登山者情報1,292号

【2009年10月12日/砂沢-町境(分水嶺)-祝瓶山-直登コース-祝瓶山荘/井上邦彦調査】

 祝瓶山の南側は見るからに峻嶮である。しかしここを通過しなければ小国町一周はあり得ない。登るのは無雪期と決めていたが、真夏の暑さは考えるだけでうんざりする。やはりこの時期、コースは木地山ダムの上端で渡渉の可能な場所、すなわち砂沢(スナザ)から入り、適当な尾根に取り付いて分水嶺(町境)に出る。下りは最短コースの登山道で戻ると以前からチャンスを窺っていた。
 三連休の最終日、天気予報は十分。心配した足の様子も前日の大境山で確認した。05:00自宅発。この時、シャッターを閉めようとしたら紐が切れた、いやな予感がするが無視。コンビニでお握りを買うが鶏肉・卵を気にせず登れる朝日は気が楽である。
 長井ダムの関係でできた道は快適だが、三体山登山口から道は従来の細く狭くなる。カーナビに示されるダム湖と25,000図を見比べながら進み。杉の伐採地で車を止める。
 06:35一端出発するが、すぐ忘れ物に気付いてザックを置いて車に戻る。ところがザックをどこに置いて来たのか分からなくなり右往左往、06:45ようやくザックを見つけて仕切り直しである。
 本流に降り、ズボンと地下足袋を脱いで渡渉、06:56対岸に着いたと思い身支度を整えたらなんとそこは中州だった。あちこちさがして今度は飛び石で渡る。
 ようやく本当の対岸に着くと、いきなりネマガリダケの洗礼を受けた。さらに蔓が密生している場所を抜けると萱野となった。視界が効かないので高い木を目指してひたすら藪を漕ぎ、尾根を巻くように進むと07:08車道に出た。思わずあっけにとられる。
 さらに07:10右から素晴らしい道が合流、一瞬不安になり地図を読む(私の持っていた古い地形図にはこの林道が掲載されていなかった)。本流の左岸にしか祝瓶山荘に行く道はない筈である。ともあれ林道を進んでみることとした。07:22林道終点となる。地形図ではこの付近で沢が二つに分かれているようだ。
 林道正面に隠し道を見つけたので、道を遡って行く。道はほどなく消えた。谷地は歩きたくないので沢沿いに進んでいくが、07:31藪が酷いので沢をこざくことにした。
 平坦な川が続き所によっては踏み跡のような部分もある。日常的に人が入っているのだろう。時折足元から岩魚が走る
 97:47沢の分岐になる。左に行くと渓相は極めておだやかで河床には砂が多い。登山道を歩くのと大差ない感じで歩けた。
 07:54少し廊下のようになってきた。滝があったので無理をしないで左岸を高巻いた。08:10再び滝が出てくる。簡単な所はフリーで登るがスパイク地下足袋なので滑りやすい。08:15滝壺が深そうな滝を左岸を巻いた時に分水嶺(町境)が見えた。正面は見るからに壁が連なっている。
 08:23-32大滝に出る。両岸とも滝の近くは登れそうもない。この先は水がないものとして食事にする。
 元気が出た所で、大滝手前の右岸に取り付く。最初は灌木を掴んで登って尾根に出れば、あとはそれほどのことはない。08:53鉈目を見つける、人の痕があったのはここだけである。09:19-32見晴らしの良い所で食事とし、写真撮影。携帯が通じ始める。
 10:11町境に出た。1,037m峰の頂はすごい藪で足を取られるが、藪に登って写真を撮る。西側(小国側)に貧弱だがブナ林がある行ってみるとブナハリタケが密生しムキタケもある。しかしこれから先を考えると、とても荷物を増やす気にはなれない。
 身長を遥かに超すネマガリダケ、時折蔓に悩まされながら進む。分水嶺そのものはとても通れたものではない。やや西側を進んで行く。11:00-10休憩していると、梅花皮小屋のODDと無線がつながった。
