登山者情報1041号

【2006年08月26-27日/石転ビ沢〜梶川尾根/木内茂雄・井上邦彦調査】

メンバー HZU, VCK, AQL
タイム
(8/26)飯豊山荘6:40〜6:58温身平〜7:32ウマイ水清水7:45〜8:20梶川出合8:30〜9:00石転び出合〜9:05右岸9:30〜10:12本石転び沢出合〜11:00黒滝直下11:15〜12:13梅花皮小屋
(8/27)梅花皮小屋11:50〜12:10北股岳〜12:55門内小屋〜13:30扇ノ地紙〜13:50ケルン〜13:56梶川峰〜10:18三本樺〜14:33五郎清水〜14:50滝見場15:00〜15:22湯沢峰〜16:20飯豊山荘 HZU/VCKは、16:31湯沢峰〜17:22天狗平
記 録
 久しぶりにホームグランドの飯豊に戻ってきた、と言うよりは梅花皮小屋の水場用水源地補修の為に集合をかけられて来た。
 山荘前でHZUのザックは35キロ位、VCKザックは30キロ弱、AQLのザックはズット軽いもので出発する。前者二人は何もない様な顔をして喋りながらスイスイ歩いて行く。そのままウマイ水清水まで1ピッチで行く、そして、また、ひたすら喋りながら歩いて行く。
 久しぶりに来て驚いたのは大雨で登山道の雰囲気が変わっていることで、少し見通しが良くなり、下ツブテ石がそのまま見えるし、梶川出合の手前は、無理すれば左岸沿いに歩けたが今は全く駄目でかなり高巻きしてから、梶川出合まで下る。
 花はニガナ、モミジカラマツ、タニジャコウソウ、ノリウツギ等を見かけるがもう終わりの感じだ。
 更に暑くなってきた中を先に進み、石転ビノ出合に着く。残雪が有るが一旦、門内沢に入って上流で雪渓を横断し、石転び沢に降りる。そして、沢を渡るがVCKは派手に片足を水に落とし、AQLも軽く片足を落としてから右岸に移り休憩する。ここで冷やしてきたモノで喉を潤す。
 その後、暫く夏道を登り雪渓の上に出る。今年は雪が多く雪の状況を見て歩けば危ない所は無く、ホン石転ビ沢出合の上で一度クレパスが有るが大したこと無くピッケルでステップを切って登る。一般登山者はこれを登らず、左岸に巻いて登っていた。雪渓は黒滝近くまで続いている。この頃には重い荷物を担ぐ前者二人に遅れをとる。年は取りたくないものだ。
※ 合流点下流の雪渓は数日前に半分崩壊し、一部スノーブリッジが架かっているが渡れる状態ではない。門内沢の雪渓も穴がさらに拡大しているので雪渓の左岸ぎりぎりを進み、沢が曲がる手前で雪渓を横断する。そのまま雪渓の右岸寄りを下るが、右岸に取り付く部分の厚さを確認する必要がある。右岸に取り付いたら慎重に足場を見定めて石転ビ沢に入る。石転ビ沢の渡渉地点は各自の状況判断による。今回、HZUは幾つかの転石を飛んで通過したが、VCKは着地した傾斜のある岩の濡れている部分に足の一部が触れたため滑ってしまった。背負っているザックの重さ、足場の苔や濡れ具合を見定め、さらには足裏全体を岩に貼りつける(スメアリング)感覚でジャンプすることがポイントである。靴を濡らしたVCKはスパイク地下足袋に履き替えた。
※ 渡渉後は石転ビ沢右岸の登山道に上がる。草がやや邪魔であるが、そのまま雪渓末端まで進む。雪渓の左岸側はズタズタになっている。右岸側の雪渓は浅いものの薄い部分があるので踏み抜かないように、枝沢の流れ等を充分に考慮して進み、安全な所で河床に降りる。河床を進み雪渓に突き当たった所で、右岸の草付きを登り雪渓に上がる。ここから先も左岸側は雪渓が崩壊中なので、真ん中もしくはやや右岸寄りに登る。縦の亀裂は左岸寄りを進む。左岸からの亀裂は雪渓の途中でなくなるので雪渓の真ん中を通過する。
※ ホン石転ビ沢対岸の枝沢の少し上流部に細い水場がある。ここで休憩。雪渓を直登すると完全に横断している大きな亀裂がある。先行していた登山者は左岸から亀裂を巻いていた。私達は亀裂の真ん中の段差が最も小さい箇所(石が数個亀裂に挟まっていた)を選び、ピッケルで数箇所足場をカッティングし、ピックを頭上に突き刺して突破した。
※ 北股沢出合直下の亀裂は左岸寄りでなくなっていたので、そのまま通過し、北股沢出合の清水で休憩を取った。その後、雪渓を横断している亀裂から雪渓に乗り、左岸を進み末端手前で雪渓の厚さを確認後、左岸に取り付きトラバースして踏み跡に出た。
 黒滝上から、廃道を登って中ノ島(草付キ)末端に直接取り付いた。先ずはシナノキンバイのお花畑を楽しみ、遠くにニッコウキスゲ、オタカラコウ、さらにはイワオウギ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンフウロ、ヤマハハコ、エゾシオガマ、モミジオカラマツ、ヒトツバヨモギ、ミヤマシシウド、アザミ、ハクサンボウフウ?等に目をやる。そして、もう一つの楽しみは、ノウゴウイチゴの甘い実を食べ元気づけられることだ。相変わらず二人に遅れをとりながらも梅花皮小屋に着く。
