登山者情報1,333号

【2010年04月03-04日/西俣尾根〜石転ビ沢〜倉手山/井上邦彦調査】

 3月下旬の3連休に、西俣尾根から梅花皮小屋を目指す計画をしていたが、天気予報のあまりの厳しさに中止したため、今回はそのリベンジを目指した。
 今回も予報は目まぐるしく変わり、晴れマークが出てきたものの、正午頃から風が強くなるとのこと。一日で梅花皮小屋を目指すが、門内小屋泊も念頭において装備を整えた。
 03:35自宅発、コンビニで食料を買い込み、梅花皮荘駐車場に車を置いて、04:32歩き始める。奥川入から先はスノーモービルの跡を辿り、登山道手前からキックステップで斜登し、05:00岩場下で枝尾根に上がった。
 ここからは殆どが夏道であるが、時折変な形で雪が残っている。久しぶりの泊まり参考なので荷が重く感じる。
 05:25大曲で主尾根に出る。05:28-38食事を取るが、食欲はない。05:46倉手山の北側から太陽が昇った。程なく雪が出てきて06:15-19十文字ノ池でワカンを履く。
 06:46-55食事を取りサングラスを着用する。急登を登りきって、07:18左から大きな尾根が合流し、07:31-36西俣ノ峰山頂に到着した。先日の黄砂以後に降った雪が全てを覆いつくし、山々は白く輝いている。
 杁差岳を眺めながら雪道を辿る。08:04-07食事を取り、クランポンを履く。枯松峰手前の大雪原は何時もながら雄大ですがすがしい、等と思いに耽りながら歩いていると、新雪に隠された亀裂を踏み抜いてしまった。落ちるとクランポンの爪が痛い。
 08:54枯松峰山頂は巻くようにブナ林の脇を通る。これから登る頼母木山と正面から対じする。飯豊山上空に雲が現れる。
 下りは雪庇が落ちている箇所もあり、丁寧にルートを選択する。09:05鞍部を通過する。無風快晴!少々汗ばみ、雪が腐って坪足となりクランポンに雪が付着する。09:17-35食事を取る。
 09:50オオドミから登りに取り掛かる。ここまで来るとブナやダケカンバの枝は霧氷で覆われている。10:26ブナ林限界を越える。見上げるといつの間にか上空は曇り空に変わっていた。
 10:34三匹穴に到着する。何時も深くえぐれている沢筋が埋まっている!風が出てきたのでカッパを着る。その間にも次第に風が勢いを増してきた。
 再び登り始めると、視界が殆どなくなり、風が強くなる。風の呼吸を利用しながら高度を上げて行く。何時もは途中から左にトラバースする場所を過ぎてしまい、騙シ峰(仮称)まで登ってしまった。ここで方向を変え、11:43騙シ峰を越えた鞍部を過ぎる。風はさらに強くなって行く。
 11:58頼母木山々頂に到着するが、強風のため、まともに立っているのが難しい。座り込んでメールを打ち送信しようとするが、送信できない。携帯電話が凍り付いてきた。
 素直に門内小屋を諦め、頼母木小屋に向かうこととする。若干下ると風速はさほどでもなくなったが、時折強くなる。携帯電話は圏外のままである。本来なら地図とコンパスを利用して下るところだが、西側に露出している潅木の頭を確認しながら進む。何回か明らかな夏道があったので、安心して下る。
 12:16頼母木小屋に着く。今年は入り口にあまり雪がない。ドアの鍵を縦にし、力を入れると容易にドアが開いた。荷物を中に入れ、入り口の除雪をすると共に、炊事用に汚れていない雪を確保する。
 無線でコールすると、ODDが出てくれたので、自宅への伝言をお願いする。町中心部でも雨風となったようだ。僅かのアルコールをいただき、寝袋の中に入っていると、吹き荒ぶ音だけでなく、小屋が震えている。
 翌朝、04:00に起床。風の音は収まったようだ。食事を取り、ドアを開けると夜明け直前の素晴らしい光景!
 05:10完全装備で頼母木小屋発。クランポンが小気味良い。振り返ると杁差岳が赤く燃えていた。
 05:40頼母木山々頂、06:24地神北峰、06:42地神山を通過する。写真を撮るために手袋を外すと、痺れるように痛い。
 07:21扇ノ地紙、07:38胎内山を通過し、07:59-08:10門内小屋に到着。昨秋修繕した外壁は完璧のようだ。しかし東にある冬季出入口の窓(二階)を見て唖然とする。窓が10cmほど開いている!窓に手を掛けると簡単に外れてきた。小屋の中はびっしりと雪に埋もれているではないか!食事をしながら、もし昨日頑張ってここまで来ていたらと思うと冷や汗が流れた。
 09:30北股岳山頂からは、御西小屋も遠望できた。視界が効くので、安心して小屋まで下れる。
