【2008年04月05-06日/西俣尾根〜頼母木山〜梅花皮小屋〜石転ビ沢〜倉手山/井上邦彦】
川入荘の駐車場に車を止めて、05:43歩き出す。民宿奥川入の横山さんに挨拶し雪に上がる。左下にある小川のミズバショウが幾つか咲いていた。
05:58-02尾根の取り付きで、靴の具合を直し、服を脱ぐ。06:33-42主尾根に出た所で休憩を取る。登山道脇にはイワウチワ綻び始め、数輪が咲いていた。急になると雪斜面になり、07:12-32前回と同じ十文字ノ池の上で食事とした。
淡々と尾根を詰めていく、最後の急斜面で耳だけ黒いウサギが元気よくかけ登って行った。08:24尾根の分岐を通過し、08:34-34西俣ノ峰山頂に到着。稜線が見え隠れしている。
08:44カンジキを履く。09:40広い雪原を歩いていると、西俣ノ峰山頂に登山者が遠望できた(下山後に桃パパだと判明)。 09:40枯松峰を通過し、09:48-10:00最低鞍部から若干登って食事とした。
10:45-11:00森林限界(厳密には三匹穴にダケカンバ群集がある)で風に備えカッパを着てアイゼンを履く。今回は全体にルートを左寄りに取った。
12:11-15頼母木山々頂に到着する。LTQの報告通りにお地蔵様が倒れているが、海老の尻尾でどのような状態なのかよくは分らない。予想通りに風が強くなったが、心配したほどではない。記念写真を撮って早々に北峰に向い、12:30-38稜線を左に回り込んで風の少ない所で食事を取った。
風に耐えながら12:50地神北峰(標柱2本露出)を通過し、鞍部からトラバースして地神山を巻くことにした。なかなかの傾斜であるが、ハイジはピッケルを手にぴったりと付いてくる。緊張しながら雪庇の下を通過したところで稜線に上がると、不思議と風は穏やかになった。
13:46扇ノ地紙は標柱が露出しているが広場の方が高くなっている。風は問題ないが視界が薄くなってくる。雲の間に梅花皮小屋が見えた。
13:55胎内山の標石を通過すると、門内小屋が見えた。徐々に視界がなくなっていく。14:10-
14:23門内小屋に到着。新潟県側は一面えびの尻尾に覆われている。事前情報のとおりに夏出口左上に半分雪で覆われているある窓を壊さないように慎重に除雪すると開けることができた。中に入らないで覗いてみると真っ暗であった。
門内小屋を出発した時から視界は急速に失われていった。左に雪庇があることを確認していたのでまっすぐ登ると雪に覆われた祠があった。ここから感に任せて左折し、暫く行くと露出した石があったので方向に自信を持った。門内小屋の手前でおおよその雪の付き方は観察している。新潟県側の夏道は歩きにくい筈なので、雪庇の上を行くが、先の見えないせいか随分と長く感じる。時計を見ながら歩いた距離を想像する。
そろそろ雪庇に自信がなくなった段階で、右手に先端が露出している灌木群の中に入って登る。雪に覆われた灌木は下部が空間になっていた。傾斜などからそろそろだろうと思うが到着しない。瞬間的に右上方に大きな尾根が見えたので、これがオーイン尾根と見当を付ける。
15:36-43北股岳山頂に到着する。鳥居なども全てが雪に覆われ、視界は殆どない。ピッケルを出し、地図に磁石の方向を合わせる。いわゆる潜水艦航法である。片手でピッケル、もう片手に磁石を持ち、磁石の示す方角に向かう。最初は平坦地であるが、まもなく急傾斜になる。ここは一面が同じ傾斜で落ち込んでおり、左側に石転ビ沢に落ち込む雪庇がある筈だ。夏道は雪庇に覆われた場所にある。また雪面は風紋があるのみだ。視界は10mを切っている。左に寄れば雪庇の崩壊、右に寄れば梅花皮小屋を素通りして洗濯沢に入る。緊張を強いられるコース選択である。磁石が指す6m程度先の凹凸を目標に降り、そこでまた磁石で次の目標を探す。瞬間だが、すぐ左手にスカイライ状の境界が見えた。左に寄り過ぎた。数m右に寄り、そこから磁石で同じことを繰り返す。
ハイジはすぐ後ろに付いて来ている。万が一にも私が雪庇を踏み抜けば、残された彼女一人で小屋まで辿り着けるだろうか、辿り着いたとしても夜を明かして生還できるだろうか?そんな思いが走る。前方に岩が見えた。最悪の箇所を突破した証拠だ。あとは雪の吹き飛ばされた斜面を降れば良い。さらに洗濯平分岐の横になった標柱を確認、暫く進むと梅花皮小屋が現れた。
15:59梅花皮小屋に到着。早速管理棟の除雪を始める。ハイジも本棟冬期梯子に括り付けてあるスコップを持ってきた。心配していた管理棟内部の吹き込みは少なく、容易に開けることができた。ハイジに雪を融かしてお湯を作るように頼み、本棟に向かった。始めに梯子を登って冬期出入口を開けようとしたが、ノブが動かない。仕方なく夏出入口の除雪に取り掛かった。ひたすらに掘ってノブを動かして力を入れるとあっけなく開いた。こちらも吹き込みは殆どなかった。中に入って入口の除雪をする。
