山より人気がある。道迷い等で安易に携帯電話による110番通報が多い。
   ・ 香川県(十河)大きな事故はない。
   ・ 京都府(宮永)データは重く思っていない。無組織者の問題。谷での怪我か死亡が多い。谷には下りるな。今までほとんどが谷スジ。沢登山、組織の人は自力で下山する。
   ・ 埼玉県(瀬藤)転落が多い。遭難件数は増えている。
   ・ 東京都(小池)山へ送出しているほう。奥多摩での件数が多い。
   ・ 大阪府(石田)高い山はない。府内の事故はほとんど無い。ゲレンデでの事故。フリークライマー、無組織の方の事故が問題。登山届けも無し。
 【登山体型】
   @ 継続型・・・20代から現在まで
   A 目覚め型・・・県民ハイク等でめざめる
   B 再会型
   C ツアー登山・・・ついて行けなくなる
   D 自信過剰型・・・無理して山行き。仮眠での山行き。

6月26日(日)
 9:00〜12:00 委員総会
        強度試験報告、トレッキングポール試験報告・・・町田副委員長       
        UIAA登山委員会報告・・・青山副委員長 
        第8回山岳事故調査報告・・・青山副委員長 
        
 研究協議発表・・・各班より
  A班(町田)
   1、 各県の状況
    ・ 遭難の特徴・・・単独者が多い。未組織登山者。安易な若者(ずさんな装備)
    ・ 安易な救助要請の増加・・・本当に対応しなければならない内容なのか。
   2、 救助隊について
    ・ 対応がほとんど行政対応。救助隊をもつ岳連はほとんどない。要請があった場合はボランティアで協力。地元山岳会が対応。 
    ・ 鹿児島県=NPO遭難対策協議会の立上げ。
   3、 遭難とどう関わっていくか。
    ・ 積極的な救助隊の構築は必要なのか。
    ・ 自分たちの組織。スキルアップは必要。
    ・ 日当の問題は明確に。
   4、 遭難を未然に防ぐには。
    ・ 未組織登山者への技術の教育。
    ・ スポーツ店を利用した講習会等の宣伝。
    ・ 学生、若年層をどう取り込むか。
  B班(青山)
   1、 どーすれば遭難は減るのか。
    ・ H22年2.396名のうち970名 40%が道迷い。
    ・ モデル化→行政に働きかけを。
    ・ 道標の統一化 → 環境省・建設省たて割り。
  C班(石田)
   1、 事故の状況
    ・ 安易な携帯電話での通報。
    ・ 道迷い、転落、滑落多い。
    ・ トレイルラン、マウンテンバイクの事故。
    ・ 未組織者の事故。
    ・ 行政を含む悪意な山への紹介等。
   2、 対応
    ・ 未組織者を岳連のパーソナル会員に勧誘。
    ・ 指導者の育成。・・・ハイク指導者等の養成。(技術知識の普及)
    ・ 道迷い。・・・地図が状況と合っていないものもある。
    ・ ビーコン、GPSの貸し出し。
    ・ 道標にチップを埋めてあり、通過後メールが届く設定(北岳)

資料
 ●安全登山推進の現状(青山千影)
 ●国際山岳連盟(UIAA)における登山委員会の活動内容商会ーベルン会議に出席してー(青山千影)
 ●第8回事故報告書ー山岳遭難事故の現状と登山事故のリスクについて(青山千影)
 ●平成23年度遭難対策委員会研修会兼総会資料