飯豊朝日連峰の植物達
No.003 ヨツバシオガマ

 御西小屋付近に敷設した緑化ネットのコドラートにおける確認種の中に「キタノヨツバシオガマ」という名前があった(磐梯朝日国立公園飯豊地域モニタリング報告書)。聞きなれない名前である。
 小荒井実氏の「飯豊山・花の旅」にはヨツバシオガマと共に、「ヨツバシオガマと比べやや小型で、花冠の上唇のなかばから先は急に細くなってとがっている。また花筒は白色を帯びていることなどから区別される」としてクチバシシオガマの画像が掲載されている。
 確かに飯豊を歩いていると、ヨツバシオガマの花の色には変化がある。全体的に白くて先だけが赤いものをクチバシシオガマと呼んでいるのかなと思っていたが、今回改めて考察してみることとした。「日本の野生植物V」にもクチバシシオガマが記載されており、南アルプスのものは殆どがこのクチバシシオガマだと言う。
 それではキタノヨツバシオガマとは何者なのだろうか。ネットで調べてみるが該当するものは見当たらなかったが、キタヨツバシオガマがヒットした。記載されていた内容を並べてみる。
@ シオガマ系は分布で分類出来る。キタヨツバシオガマは飯豊以北の東北地方と北海道のみの分布。
A ヨツバシオガマに比べ、花序が長く、毛があり、花は7〜10段以上つくものが多いといいます。また花冠と萼との境で曲がっているのも特徴だそうです。
B ヨツバシオガマの大型種をハッコウダシオガマ(またはキタヨツバシオガマ)と呼ぶこともあるが、厳密に区別することはできない。
C ヨツバシオガマに似ていて、花序が長く花が沢山段になってつく。
D これまで同一種とされていたが、飯豊山以北の高山帯の草原に咲くヨツバシオガマは、全てこの種である。

 ※ 花序(かじょ)とは枝上における花の配列状態のことである。チューリップのように茎の先端(茎頂)に単独で花をつけるもの(こうしたものを単頂花序という)もあるが、ヒマワリやアジサイのように花が集団で咲くものもある。このような花の集団を花序という。花の配置、軸の長短、花柄の有無、比率等により、いくつかの基本形態がある。

下の画像に比べて花冠と萼の角度が急である
茎には毛が生えている
【キタヨツバシオガマの可能性がある】
上の画像に比べて、花の先が細長いような気がしないでもない
配色はクチバシシオガマと似ているのだが
この力強さはキタヨツバシオガマと言っても良いような気がする
ボリューム感が全く違うクチバシシオガマ
 これまでは力強い個体を選んで撮影してきたが、歩いている時に白が強く貧弱な個体も相当見かけている。もしかするとそれがクチバシシオガマなのかも知れない。今年は留意して歩いてみることにしよう。