登山者情報 1,470号

【2011年07月30日/梅花皮小屋〜ダイグラ尾根/井上邦彦調査】 

 夜は御幣松尾根上部の道刈りをするAXL、小屋管理人のOtJと3人で情報交換となった。翌日は一面の雲海である。打ち合わせ通り、下では梅花皮沢全域の河床を捜索する筈である。
 私は昨夜OTJから聞いた本棟の冬期出入口の確認を行った。山小屋の設計は、登山経験のない設計者が現場を知らないまま(完成検査まで一度も来ない例もある)行が、関係者は細部の設計のチェックまではできていないのが現状である。
 梅花皮小屋本棟の1階と2階の扉は二重構造の鉄でできており、開け閉めがなかなかできにくい。様々観察した結果、ドアノブはサイドと上下の3カ所が固定される方式であり、扉と周囲の間や下の穴に僅かな土や氷、ズレがあると閉じることができない構造になっている。登山者は土等の付いた登山靴で歩いているので、毎回指などで丁寧に取り除かなければならない。このため上下に突き出る棒を切断してみたのだが、うまくいかない。さらに長い間に扉が少し変形してきているため、よほど力を入れないと閉じることができない。特に外側から閉める場合はノブだけを引いて閉めることになるので、中高年の女性にはかなり厳しいのが実態である。
 以上は閉じる時の問題だが、冬期は開けることが大問題になる。登山者が出発する時にしっかりと閉じないと、ほんの僅かな隙間から雪が風除室に入り込んで吹き溜まりとなり、内開きの扉なので開かなくなる。このため、毎年4月始めの除雪に四苦八苦している。
 この時に、何故か2階の扉が開いたことがない。風除室には全く吹き込んでなく、中から力を込めてもノブが動かない。まして外から開けようとした場合は不安定な梯子での作業であり、不可能な状態である。ところが5月連休頃には平気で開くようになる。上下を切断しても同様であった。今冬においては、小屋の前でビバークを余儀なくされ、遭難直前に陥ったパーティがいるとも聞いている。
 どうらや鉄板の内部構造に問題がありそうなのだが、手作業ではどうしようもない厚さである。そこで前回、電動ドリルを人力で荷上げし、内側から水抜きの穴を開けてみたので、今回はその成果を確認してみた。小さな穴を開けた結果、内部からグラスファイバーのような断熱材が出てきた。ここから推定できるのは、ドアノブを止めているネジ等の微少な隙間から水蒸気が進入し、それらが水に変わって上下の棒に接している断熱材に付着し、凍り付いてしまっていることである。そこで、今回は何カ所かの穴を開け、下の棒に接している断熱材を除去してみた。冬にならないと効果のほどは分からないが、成功を期待している。
 06:27AXLと一緒に出発する。06:56梅花皮岳通過、県警ヘリが捜索のため飛び回り、呼び掛けを行っている。ハクサンフウロ・クルマユリ・ミヤマキンポウゲ・イイデリンドウ・ムカゴトラノオ・タカネアオヤギソウ・シラネニンジン・ニッコウキスゲ・ミヤマコウゾリナ・ヤマハハコ・ヨツバシオガマが咲き乱れ、タカネマツムシソウは咲き始め、ミヤマウスユキソウ・チシマギキョウ・ハクサンシャクナゲは末になっている。
 07:14-20烏帽子岳山頂で山口さんとばったり。登山道が雪で覆われていたのは1箇所だけとなったので、赤旗を回収する。滑落危険個所をのぞき込む、視界は十分あるが手掛かりは見つからない。
 08:15旧道から天狗ノ庭の保全作業施工地に入り、写真を撮る。この先、タカネマツムシソウ・ハクサンシャジン・ミヤマアキノキリンソウ・ニッコウキスゲ・トモエシオガマ・キオン・タカネアオヤギソウ・ヤマハハコ・イワオウギ等が咲き、天狗岳を過ぎるとハクサンイチゲ・チングルマ・ヨツバシオガマ・イワカガミ・ハクサンボウフウ・アオノツガザクラ・クチバシシオガマ・コバイケイソウ・ニッコウキスゲに変わる。
