会員の山行 158号

【2009年09月19-21日/北アルプス:涸沢、奥穂高、奥又白/木内茂雄調査】

【タイム】 
(9/19)上高地8:34〜9:18明神〜9:23徳本峠分岐〜10:02徳沢園10:15〜11:03氷壁慰霊碑11:33〜11:55奥又白出合〜13:05ニセ屏風のコル13:10〜14:10屏風のコル14:23〜15:30涸沢テント場
(9/20)涸沢6:23〜8:19穂高山荘8:40〜9:20奥穂高岳10:43〜11:21穂高山荘11:28〜12:49涸沢小屋13:50〜13;55テント場
(9/21)涸沢ヒュッテ6:00〜7:03屏風のコル7:14〜8:30奥又白出合8:45〜(1時間30分迷う)〜12:52奥又白池13:39〜14:49奥又白出合14:54〜15:09氷壁慰霊碑〜15:30新村橋〜15:57徳沢園16:15〜16:38徳本峠分岐〜16:42明神〜17:25上高地
【記 録】
(9/19)
 自宅から約400km走り沢渡駐車場に車を止める。タクシーに分乗して一人千円で済ます。そのタクシー運転手の説明だと釜トンネルは新しく掘り直しものとのこと。また、帝国ホテル玄関前からは穂高岳が見えると教えてもらう。
 上高地から人気の河童橋を眺め、そして、相変わらず退屈な平らな砂利道を歩く。時には明神岳、穂高岳を眺め、新村橋を渡り、涸沢へのパノラマコースを目指す。橋を渡り直ぐに車道にぶつかり、右折れして暫く進むと左折れして奥又白谷へと山道を登るが標識が無い。
 途中、ナイロンザイル切断事件で小説“氷壁”の由縁の慰霊碑?で休憩する。この辺りは木立の中だが、その先20分も登ると木立が無くなり奥又白池方面との分岐になる。大きな岩に赤ペンキで右に涸沢と表示されている。そして、沢を2本位渡り樹林帯を登るようになる。
 1時間も登るとコルらしいのが見えたので、屏風のコルだろうと安心して気を緩める。ところが、これはニセものでまだ先が続いていてガックリする。パノラマコースと言うことで一度急登をすれば、後は鼻歌混じりと予想していた。しかし、とんでもない登りが延々と続きやっとの思いで屏風のコルに着く。
 ここまでに見た花はノコンギク、ノギク、ヤマハハコ、ホタルブクロ、トリカブト、コウゾリナくらいで、珍しいのはセンジュガンビが一輪咲いていた。その他は葉と実でシシウド、ハクサンフウロ、カニコウモリ、ヤグルマソウ、タケシマラン?ユキザサ、シラタマノキ、ツバメオモト、シャクナゲ等を見つける。このくらい有れば、花の時期には他にも楽しめるのではないだろうか?
