登山者情報750号

【2003年09月15日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

前夜は結婚式で早々に飲み潰れてしまい、まだ暗いうちに目が覚めてしまった。何度か寝直したが、面倒とばかりに山準備を始めて自宅を出発する。藤田栄一宅で本日設置する「長坂清水」の標柱を車につける。想像以上に大きく、アイスバイル1本で立てることができるのか不安になる。天狗平手前で2度、子兎が車の前を横切る。天狗平の駐車場はほぼ満車、さすがに3連休である。ザックに標柱を入れるとずしりと荷重を感じる。
03:23ヘッドランプをつけて歩き出す。時折、ブナの梢の間から月が姿を現す。月夜に提灯と言う言葉がある。月が出ていれば林道ではランプを消しても充分歩けるが、本日は雲と隠れっこをしているのでそうもいかない。
03:40ライトの光に赤く光っているのは動物ではない、建設省の看板であり、反射材が反応しているのだ。ここは十字路となっており、左には長者原発電所取水口の電灯が見えている。右は梅花皮小屋に向かう石転ビ沢コースである。十字路を真直ぐに進んで梅花皮沢に架かる橋を渡る。登山道を見失わないように林道の右側に注意を払いながら歩く。暗闇の中、銀色の瞳が狼の群れのように無数に睨み付けている。近づいてみると笹の葉の裏側がライトの光を反射しているのだ。03:48登山道の入り口は比較的広く、すぐにそれと知れた。
山道に入ると露が足を濡らす。04:00桧山沢の吊:00桧山沢の吊橋を渡り、左手に巻くように進むと、いよいよダイグラ尾根の急登が始まる。今回は半ズボンに底薄ズックといういでたちなので、高い足場も難なくクリアしていく。見上げる急登は上部までライトが届かない。04:00岩場を通過し、痩せ部を過ぎ、04:17ホダワラ、04:18石楠花岩を通過し、04:36-50食事とする。この辺りでやや明るくなり始める。ここから、尾根右手の斜面を登り切ると傾斜が緩くなり、ライトを消す。05:00オ池ノ平の種蒔池を通過、僅かに登ると第1の目的地である。05:09-21「長坂清水」の標柱を立てる。道具はアイスバイルだけである。土を堀り、軍手をかけて掻き出す。標柱の頭を叩いて石で固定して作業を終える。
雨のカーテンが近づいてくる。ザックカバーをつける。05:44-45ついにカッパを着る。06:06休場ノ峰を休むことなく通り過ぎ、06:27-33食事、小雨になってきたのでカッパ(上だけ)を脱ぐ。寝不足だろうか体の動きは本調子でない。飛び跳ねるような咄嗟の反応が鈍い。06:42千本峰、ゴマナ・ダイモンジソウ・ウメバチソウ・オヤマリンドウが咲いている。07:03トラバースを終え、宝珠山の登りに取り掛かる。ミヤマセンキュウ・コゴメグサ・ミヤマアキノキリンソウが咲いている。07:17-26水場を探すため藪を漕ぐが、尾根を越えてみるとかなりの急斜面となっている。天候も悪い、単独での無理は禁物と中止。07:40から漸く本山小屋から下って来た登山者とすれ違い始める。夏と違いさすがに男性が多い。小屋はほぼ満員の状態であったそうだ。
07:46-51宝珠山ノ肩で食事。標柱は横に倒れている。08:06岩稜、08:28-30鞍部を通過して御前坂の登りに取り掛かる。ウラシマツツジが紅葉しており、イワウメやガンコウランの鮮やかな緑と対照的である。風が出てきたのでザックカバーをザックに縛り、カッパを着る。
09:08飯豊山々頂、寒いのでそうそうに御西小屋に向かう事とする。09:20駒形山々頂通過、手が凍え通過時間の文字が書けない。09:28-34弘法清水で水を汲み、服を着る。ここまでは下着1枚で対応してきた。草紅葉が色づき始めている。草月平の草々は花を終え、斑色となっている。10:01御西の標柱を通過、10:05-46御西小屋到着。誰もいない。長ズボンを履きラーメンを煮る。吾妻に登っているAQLと、自宅だろうかOTJと無線が繋がる。
