会員の山行 139号

【2008年12月22日〜24日/八ヶ岳(赤岳西壁主稜、中山尾根)/吉田岳(文)、金野伸】

 12月21日~24日まで、WKB(金ちゃん)と信州・八ヶ岳へ行ってきた。八ヶ岳は冬期クライミング修練の場として、レベル、アプローチ、気象条件など様々な条件から正に好適地となっている。と言っても山形から向かうにはちょっと遠いのだが、毎日が吹雪の世界から抜け出して効率のよい技術訓練を行うというのもたまにはいいものである。今回は、3つの岩稜クライミングルートを計画してみた。
【12月21日(日)】
 朝9時、マイカーで小国町を出発。途中新潟でICIに寄り物品を購入。新潟から高速に乗り上越、長野を通過。1つインターを見過ごしてしまい、諏訪南インターで下車(15時30分?)。アップルランド茅野店にて食料品、飲み物を購入。雪の無い美濃戸口を通過し、美濃戸赤岳山荘の駐車場に到着した(19時頃?)。と言ってもさすがに美濃戸口からは路面がかなり凍結しており、私の軽ワンボックスカーではちょっと厳しくはあった。
 荷物を一旦外に出し、車内にて宿泊準備。買ってきたお惣菜をつまみに、銘酒「真澄」で乾杯。21時に就寝。
【12月22日(月)】
 4時15分起床。しかし、予報通り天気が良くない。気温が高く小雨が降り、どんよりガスがかかっている。今日はどうも上には行けなさそうだ。ダラダラと食事そして出発準備を行う。8時20分、出発。荷物がかなり多い。一般冬山キャンプ道具、クライミング道具、3泊分の食料の総量は2人で担ぐには予想以上だった。「行者小屋までだから」と甘く見て、通常通りにおでんや鍋の具材をそのまま持ちこんだ事を後悔。バテながらも11時30分小屋に到着した。驚いたことに誰もいない。小屋もまだ空いていなかった。「まずは小屋でお汁粉でも」というイメージとはだいぶ違っていた。休む間もなく、雪の降るなか幕営準備。濡れた衣服でかなり寒い。コンロと昼食を持ち込んで、テント内で大休止とした。
 14時、ようやく雪が小降りになってきたので行動開始の準備にかかる。とりあえず明日からのルートの取り付きの確認と、WKBへの技術講習を行なった。正直、WKBは冬期登攀どころか、アイゼン・ピッケルワークもあまり分ってはいない。とりあえず、同時登攀と隔時登攀を教えるが、これはたぶん使えなさそうだ。
 16時30分テント場へ戻り、明日の準備を行った後、食事の準備に取り掛かった。
【12月23日(火)】
 5時15分起床。天気は予報通り良い。ただ午後にはやや崩れてくるようである。7時30分出発。今日のコースは赤岳西壁主稜である。1時間ほど文三郎道(登山道)を進んだ後、主稜取付きへとトラバースを行なう。取付きにて出発準備。と、そこに一人のお客さんを連れたガイドさんがやってきた。慣れているようだったので先に行ってもらうと同時に、そのガイド方法を見させてもらった。
 所々に出てくる岩場はそう難しいものではないが、やはり初体験のWKBは緊張しているようだ。天気が崩れ始めて視界も悪くなってきたため、更にストレスは感じていたはずである。そんな中、上部の岩場でルートが分らなくなってしまった。「絶対ランナウトしているよ」と思いつつも左から登ってみると、そこは人工の世界。アブミを出して何とかクリア。しかしフォローのWKBが登って来られない。仕方なく私も懸垂でテラスまで降りることにした。後ろから来た3人パーティーが「こっちだと思いますよ」と、付いて行ってみるとなるほど楽なルートが続いていた。確かにこのコースでアブミが出るわけがないのだが、雪が付いた岩肌でルートを探すのはそう楽ではない。その後は凹部の岩場、リッジを越え、最後は一応アンザイレンして登って行くと、赤岳頂上小屋に到着した。
 帰りは文三郎道を下降し、1時間半ほどでテント場に到着した。
【12月24日(水)】
 天気やWKBの調子でルート変更も有りうると思っていたが両方とも良さそうなので、
予定通り中山尾根へ向かうことにした。10分ほどで中山乗越。ここから樹林帯の中の尾根部を直上する。ただ、昨日入ったパーティーのトレースがありがたい。左手には石尊稜を登攀中のパーティーがおり、また氷瀑へと向かっているトレースも見えた。1時間ほどで、岩場取り付きの手前に付いた。
 登攀準備を行うと共に、食料・飲料の補給、さらに出すものを出して・・、アンカーを取りWKBの確保でAXLが向かってみる。またもや2箇所でランナウトしてしまったが、1ピッチで下の岩場をクリア。なるほど赤岳主稜よりはややグレードが上のようだ。そこからは岩混じりの雪稜を3ピッチほど登っていく。更に核心部の上部岩壁を越え、雪稜、岩稜と続くが、日差しが当たって岩が乾いているため楽しんで登ることができた。最後のバンドのトラバースをWKBに行ってもらうと、「登山道に出たぞー」とのコール。ロープを解除して私も登っていき、12時30分無事登攀終了。
 下りは地蔵尾根を伝い、1時間半ほどでテン場に到着した。そのままテント撤収、下山準備。またもや80~90Lのザックを満タンにして休み休み下っていき、16時30分赤岳山荘に到着。山荘に駐車代を払うとおばさんから「ずいぶん遠いところからずいぶんと大きな車で来たねー」とからかわれた。温泉に入り、飯をたらふく食って、「今日はどこかの道の駅にでも泊まるか」ということで、酒を買い込んでから19号線を北上して行った。

行者小屋前にて幕営
夕方、主峰が見えてきた
取付きにて準備
中間のリッジ部
セカンドで上がるWKB
赤岳山頂到着
朝日に染まる北アルプス
中山尾根取付き直下
ビレー中のAXL
上部岩壁より下方
上部岩壁に挑むWKB
雪稜にてビレー
今日は余裕があります
富士山もバッチリ現れた
日ノ岳肩に抜け終了