会員の山行 179号

【2010年03月26日〜27日/八ヶ岳南沢、大同心/吉田岳・金野伸調査】

 当初は別の山域への登山を計画していてのだが、天候が安定しない上に雪崩も怖く、それではと比較的天候が安定している八ヶ岳へと急きょ向かうことになった。実働2日で1日目は南沢大滝と摩利支天沢大滝にてアイスクライミング、2日目は大同心南稜と右フェースにて岩壁登攀を行うという欲張った計画である。25日15時、小国をマイカーで出発。高速を走り、中央道原PAにて車中泊とした。

  [3月26日(金)]
 4時までに諏訪南ICを抜け、美濃戸へ。さすがに寒い(−10℃近く?)。ヤッケの上にダウンを着込み、ヘッドラを点けて5時15分出発。今日は午後から晴れるが風はやや強いままという予報であるが、早くも天気がいい。途中でダウンを脱いだのだが、その時にヘッドランプを落としてきたことに気が付いた。人もあまり来ないようだからと、帰りに拾えることを期待してそのまま進む。登山道を離れ南沢本流を進むと、すぐに南沢小滝が現れた。美濃戸からほぼ1時間で到着である。荷物を置き、大滝を見に行ってみると・・・、なんと大滝の氷は解けて滝になっていた。「あちゃーっ」。この感じでは摩利支天沢も心配である。先に摩利支天を見に行き、だめな時は急いで大同心に向かうということもまだ可能だが、WKBに相談してみると、「とりあえず小滝登りましょうよ」とやる気満々である。了解し、登攀の準備にかかる。ここはWKBにリードでトライしてもらう。リードとなるとスクリューを刺す技術に加え、やはり恐怖感が違ってくる。しかし、見事完登を果たして降りてきた。その後AXLが登り、再度WKB が登って、ここは終了とした。荷物をしまい、摩利支天へと向かう。後で聞いた話だが、南沢大滝は今年は真冬もあまり凍らなかったようである。
 摩利支天沢の入口は分かりにくかったが、かすかにトレースが残っていて、そこから入っていった。途中大規模なデブリを通過。最近起きた雪崩のようである。そこを過ぎると正面に大滝が見えた。大丈夫。登れそうである。一安心し、休憩を取った。天気は逆に悪くなってきた。風があって雪が舞い、気温も寒いままである。ビレーヤーはダウンを着込んで確保を行う。
 まずはAXLがリードでトライ。適度に足場があり、そう苦しまずに登ることが出来た。トップロープを取り、降りてくる。ここで各々疲れるまで好きなコースを順番に登ることにした。WKBには踵を下ろして膝を伸ばすように気を付けてもらう。すると次第に上手になってきた。まだアックスの打ち方がイマイチだが、2月に仙人沢でやっていた時よりははるかに上達している。WKBもそのことに満足のようだ。AXLは滝の裏側から表側に出てくるコースに挑戦。トップロープに助けられながらも何とか上まで登り切ることができた。しかし垂直以上の前傾になるとやはり厳しい。腕がパンパンになってしまった。15時に帰路に着く予定でいたが、さすがに4回ずつやると満足してきた。それに寒さもこたえる。
 13時過ぎ、下山を始める。登山道に戻ると、結構登山者がいる。南沢にも我々の後に人が入ったようだ。AXLのヘッドラが心配になってきた。「回りの枝に引っ掛けてくれるか赤岳山荘に届けてもらえればな〜、でも盗られちゃったかな〜」と思っていたら、ちゃんと枝に引っ掛けてくれているではないか。ありがたく回収させてもらう。14時、美濃戸到着。
 その後はゆっくりと下界へ移動。「もみの湯」で温泉に浸かり、「ペチカ」で食事を取り、「Aコープ」で食糧を買い込み、「ファミマ」脇の駐車場で車内宴会を開き、そのまま車中泊させていただいた。
 