 コルから右に登れば屏風の耳で、これに登れば穂高連峰、槍ヶ岳、蝶、常念等、の山々が見渡せる最高の展望台と予想出来る。でも、そこまで行く余裕も無く左に涸沢を目指す。稜線を少し進むと右に槍ヶ岳、そして、左に穂高岳、更に手前を見下ろすと涸沢にはテントの花が咲いている、感動の景色で、今までかいた汗の意味を暫し噛みしめる。その先、数分で稜線を右に降り、登り降りを繰り返す。右側が切れ落ちている斜面なので、気を抜けない。地図では緩やかに下っていると予想していたが、涸沢まで起伏の連続で時間がかかる。涸沢に近づくと、ヒュッテのテラスには大勢の登山客で混雑しているのが良く見える。
 涸沢に到着して、まず幕営場所を探すが、通常のテント場見たいに土ではなく、大小の石が堆積された斜面である。誰かが張った後を手直しして幕営する。中に入ってみると石の凸凹は我慢して、マットで誤魔化すしかない。
 そんな事も外に出て景色を見渡せば直ぐに忘れてしまう。色鮮やかな無数のテント、そして、見上げれば涸沢カールには草紅葉が金色に輝いている。更に、穂高連峰の岩峰が連なり、振り返れば屏風の頭、その向こうには常念岳、蝶ケ岳等の稜線が見渡せ飽きること無く、時間が経過する。そして、夜はテントの点々とした灯り、上を見上げれば満天の星で文句なし。
(9/20)
 昨夜は台風の余波のせいか風が強くテントをはためかす音が五月蠅かった。しかし、夜明けて次第に治まり、快晴の中、残雪を少し歩いてから奥穂高岳を目指す。
 今時、ヒュッテの傍にイワツメクサ、それから、途中にイワギキョウが咲いている。その他チングルマ、ハクサンフウロ、ミヤマダイコンソウ、ウサギギク等の葉を見つける、また、ナナカマドも紅葉が始まり出している。
 見上げれば先行する登山者、その上の稜線には穂高山荘が見える。登山道は難しい所は無いが、夏場は空から太陽、下〜は照り返しで暑くて大変だろう。そんな事を考えながら黙々と歩き穂高山荘に着く。
 目の前には急峻な岩山が迫っていて、直ぐに鉄ハシゴを登り険しさを味わう、しかし、その後はそれ程難しいところは無く登れる。登る途中、右遠くには名前の通りの形をした笠ケ岳が秋空にクッキリと浮かんでいる。振り返れば槍ヶ岳もみえるし、高度を上げるに従い、北アルプスの全貌が明確になっていく。
 そして、奥穂高岳山頂に着けば上高地も手に取る様に見下ろせる。また、どこからも見える富士山、南アルプスの山々、中央アルプス、八ヶ岳、浅間山、右向けば御嶽山、乗鞍岳、焼岳、振り返れば北アルプスの全山と言っても過言でないほど、山々が見渡せる。
 快晴の中なので、邪魔するものも無く、雄大な山々を眺め回す。この景色に満喫したため、北穂高岳に行くのは止めて、山頂で長休みをして涸沢へと引き返す。穂高山荘でトイレに入って気付いたのは、山荘の裏に回ると威風堂々のジャンダルムが良く見えることだ。朝来た道を引き返して行くつもりだったが、下の方で左に道を取り涸沢小屋に着いた。こちらから見る景色も素晴らしい。ここでユックリと喉を潤し、時間無制限に山々を眺める。
(9/21)
 今日も快晴で、テントを撤収してパノラマコースを奥又白へと向かう。途中、屏風のコル辺りのナナカマドを見ると、二日前に比べ紅葉が進んだ様だ。奥又白出合に着きサブザックに最小限のものを詰めてから、真っすぐ上に伸びている松高ルンゼに向かう。40数年振りに行ける奥又白池に期待を膨らませる。
 出合から直ぐ右上の中畑新道のことは知らないし、頭の中は2度登った事のあるルンゼを直登するだけであった。全くの沢登りで、時にはルートファイデイングを必要とする。帰りにどうやって降りようかと疑問視する箇所も有ったが順調に高度を稼ぐ。振り返れば出合はかなり下に見え高度感に溢れる。