 09:48-11:04梅花皮小屋に到着。早速、入口を確認する。本棟の二階、冬季出入口はドアノブが動かない。凍り付いているようだが、梯子の上段では力が思うように入らない。一階の夏玄関を多少掘り、力を掛けるとドアノブが動いた。あとは登山靴で鉄製のドアを蹴って開くことができた。中から確認すると、二階出入口に雪は全く吹き込んでいない。気温が上がれば容易に開くことだろう。
 丁寧に雪を取り除かないと、ドアは閉まらないので、利用後は確実に閉めてドアノブを元に戻して欲しい。稜線ではまだ吹雪くので、中途半端に閉めると雪が入り込み、ドアが開かなくなる恐れがある。ドアが接する場所の雪や氷を丁寧に取り除かないと閉まらないので注意して欲しい。
 その後に管理人室のドアを開け、食事をしてから下山をすることとした。最初はクランポンが効いたが、途中から新雪が小さな雪崩状に落ちていく。このような時は、横切ることなく一直線に下ると一番リスクが少ない。
 下るにつれて雪が深くなり膝までに達した。11:25-32北股沢出合でスノーシューに履き替えた。登山靴の踵をおく部分に雪が溜まると、傾斜が増した状態になって歩きにくい。雪を払いながら下る。
 北股岳から新しい点発生雪崩跡があったが、さほど危険性は感じられなかった。北股沢出合からホン石転ビ沢出合にかけて雪崩跡が広がっており、その上に新雪が堆積していた。ホン石転ビ沢出合下を境に新雪の量が著しく少なくなる。
 12:22石転ビノ出合を通過する。幸七ノ尾根末端の台地と雪渓の段差が大きく、雪が少ないことを示していた。
 12:45-49梶川出合で一息いれるが、出合のすぐ上の水場(左岸)は既に露出していた。地竹原の途中で雪渓が途切れる。最後に地竹原に上がり、地竹沢から左岸をへつるが、黄砂色した旧雪の上に積もった新雪が滑り出すので、婆マクレの途中で坪足になり、13:18彦右衛門ノ平に上がる。
 そのまま坪足で進み、雪崩斜面を下ツブテ石まで下り、スノーシューを履いて、雪崩で盛り上がった部分を進み、左岸に戻った。
 14:02-11ブナ林の中で、食事を取り、14:22坪足で砂防ダムを越えて再びスノーシューを履き、温身平を歩き、14:59曲リ沢通過する。
 15:13湯沢まできたら、複数のワカン跡があった。天狗平ロッジに異常がないことを確認し、天狗橋を渡る。
 橋の袂の清水が埋まっていたので、坪足でジャンプしたら簡単に穴が開いた。15:31-44新鮮な清水に喉を潤し、食事を取る。
 ワカン跡に「もしかして林道沿いにも下れるかも」という誘惑があったが、ここから先、林道には一人分のトレースしかない。観察すると清水から真っ直ぐに登った跡がある。倉手山に登るにはもう少し林道を下ってから取り付くのであるが、身体が相当疲れてきたこともあり、トレースを使わせていただくことにした。
 足跡は急な斜面をジグザグに登り、雪の先端から下っている。正面の崖を避けたようである。面倒なので両手で柴を掴み、力任せに崖を越えると、夏道に出た。そのまま夏道を登り、16:12-16雪が出た所でストックからアイスアックスに替える。雪には先ほどのパーティと思われる足跡があった。さらに夏道となり、16:25夏道がなくなり雪道となる。
 キックステップで彼らの跡を辿るが、17:00-05休憩とし汲んできた水を飲む。空腹だが、ザックの中にはアルファ米があるだけだ。
 17:33主稜に出ると、陽は飯豊連峰主稜に沈む寸前である。急激に気温が低くなっていく。私物缶に非常食があることを思い出し、17:51-56カロリーメイトを食べた。こんなに美味に感じたのは始めてである。
 ようやく携帯電話のアンテナが立ったので、自宅に遅くなる旨をメールする。18:16倉手山々頂を通過する。ここからこれまでと違う数人の足跡があった。ここまで往復のパーティだろう。
 念のためアックスを出して急な斜面を下る。トレースがあるので助かる。18:44分岐を通過すると、暗くなってきたが、そのまま下り、19:02ライトを点けた。
 トレースが夏道ではなく北の尾根に入っていることに気付いたが、構わずに下り、19:18林道に出た。後は林道から赤い橋を渡り、梅花皮荘の裏に出て、19:44車に戻って今回の山行を終えた。

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出発→頼母木山

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頼母木小屋→梅花皮小屋

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石転ビ沢→倉手山