11:00天狗岳を通過する。ウメバチソウ・ヤマハハコ・ハクサンボウフウ・キオン・ミヤマキンポウゲが咲いている。11:17天狗ノ庭付近からガスが切れ、視界が広がり始めた。アザミ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマセンキュウ・ハクサンボウフウ・ゴマナ・ウメバチソウ・ウサギキク・ミヤマキンポウゲ・モミジカラマツ・ヨツバシオガマ・ミヤマリンドウ・ハクサントリカブトが咲いている。ミネカエデが色づき始め、ミネザクラは紅葉している。11:46御手洗ノ池通過、ミヤマコウゾリナが咲いている。12:02亮平ノ池、殆ど水はない。12:28-35烏帽子岳山頂で自宅に電話しようとするが、携帯電話が繋がらない。GZKから気象情報を頂く。天候は回復傾向、2晩の管理業務を終えたODDは梶川尾根を下山中とのことである。雨であれば渡渉ができないので梶川尾根下山となるが、石転ビ沢を下ることができそうである。下り始めると梅花皮小屋が見えた。13:05-24梅花皮小屋でラーメンの残りのスープでお握りをお粥にする。今日の宿泊者は2名だけのようだ。
13:50北股沢出合の清水までは夏道を下る。雪渓に上がると流石に堅くなっており、底の磨り減ったズックで、慎重に下る。アイスバイルはピッケルと異なりシャフトが短く、ピックに角度が急なので勝手が違う。最大斜面の下部が異様に凹んでいる。注意しながら下るとやはり亀裂が入っている。左岸に上がり雪渓の様子を観察すると、右岸側が崩壊しそうであり、左岸まで亀裂が伸びている。左岸のガレ場を下るが、雪渓が嫌らしく覆い被さっているので、若干登りかえして恐る恐る雪渓に上がり、素早く危険地帯から遠ざかることとした。その下は左岸からの雪崩跡の盛り上がりにある枯草を利用して下る。ホン石転ビ沢出合すぐ上の右岸近くも嫌らしい感じだ。雪渓の観察から、ホン石転ビ沢出合のしたの状態も良くないと判断する。ODDからの無線によると、昨日この付近で登山者が親子熊を真近に見かけたとのことである。
14:14ホン石転ビ沢対岸(左岸)の枝沢に上がり、ガレ場を下る。予想通り右岸からの亀裂が左岸まで走っていた。その後は雪渓を下り、右岸から来る枝沢の川原に出る(左岸は崩壊中)。右岸の川原を下り、残雪を僅かに踏んで夏道に出る。夏道は背丈ほど伸びたオオイタドリに覆われている。不用意に足を出すと岩角にぶつけるので草を分けて踏み跡を確認しながら下る。ナツユキソウ?・サラシナショウマ・ミヤマセンキュウ・オクトリカブトが咲いている。途中から河床に下り、渡渉点を探す。渡渉点は常に変化しており、ここが良いということはない。問題は流れを飛び越え着地する場所が濡れていると滑って転倒の危険性があることだ。慎重に見定め、多少足を濡らして左岸に移る。次は門内沢の渡渉である。雪渓は渡れるような状況にはないが、雪渓の末端が合流点まで伸びている。雪渓の下を潜るのは極めて危険である。かろうじて雪渓に掛からないようにして、ここも少々足を濡らして門内沢左岸に移る。そのまま梅花皮沢の岩まで踏み跡を辿り。14:52-15:00石転ビノ出合で休憩、食事を摂る。ここまで来れば後は安心である。キバナアキギリやシソ科の植物が咲く中、勝手知ったる登山道を下る。蝮が出てくるが、道具もないのでそっとしておこう。梶川出合の渡渉は問題ない。15:31近大慰霊碑、16:00砂防ダム、16:09温身平十字路を経て、16:25天狗平駐車場に戻った。

写真