  [3月27日(土)]
 4時起床。茅野市で−8度の最低気温予想が出ていたが、やはりかなり寒い。準備を済まして美濃戸に向かう。土曜日ということでさすがに車が並んでいた。ダウンを着込み、ヘッドラを点け、5時30分出発。今日はヘッドラを落とさないよう注意である。7時赤岳鉱泉着。天気はいいが風があり寒い。さらにAXLのおニュー春用ブーツがくるぶしに当たりちょっと傷む。休憩の後、阿弥陀岳への登山道をしばし進む。大同心稜の入り口を間違えて通り過ぎてしまった。踏み跡があるものと思い安心していたのだが、先週末から雪降りだったようで、踏み跡が無くなっていたのである。そもそもこの時期に大同心稜に入る人も少ないようだ。
 大同心稜をWKBが先頭でラッセル気味に登っていく。予定よりも時間が遅れ8時40分大同心取り付きに着いた。日がまだ当たらず風もあってかなり寒い。AXLはここまで皮手一枚で来たのがたたり、手がかじかんでしまった。揉んだり腕を回したりして回復を図る。 9時20分、ようやくスタートに踏み切った。前回とは違うルートに入ったが、ホールドが手袋でも持ちやすく、残置ハーケンもあり、安心して登っていける。とりあえず1ピッチ目を区切り、WKBの確保を行う。2ピッチ目は垂直部を乗り越すと後はリッジをぐいぐい進み、3ピッチ目取り付きにてビレー。ここはさらに風が強い。3ピッチ目は核心部でもある。前回WKBはここを登れずに退却している。今回はリベンジということで気合が入っているようだ。
 WKBはダウンを着込んでビレーを行い、AXLがスタート。途中からは完全にアブミを使った人工登攀となる。途中途中、バイルで岩に凍りついた雪を落としながら登っていく。終了点手前には残置スリングがあるのだが、風で上方に乗り掛かり届かない。ここでモタモタしてしまったが、バイルを岩に掛け何とかクリア。終了点に到着した。ここで手がまたかじかんだため回復を図り(何か弱くなってしまったのだろうか??)、ダウンを着込んでWKBに登ってこいの合図をした。WKBもかなり時間を掛けて登ってくると思っていたら、ロープがスムーズに流れていく。しかも下から鼻歌が流れてきた。(スポーツ選手がガムをかむような心境か??)。さすがに最後の登りにはてこずっているようだったので、バイルを使うようアドバイスをすると関門をクリアして上がってきた。WKB,リベンジ成功である。「ずいぶん早かったね!」と聞くと、「自宅でのイメトレが効きましたね」とのこと。落ち着いてアブミ操作ができた事が良かったようだ。大同心の頭まで登り、休憩。ここはなぜか風がなく、休憩にいい所であった。時間は12時45分。さてこれからどうしようと相談する。一旦下りて右フェースを登り返す予定でいたが、天候と時間から考えてちょっと厳しいようだ。ただ、他に小同心クラックに向かうという方法などもある。「気持ちいいまま終わりにしちゃってもいいけど」とWKB。AXLもこの寒さの中、さすがにもう1本やるパワーが出てこない。一番の目的としていた右フェースがやれず、不完全燃焼な感じでちょっと悔しいが、下ることにした。
 大同心ルンゼを登ってきた3人パーティーがそのまま横岳を目指しているのが見えた。ラッセルの苦労や雪崩の心配を考えると、よくやるなぁと思わされる。大同心稜を下っていると、硫黄岳の登山道と間違えて登ってきて引き返す2人組を追い抜いた。またしばらく行くと、人が見当たらないのに大きなザックが一つ置かれてあり、どう考えても意味が分からなかった。赤岳鉱泉では人口氷瀑が作られており、どうもそれを目的にここまで来る人もかなりいるようだ。ちょっと歩けば自然の氷瀑があるのにわざわざここでやる意味が分からないし、大自然の風景とのマッチングという意味でもこの施設はいかがなものかと個人的に思ってしまった。その他、先生に引率されて美濃戸口から赤岳鉱泉まで日帰りでピストンしていく高校生や、個人ガイドに連れられてやってくるおば様など、自分達とはちょっと感覚の違う方々に、「いろんな人達がいるなぁー」と、WKBとの夜のネタにさせてもらうこととなる。
 15時50分、美濃戸到着。また「もみの湯」にゆっくりと浸ってから、諏訪南ICで高速イン。結局その日は松代SAで3日連続となる車中泊を行い、翌朝小国に到着した。

南沢大滝は??
崩壊し、登攀不可能・・
WKB、南沢小滝にリードトライ
「ひざ、曲がっているよー!!」
摩利支天沢大滝は健在でした
いただきまーす!
最後のがんばり
WKBもトライ
先の折れた氷柱から
氷瀑の内側にて
ここからやるんすか?
やってみまーす!
ここを回り込み
何とか抜け出ました
遠くに大同心が見えてきました
ちょっと異質な(?)人工氷瀑
怖い物が近づいてきました
出発しちゃいました
1ピッチ終了点にて
WKBリベンジ間近に
歓喜の舞い
逆立ちの練習??
ここは天国でした