除雪が一段落するとトイレに行ってみた。蓋を開けると何時ものように底から雪が吹き込んで塞がっていた。靴で踏みつぶし使用できるようにした。その後、中から2階出入口に行く。吹きこみはないのだが、とにかく叩こうがお湯を掛けようがノブが動かず、開けることができない。17:13、2階冬期出入口は結局開けないまま、除雪を終了し管理棟に戻った。
一晩、小屋が唸りをあげた夜が明けると、素晴らしい快晴!朝食を取って再度冬期出入口に挑んだが、敗退。さて出発しようとした所で、管理棟の鍵が動かず四苦八苦。結局出発は06:54となった。北股岳の向こう側で人間が動いているようだ。
完全武装で石転ビ沢に入る。小屋から僅かに下った所にブロックが数個止まっていた。携帯電話でODDに鍵の件を連絡する。程よい潜り具合でハイジも快調に下る。07:17北股沢出合、この辺りは一面表層雪崩の跡で潜らず、むしろ歩きやすい。07:25ホン石転ビ沢出合通過すると雪崩跡がなくなり坪足になった。07:37-47アイゼンからカンジキに履き替える。
08:03石転ビ沢出合、沢の合流部が異常に低くなっているのが気になる。昨日入ったと思われる単独登山者のカンジキ跡が門内沢に向かっていた。北股岳直下に不思議なトラバース跡があった。カモシカなのか人間なのか最後まで判断できなかったが、帰宅後画像を拡大してみると、表層雪崩の発生ラインだと分かった。
08:21梶川出合を通過し、08:27-34地竹原で服を脱ぐ。婆マクレはかなり痛んでいる。そのまま雪渓を下り、08:45-50鈴木ヨウエモンさんと、下ツブテ石で会い立ち話をする。彼はスパイク長靴を履き、スキーを背負って林道を歩いてきたとの事、石転ビ沢スキー滑降とのことである。
下ツブテ石の下流から右岸に移る。さすがにここから下は雪渓に亀裂が入り通れない。ブナ林にはいると、気だるい感覚である。09:11砂防ダム前後は雪が嫌らしく残っている。09:29-39ブナ林の中で休憩しパンを食べる。ここからもとろとろとした歩きが続く。
天狗平ロッジを確認し、10:14-26天狗橋を渡った倉手ブナシズクで水の補給と登りに備えて食事を取る。林道を僅かに進んで右の斜面に取りつく。始めにキックステップで高度を稼ぐと尾根の夏道に出た。浮き石の多い足場の悪い道だ。11:08急な痩せ尾根を登りきって雪の上にでると、雑木林になる。11:34ここまで再びキックステップ、大展望を楽しみながらブナ林を登り、夏道となる。11:37-47夏道の終わりで食事を取り最後の登りに備える。12:16主尾根に出る。絶景!私達が石転ビ沢を下ってきたトレースが肉眼ではっきりと分かる。
12:50-13:00倉手山々頂には沢山の足跡が残っていたが、中でも1人はまだ時間もさほど立っていないようだ。眼前に酔いしれるような光景が展開しているが、ここまでの間に満喫したこともあり、そうそうに風のない所まで下山することにした。下りは結構潜る。また亀裂も多い。13:23-28崖上の露出している所で休憩し最後の食事を取る。
13:33分岐を通過し、カンジキを履く。夏道に関係なく下り、最後は夏道を避けて右手の沢を横断し、14:11車道に降り立つ。14:28梅花皮荘向いの赤い橋を渡り、14:32川入荘駐車場に無事下山した。
今回のコース |
![]() |
倉手山全景 |
十文字ノ池上から西俣ノ峰を仰ぐ |
動物の足跡が沢山 |
急登を終えて |
西俣ノ峰山頂 |
雪庇の亀裂 |
振り返ると枯松山が顔を出していた |
大雪原にて |
杁差岳が顔を見せ始めた |
枯松峰を目指す |
枯松峰山頂にて |
大ドミからブナ林を登る |
来たルートを見下ろす |
三匹穴に到着 |
風紋 |
アイゼンを効かせて登る |
杁差岳をバックに |
層をなす風紋 |
雲が幻想的 |
頼母木山々頂が見えた |
騙シの鞍部にて 古いトレースが残っていた |
頼母木山々頂に立つ |
風が強くなった |
壊れていたお地蔵様 |
頼母木小屋遠望 |
筆者 |
二王子岳方面 |
地神北峰 |
後方右の地神北峰から地神山をトラバースした |
途中から稜線に戻る |
二ツ峰方面 |
扇ノ地神にて |
梅花皮小屋が見えた |
門内小屋 |
海老の尻尾に覆われた門内小屋 |
2階の窓を除雪することにした |
窓を開けることに成功した |
小屋の内部は真っ暗だった |
北股岳山頂にて |
全てが雪に覆われていた |
ホワイトアウトの中、潜水艦航法で無事梅花皮小屋に到着 |
管理棟のハイジ |
先ずは管理棟を開けた |
こちらが本棟、2階の冬期出入り口は何としても開けることができなかった |
1階の入り口を除雪する |
中から見た入口 |
床を丁寧に除雪する |
今年も便器には雪がびっしり |