会員の山行 302号

【2013年12月30日〜2014年1月1日/南ア:鋸岳〜甲斐駒岳/吉田岳調査】

 甲斐駒ヶ岳から北西に伸びる鋸岳の稜線。南アルプスを代表する岩稜コースであるが、最近は標識や鎖などの整備が進み、夏季は比較的簡単に登られているようだ。冬季はバリエーションルートの入門コースとして特に年末はそれなりに人が入っているが、甲斐駒まで行かずに降りてしまうパーティーが多い。今回のパートナーはバリエーションルートデビューのSINちゃん。当初は黄蓮谷への継続を計画していたが、今年は積雪が多く更に雪崩事故もあり、そちらは諦めることにした。
 29日、福島経由で高速に入り、高崎、更埴を経て伊那へ。高遠の駐車場で車中泊。
 30日、4時半起床、コンビニで食料を買い足し、戸台へ。戸台の駐車場はほぼ満車状態の混みよう。北沢峠の山小屋が年末年始の間営業しているため、入る人が多いようだ。7時10分、出発。快晴。放射冷却のためかなり寒い。まずは戸台川沿いに進んで行く。前を歩いていたパーティーの一人が渡渉の飛び石で滑り、両足を濡らしてしまったようだ。ここで靴を濡らすのはちょっときつい。慎重に歩いていていく。
 9時40分、鋸岳への分岐の看板で休憩。鋸岳へのルートもトレースがついてある。しかしここから1,000m以上標高を上げなければならない。1時間300mのペースで登って行った。12時15分、岩小屋通過。確かにここは快適なテン場のようだったが、この時間で幕営ではもったいない。先に進む。15時30分、尾根近くの角兵衛沢のコルに到着。ここから先は岩稜となり、テン場スペースは無くなる。ここで幕営とした。風が強いが、サラサラの新雪でブロックなど作れない。石やピッケルでテントを固定した。
 31日、4時半起床。風が強いが行動できないほどではない。用意を整えて、7時半出発。まずは鋸岳山頂、第一高点へ。ここから甲斐駒までの稜線が見渡せるはずだったが、視界は100mほど。先がどうなっているか分からない。8時、小ギャップ。ロープを出すのが面倒だったので、固定の鎖で下降。しかしちょっと危なかった。やはりここは自分のロープを出すべき所だった。8時20分、名所の鹿窓通過。中岳を超えていくと大ギャップが現れた。右にトラバースすれば1回の懸垂で降りられるそうだが、下降支点がよく分からない。左側へ2回の懸垂下降でクリアした。さらに第二高点へ登り返し、中ノ川乗越へ降りていった。ここで鋸岳の登攀は終了。ここから戸台川へ降りていく下降のトレースが付いてあったが、我々はそのまま稜線を歩き甲斐駒へと向かう。11時30分、三ツ頭到着。風は強く、視界は悪い。SINちゃんも結構疲れているようだ。とりあえず、六合石室へ向かった。
 石室はきちんと新しく建て替えられていて、快適そうだった。ここに泊まって、明日山頂で御来光を見るという手もあったが、時間はまだ12時半。山頂を超えて、頑張れば北沢峠の長衛小屋で紅白見ながら一杯ひっかけられるかもしれない・・ということで、山頂を目指すことにした。すると、何と天気が回復して山頂が見えてきた。風もやや収まってきているようである。登っていくうちにますます天気は回復していった。やはり南アは相性がいい。ただ、山頂はさすがに高かった。騙しピークをいくつも超え、12時40分、とうとう甲斐駒山頂に到着した。奇跡的な好天である。八ツや北アの方は雲の中だが、ここから繋がる南アルプスの峰々や富士山が見渡せた。今年も無事山登りを続けられたことに感謝し、下山を始めた。
 ここからはトレースばっちりの一般道を下る。しかし、小松峰からは仙水峠へとトレースがついていて、双子山コースへは付いていない。理由は分からないが、近道である双子山コースを下っていった。しかしさすがにくたくたになってきた。長衛荘での紅白は諦め、樹林帯の条件がいい所で幕営することとした。ここまで来れば明日はもう安心である。
 1月1日、4時15分起床。上空でものすごい風の音がしている。テントから出ると、何と雪降りで既に10cm程の積雪があった。幕営の場所が良かったため風が当たらないが、今日の条件では山頂アタックはちょっと無理のようだ。御来光どころではない。これまたラッキー。ここまで来てほんとに良かった。朝食を摂り、帰り支度をして7時に出発。ラッセルに手こずりながらも9時に長衛荘着。せっかくなので、しばし中で休憩させてもらった。ここからはトレースを辿り、丹渓山荘、赤川原を経て13時戸台に到着した。
 山行に満足し、高遠さくらの湯に入り、伊那のローメンを食べ、帰宅の途についた。SINちゃんは次はどこに行こうかと、更なる山行意欲を掻き立てていた。
鋸岳方面
鋸岳への分岐
岩小屋
SINちゃんガンバ
角兵衛沢上部
角兵衛沢コルにて幕営
2日目強風の中出発準備
第一高点への登り
第一高点登頂
後チームは小ギャップ下降工作中
名所「鹿窓」
大ギャップ懸垂下降
中ノ川乗越への下り
甲斐駒が見えてきた
六合石室にて
岩尾根が続く
天気が回復してきた
鋸岳をバックに
いよいよ山頂へ
甲斐駒登頂(右奥北岳)
がんばりました
二人で
富士山がバッチリです
2日目幕営
はまるSINちゃん
長衛荘で読書にふける

おわり