 二度ばかり手掛かりの無いスラブを左岸の草付き利用して逃げる。そして、沢は広くなるが急傾斜のガレで油断すると岩雪崩を起こしそうになる。昔の記憶では、池近くになると左に回り込んだと思い込んでいたので、左ばかりルートを探すが、踏み跡を見つけられない。仕方なしに草付きと藪漕ぎで強引に急傾斜を登ってみる。藪が凄くなかなか進めず、時間的に諦める頃まで大奮闘の末、小さな頭に着く。
 上を見るとまだ先は長そうだし、どうも違う様だと、撤退を決意する。今来た藪を降りるのが賢明であるが、直ぐ真下を見ると小さく細い急なルンゼが降りているので、思い切ってこれを下る。まかり間違えれば最後は滝になっているかも知れないが、吾、強運に任せる。
 慎重に下って行くと古い黒紐バンド、アイゼンバンド、青いバンダナ、そして、黒ずんだ袋らしき物、物、が或る間隔を置いて落ちている。遭難者の物かと不安になる。拾う余裕も無く更に下って行くと、矢張り、滝に出くわす。右には逃げられない。左に微かなテラスと草付きが有るのでそれを掴んで回り込んでみる。その先はと眺めると、少しヤバイ箇所もあるが、下降ルートを読み切った。この間の時間は30分もかかっていないだろう。急斜面のガレ場を岩雪崩起こさない様に慎重に降り、先程の草付きで逃げたところを細心の注意で降りる。
 此処で一呼吸入れていると、左岸少し上から鈴の音が聞こえてきた。声を掛けると返答有りそこが登山道とのこと。そこまで、笹藪を漕ぎ登山道に出る。後で判ったがこれが中畠新道であった。
 自分の過信と思い違いで危ないところであった。先程の急なガレ場から左岸にルンゼを選べばこの新道と合流したのにと悔やむ。しかし、これを実施したならば、万が一登山者が落石を起こせばどうなった事だろう。現在、この沢登りはかなり危険だ。登山道に出てかなり疲労が蓄積されているが、一般道なので奥又白池を目指す。下り40分で来たと聞いていたので1時間半を覚悟して登ったが52分で奥又白池に着いた。
 快晴の天気のもと、池に映える前穂高岳の岩峰はまた格別なり。ミヤマリンドウが最後の花を咲かせている。傍に有るナナカマドが赤い実を付けている。それから、以前、池の畔に有った“宝の木“を見るのを楽しみにしていたが、残念ながら失せていた。少し上に岳樺が立っているが、山友に確認したがそれは違うとのことであった。
 時間を浪費したので上高地に着いたのが終バス近くで、それから2時間も待ったのには参った。

帝国ホテル前より穂高を望む
河童橋前風景
明神岳
途中明神岳を見上げる
明神岳の説明
穂高岳全景
新村橋
オヤマボクチ
ゴゼンタチバナの実
小説氷壁の題材になったナイロンザイル切断事件の地
氷壁由縁の慰霊碑
ムシカリの実
ノコンギク
奥又白出合
センジュガンビ
コウゾリナ
屏風のコル
槍ヶ岳を望む
奥穂高岳、涸沢岳を望む
左南岳、右槍ヶ岳
紅葉が始まる
紅葉が進む
北穂高、槍ヶ岳を望む
紅葉と槍ヶ岳
トウヒレン
涸沢を見下ろす
涸沢ヒュッテで憩う
草紅葉と涸沢槍
右に涸沢岳を見ながら
写真を撮る人後方左常念岳
穂高山荘を見下ろす
笠ケ岳を望む
左涸沢岳、右遠く槍ヶ岳
ジャンダルム
奥穂高岳山頂
奥穂高岳山頂より右霞沢岳を望む
乗鞍岳、御嶽山
奥穂高の祠をアタック
奥穂高より槍ヶ岳を望む
奥穂高山頂より前穂高を望む
上高地方面を見下ろす後方御嶽山、乗鞍岳、焼岳
奥穂高岳に集まる人々
前穂高の岩峰
ジャンダルム
奥穂高を振り返る
奥穂高に登ってくる人
穂高山荘裏よりジャンダルムを望む
涸沢の紅葉
涸沢の朝と紅葉
涸沢小屋前
涸沢小屋前より屏風の頭を望む
涸沢の草紅葉光る
前穂高を見る
テント場風景
テント場風景
涸沢の朝焼け
涸れ沢の朝
涸沢の朝
涸沢を登る
涸沢を登る
奥又白出合標識
迷い込んだ斜面
奥又白池
奥又白池と奥穂高岳
奥又白池と前穂高岳
奥又白池に映える前穂高岳
ナナカマドと前穂高岳
前穂高岳奥又白池にて
前穂高岳奥又白池にて
奥又白池と前穂高岳
ノギク
コケモモが古木の中に群生
イワギキョウ