 小屋の周りはトリカブトが最盛期で、今年は特に紫鮮やかといった色に驚く、これは異常気象のせいだろうか。それから期待のイワインチンが丁度最盛期であり、タカネマツムシソウも負けていない。名残のハクサンイチゲを見かける。
一服後、みんなは水場補修に、私は小屋番をする。
※ 梅花皮小屋の水源は3箇所ある。以前から使用していた水場、故前田治二会員が見つけた水場、さらに奥の水場である。これらを纏めて「治二清水」と総称している。今回は好天が続いて一番奥の水場が涸れ、手前の水場も水位が低くなり、真ん中の清水だけが生きていた。このため登山者が使用する水場は利用できるが、トイレの水がなくなり一日50回の水搬送を余儀なくされていた。工事は石を水場に運ぶことから始まった。手前の水場の下流を堰き止める準備をした。さらに真ん中の水を水場とトイレの両方に切り替えることができる装置を取り付けた。登山者が水場を利用する時間には水場に引水し、登山者が就寝後にトイレに切り替え、登山者が起きる前に水場に戻すことにより、対応できるようにしたが、切り替えは源水地まで行く必要があり、管理人にとっては負担になる。
※ 翌日の工事は、手前の水場の下流に作った小さなダムの隙間に泥を詰めて完全に堰き止め、水場に流した。次に真ん中の水をトイレに流して、どちらにも水が流れるようにした。問題はこれらの装置が雪圧に耐えることができるかである。全員でザックに石を入れて何度も担ぐ。この石を積み上げて石垣を作り、小沢を埋めてパイプが壊れないようにした。
=以上はAQL記載(※はHZU)、以下はHZU記載=
 くたくたに疲れて管理棟に戻る。今晩の食料はQKGが上げてくれる段取りになっている。後は夕食だけが楽しみである。そうこうしていると無線が入った。なんとQKGは「石転ビノ出合まで来たが、体調不良のため引き換えした!」私達の後続で登って来て一緒に作業をしていたNIYを始め、一同顔を見合わせて茫然自失!
 仕方がない、VCKが担いできたOTJの熊肉にありあわせの食料を出し合って調理が始まった。それでも各自はアルコールだけは何故かザックに入っている。
 門内小屋管理人の石井さんも遊びに来てくれた。下越山岳会の若槻さんも交え、楽しい宴が始まった・・・。
 二日目も朝食後に水源地工事。一応の完成をみた。本日日帰り予定のQVHを無線で呼ぶもなかなか応答なし、何とか繋がった「昨日の運動会反省会で飲みすぎた。今日は中止!」QVHお前もか!皆怒りを通り越して諦めの雰囲気が漂う。仕方なくラーメンを煮て口に入れた瞬間「いや〜どうも」突然にQVHが巨大なザックを担いで現れた。
 QVHらしいおとぼけ!後ろからザックを支えて空身にさせ、ぎりぎりに冷えた缶ビールを差し出す。ザックを管理棟の床に置くと、VCKが素早く荷物の解体作業を始める。ここで期待を裏切らないのがQVH、レタス・しゃぶしゃぶ・しゃぶしゃぶのたれ・1升瓶のままの住吉樽平・・・、一瞬にして管理棟の暗い雰囲気が一変した。
 水源地を確認するQVHを残し、石転ビ沢を下るNIYと別れて、AQL・VCK・HZUは北股岳に向かう。山渓モニターのタイツに半ズボン姿のVCKを真ん中にして、前後からカメラマンがシャッターを切る。モニター用の写真撮影と知らない人が見たら、変態爺さん二人である。
 門内小屋で、宴会モードの下越山岳会の皆さんに追いつく。いつの間にか輪の中に入ってしまうHZU。ここで自転車を漕いでいた女性がトイレに閉じ込められるという事件が発生した。何らかの弾みでトイレの鍵が中から開かなくなることが、これまでも数回あったとのこと、管理人が不在になったこれから、単独行の女性は十二分に気をつける必要があるだろう。山の装置は単純なほど優れている。
 ともあれ先が気になるので、3人で出発した。梶川峰で標識を直す(業者が間違えて梶山峰となっていたので、彫刻刀を持参して訂正)。滝見場の手前でAQLと別れてVCKとHZUは藪に潜り込む。ザックには長いピッケルを固定しているので藪に四苦八苦しながら、目的のトビタケを発見!しかし既に色づいてしまっていた。頭上で下越山岳会の方々の声が聞こえる。
 登山道に戻り、VCKが持っていたお握りを1個ずつ頬張る。これで力をつけて、後は一気に天狗平に向かった。

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