 天狗岳から鞍部に下る部分も、施工が必要な箇所であることを再確認し、施工箇所の状態を撮影しながら09:46-10:50雲に覆われた御西小屋に到着した。早速道刈りの準備を始めるAXLを後目に、食事を取り、松葉さんと行方不明者の情報交換を行うが、話は山小屋の現状・課題、登山者の動向等多方面に及び、つい長居をしてしまう。
ミヤマキンポウゲ・ヨツバシオガマ・ミヤマアキノキリンソウ・ハクサンフウロ・ニッコウキスゲ・ムカゴトラノオ・ミヤマウスユキソウ・タカネマツムシソウ・コゴメグサ・ミヤマホツツジ・ミヤマコウゾリナ・ハクサンボウフウに包まれて歩を進め、11:25-27ようやく露出した弘法清水で水を補給する。玄山道分岐付近の施工箇所は、さすがにしっかりとした石組みである。下流部ほど土砂が堆積していないのは、登山道上流部からの供給が絶たれている証拠だろう。
 12:20飯豊山々頂に到着する。ダイグラ尾根分岐の標注が縦にまっぷたつになっていた。そのままイイデリンドウの咲く道を進むと、本山小屋脇で管理人の高橋さんと会った。12:30-13:08二人で小屋に行き、行方不明者の情報交換を行う。やはりここでも話の種は尽きないが、下山の時刻が気になってきた。13:18飯豊山から下山を開始する。相変わらず雲の中である。草むらに転落跡がないか確認しながら下り、14:23-33宝珠山岩稜で食事を取る。14:52宝珠山の肩を通過する。ダイグラ尾根の登山道は全て残雪がなくなった。16:00千本峰を通過し、16:34-51休場ノ峰で食事を取り、自宅に遅くなる旨のメールを送信する。17:20長坂清水の標識を直し、17:32種蒔の池を通過する。17:53-58岩が濡れているせいか多少バランスが取りにくくなってきたので休憩し水分を補給する。年齢のせいか無理がきかなくなっているように思えるので、のんびり下ることにする。
 18:15桧山沢の吊り橋を渡ると、メジロアブ(コシジロアブ)がまとわりつき始めた。勝手に手の中に入って握り潰されたり、髪の毛でもがいているのもいる。ザックと背中の間に入って食いつくものがいて踊るはめになった。18:34温身平十字路で自転車を回収し、アブから逃れるように湯沢ゲートまで戻った。その後、天狗平ロッジに顔を出し、情報を確認し、携帯電話で小国警察署に連絡、帰宅した。
雲海
北股岳を振り返る
AXLと一緒に御西小屋に向かう
梅花皮岳山頂
振り返る
ホン石転ビ沢を覗く
梅花皮岳山頂
御西小屋方面は滝雲に覆われている
これから辿る稜線
残雪の状況
亮平ノ池
ツアー一行だろうか
御手洗ノ池
残雪の上はここだけ 向う側の登山道が低い
天狗の庭に向かう
残雪は小さくなって登山道が露出した
この残雪も間もなく消えるだろう
天狗ノ庭
タカネマツムシソウ
この場所の植生は興味深い
クロヅル
キオン
タカネアオヤギソウ
チングルマとイワカガミ
天狗岳から下る部分は保全作業が必要だろう
御西小屋
分岐の標柱
緑化ネット
AXLと松葉さん
御西小屋水場への道
ヨツバシオガマ
御西
登山道が拡幅している
登山道拡幅の原因
雨水が滴って土を浸食
空洞に植物が崩落
登山道から見た地糖
登山道から流入した砂礫で埋まっている
ニッコウキスゲ
登山道の水による浸食
複線化した所にネットを貼った
広くなった登山道
クチバシシオガマ(ヨツバシオガマ)
草月平
ナンブタカネアザミ

続く ⇒