登山者情報1001号

【2006年05月15-16日/白滝〜小朝日岳/井上邦彦調査】

 小国町内にある基督教独立学園高等学校(通称KDG)では毎年この時期になると、生徒が企画して登山活動等を行っている。今年、私は小朝日岳班に同行することとした。
 5月15日朝、フラワー長井線終着の荒砥駅に行くと、昨夜駅脇の公園に幕営したメンバーが朝食を取っていた。映画スィングガールズが描かれた列車に高校生達が乗車し、残雪と新緑の葉山を背景に水の張られた水田の中を列車が走っていく。のどかでゆったりとした時間が流れていく。
 学園車とタクシーで移動する生徒達と共に朝日町立木へ向かう。集落を過ぎ、Asahi自然観との分岐にゲートが設けられ、工事関係車が止まっていた。看板を見ると「6月5日まで通行止め」とのことである。交通の邪魔にならないように対岸に車を止め、自転車とザックを車から降ろす。
 08:14自転車を曳きゲートから歩き出す。快晴の下、爽やかである。所々で道路の補修工事が行われていた。08:43-51休憩。歩くにつれ次第に暑くなり汗が噴出してくる。
 09:30-40木川ダム駐車場の水場で休憩、ここの水場には「沢水です」と書かれた看板が出ていた。顔を洗い、喉を潤す。頭から水を浴びている生徒もいた。10:02大規模林道分岐を通過し、10:20-17発電所を眼下にして休憩を取る。
 10:49傾いた白滝バス停小屋から右手の林道に入る。急な林道で高度を稼ぐ。倒木が道を塞ぎ、枝が散乱している。
 11:11-12:49林道終点に到着し、自転車をデポする。皆は石油ストーブを組み立て、ラーメンを煮始めた。沢の奥には白い山が見えている。
 高度計を600mにセットし、腹が膨れたところで歩き始める。林道終点から踏み板の敷かれた橋を渡り、すぐに木橋で本流の右岸に移ると夏道は雪に覆われていた。そのまま川岸を進み、藪を僅かに漕ぐと左から夏道が合わさり二つ目の木橋となる。この先は雪がなく、急坂を登って河岸段丘の林の中を進む。倒木を潜り、13:21-28休憩とする。
 斜面をへつるように登ると、13:40岩に「山ノ神」と掘られた小沢を過ぎる。急斜面のトラバースは道が崩れており、殆ど人の歩いた形跡はない、慎重に通過し、小沢に出る。小沢には雪が残っていたので、端を登り、13:50-14:00高度計930m広場で休憩を取る。
 すぐ上で先頭が直上しようとするので正規のルートを教える。ここからは地形図にあるとおり、ジグザグの急登が連続する。まだ人が歩いていないので、歩道に土や落ち葉が堆積し歩きにくい。何箇所か雪が出てくる。軽登山靴や長靴のサイドを利用して登るが次第におぼつかなくなったので、ピッケルを出し、部分的にカッティングを行う。
 地形図では登山道は途中から左にトラバースして、沢の左岸をジグザグに急登することになっているが、一面雪で覆われた斜面ではそのポイントが分からない。さらに左の沢筋の状態が分からないので、このまま尾根を直登する事とした。急斜面が続くので、14:30-40滑落しないようにブナの周囲の穴で休憩を取る。
 緊張と空腹で生徒の疲労が顕著になってきた。滑落に備えて最後尾とデフ布結びを三島に頼み、私は真ん中あたりに位置して登るが、次第に先頭に立つ生徒のカッティングや靴の蹴りこみ、ルート選択が甘くなってきたので、ピッケルを持っている生徒に「上の誰かや自分が滑ったら、ピッケルのシャフトを強く雪に差し込んで滑落を止める」ように指導し、私が先頭に立った。振り向くと青空の下、残雪と緑の峰々が輝いていた。
 15-13-23傾斜が緩くなりピークの藪で休憩を取る。皆、疲れきった様子である。それでも月山・蔵王連峰・障子ヶ岳などの大展望を眺め、先ほどとは比較にならない緩斜面を楽しみながら登ると、夏道が現れた。
 夏道から木道に入ると広い雪原が現れ、左手の高台に小屋が見えた。15:44鳥原小屋着、さっそく水場を確認すると、誰かが掘った穴があった。ポリタンを集め、テープに吊るしたポリタンを片足で沈めて水を汲んだ。
 予定では、明日全員で小朝日岳まで往復し、その後私だけ下山して、明後日に全員下山である。しかし、今日登って来たコースを安全に下山できるか、正直不安がある。朝日鉱泉に下る方法もあるが、こちらも私抜きで下れるか不安である。かといってさらに1日休暇を取ることも厳しい。三島・生徒のリーダーと3人で協議をし、明日早朝に小朝日岳を目指し、私と一緒に全員白滝に下ることとした。
 04:42鳥原小屋を出発する。雪は心配したほどには堅くなっていない。忠実に夏道を探し、04:57鳥原山々頂を通過し、05:00-13展望台で大朝日岳と小朝日岳を見上げる。昨夜作ったお握りを頬張りながら観察する。小朝日岳までの尾根は殆ど雪で覆われており、最上部のみが露出している。
 危険と判断したらその時点で引き返す覚悟を決め、石段を下り雪道に入る。ショートカットをせずに夏道を探して確実に進む。丁寧に探すと思った以上に藪の中に伐られた夏道が拾えた。05:47-54巻き道上端で休憩、最後の登りに取りかかる。
 06:08-07:22小朝日岳山頂に到着する。標柱は露出していたが、雪もあった。紅茶を沸かしている間、コンデンスミルクでカキ氷を楽しむ。
 慎重に下山を開始するが、生徒の歩き方を見ていると、ザックを背負っての急斜面の下降が不安になる。下り斜面を利用してキックステップの要領を指導する。08:16-30展望台で大朝日岳と小朝日岳に別れを告げる。
 08:40-09:32鳥原小屋でパッキングを行い、下山を開始する。下山は夏道を利用してみることとした。うまい具合に所々夏道が露出している。慣れている者だけなら昨日のコースの方が歩きやすくかつ早いが、夏道があると恐怖心が薄れてくれるので助かる。それでも下部では滑落に備えて緊張した場面があった。
 トラバース道を見つけて進むと、尾根の真ん中で夏道が全くなくなった。GPSで確認すると、昨日の往路まで来ている。コンパスを地形図に合わせて潜水艦航法を実施する。滑落に注意を払いながら下り始めると、昨日結んだ赤布が眼に入った。まだ完全ではないが生徒も雪に慣れてきている。慎重に下る。
 960mから夏道が出てきたが、所々の残雪の縁が堅くなっており、神経を使う。10:30-43標高840m、昨日休んだ広場に到着、此処まで来ればひと安心である。沢を渡り、へつって10:48山ノ神を通過する。
 11:19-27全員無事に林道終点に到着する。昼食を作る生徒達と別れ、私は自転車に乗る。11:34本道に出る。下り勾配なので自転車は殆ど漕ぐ必要がない。11:44大規模林道分岐を通過し、11:48-51木川ダム水場でお握りを1個食べる。12:05立木ゲートに到着し、車に自転車を積み込み、帰途に着いた。

今回のコース
白滝林道終点〜小朝日岳

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