 1,131m峰を越すと、藪は一段と酷くなる。12:18最低鞍部を通過し、いよいよ登りである。見上げれば壁のように立ち塞がってくる。頭からのしかかってくる絡み合った灌木の弱点を探すが、そうそう楽には登らせてくれない。自然に灌木との力比べとなるが、枯れ木を掴んだら最後である。慎重に枝を選んで高度を上げて行く。下を振り返ると、結構な高度感になっている。
 12:30ザックが置ける場所でウィダインを補給する。空腹ではこの先とても持ちそうにない。右が岩壁になっている鋭峰に到達したが、待っていたのは背こそ低いが複雑に絡みつく蔓帯であった。13:28最後の蔓帯を突破し、課題の草付きに入る。
 しかし適当に灌木のある草付きは想像を覆し、スムーズに通過できた。これで山頂かと思ったが、なかなかそうはいかない。最後の藪が延々と続く。人の声がしてきた。山頂らしい。
 13:51-14:20ついに祝瓶山々頂に到着!登山者がふたり下山の準備をしていた。下を見ると大勢の登山者が下山中である。大朝日小屋から祝瓶山を経由して下山中とのことである。 
 写真撮影をお願いして、一人山頂に残る。大展望と、コンビニで買ってきたサラダを入れた野菜ラーメンを楽しむ。
 下りは最短コースである。下山を始めるといきなり岩場になっている。黄色いロープと赤ペンキがないとルートが分からない程だが、沢山の足跡がある。思えばこのルートは登りに使ったことはあるが、下りは始めてかもしれない。ここの下山はとてもお勧めできない。途中から左にトラバースし尾根上に出る。この尾根がまた一直線の急降下である。
 15:02、830mからブナ林になる。ここからブナの斜面をジグザグに下るのだが、桑住平までの登山道は25,000地形図と全く異なった場所を通っているので注意して欲しい。
 15:13平坦地まで降りて沢を渡り、15:15もう一度沢を渡る。ブナ林の中に焚き火跡のある幕営地のような広場があり、広場の先でロープのある沢を渡ると、15:18赤鼻から下ってくる登山道との分岐に到着した。
 その後は沢沿いにたんたんと進み、杉林が見えると15:35ヌルマタ沢の看板で野川本流道と合流、この先は車道に近い広い道となる。13:42吊り橋には「11月7日に足場板を取り外す」と書かれた紙が下がっていた。
 15:50祝瓶山荘に到着。駐車場にあるのは公衆電話ボックスを再利用した登山届所なので電話と間違わないこと。ここには建物が4軒あり、既に2軒が雪囲いされていた。もう1県は長井山岳会が管理する元祖?祝瓶山荘である。その奥に風車とソーラーが並んでいる最新型の建物があるが、これは長井ダム関連の施設だそうである。
 15:53右側に立派な林道を分け、16:17砂沢に入る専用林道分岐を過ぎて、16:19車に到着した。

今回のコース
祝瓶山々頂付近 山頂から一度南に下ってトラバースしている
桑住平周辺  国土地理院の歩道が大きく誤っている
最初に渡渉した場所
ここをズボンを脱ぎ裸足で渡った
林道の途中に「砂沢歩道」の標識があった
林道の終点
まっすぐに進むと踏み跡があった
面倒なので沢を詰めることにした
滝が出てきた 軽く左岸を巻く
歩道と同じ感覚で進めた
河床は砂が多くい 砂沢の言われだろうか?
沢が細くなった
丁寧に登れば問題はない
そのままフリーで登る
ここは滝壺に入るのが嫌なので左岸を巻いた
巻く途中で町境(分水嶺)が見えた 壁が連なっている感じだ
廊下が続く
大滝となる ここで沢から外れることとした
唯一の人為的痕跡「鉈目」
尾根の後ろに祝瓶山が見える
色づき始めた山稜
遠くは三体山方面
大玉山から葉山に向かう山稜
祝瓶山荘から中沢峰に向かう山稜
山頂が次第に顔を出してくる
分水嶺の1,037m峰が見えた
色づいたミヤマナラ

続く⇒