登山者情報1,491号

【2011年09月04日/梶川尾根〜梅花皮小屋(遭難救助)/井上邦彦調査】
 3日新潟の男性が予定を過ぎても帰宅しないと家族から相談があった旨、連絡があった。小国警察署で調査すると、天狗平に本人の車はあるが登山届けはなかった。コースが分からないので、登山者カードから抽出した登山者に情報提供を求める電話を掛けていた。
 そうこうしている内に、同行者となのる女性が、梅花皮小屋で動けなくなっていると下山して報告してきた。どうやら1日にダイグラ尾根を登り体調を崩してビバーク、2日本山小屋で仮眠後に梅花皮小屋に向かい、そこで力が尽きたのか宿泊し、3日に女性1人が下山してきたようである。
 直ちにヘリがフライトしたが、悪天に阻まれた。幸いにして4日は晴れそうである。小屋にいるということ、食料もあるということなのでもう一晩過ごしてもらい、4日に救助に向かうこととした。
 そうはいうものの山の天気はどうなるか分からない。他は晴れていても、特定の場所が雲に覆われて救出できないことが珍しくない。現場から気象情報を提供すること、4日にヘリ搬送ができない場合は、管理棟に収容して介抱しさらにヘリ待機ができるように段取りをするために、地上隊を派遣することにした。山麓からも山の積雪が確認されているので、雪山でも動けるメンバーで、最悪の場合はそのまま山上に宿泊できる者という条件で隊員を選定した。
 05:40湯沢ゲートにGCS・LFD・EHJ・HZUが集合した。まだ連絡は取れていないが、3日梅花皮小屋に宿泊し丸森尾根を下ってくるMGパーティのこと、彼女が下るなら丸森尾根と彼に言い残し、自分も丸森尾根を下ってきたということを考えると、丸森経由で梅花皮小屋に向かうことも選択肢に入るが、航空隊に気象情報を送るには梅花皮小屋が見える梶川尾根が良いと判断した。
 05:52登り始める。06:20楢ノ木曲リを通過し、06:59-05湯沢峰で一息入れる。一見快晴なのに、烏帽子岳から北の稜線は雲に覆われている。夜明けと共に第一回のフライトは失敗に終わったようだ。
 07:31-47滝見場に着く頃には天候がやや下る。中ノ島(草付キ)最上部から上だけが雲に隠れている。08:19-27五郎清水、雨がぱらついてきた。雲に動きがあってなかなか思うようには行かない。下ってきたMGパーティから話を聞くと、「3日に梅花皮小屋を通過した時に、寝袋に入っている人がいた。会話はしなかったが生きてはいた。私達は門内小屋に宿泊したのでそれ以上分からない。」とのことであった。さらに登ると単独の方が降りてきた。やはり門内小屋泊りとのことで情報はない。
 08:49晴れてくる、08:53三本カンバで雪を踏む。中ノ島(草付キ)の中間から下は晴れた。
 09:08梅花皮小屋が薄く見えてきたことを報告する。09:12ヘリがフライトを始める。ヘリは何度もアタックするが、雲の状態が今一つ悪い。09:21-23梶川峰で休憩する。ヘリはいったん樽口峠に着陸し、梅花皮小屋に向かうチャンスを伺っている。我々もこれ以上進むと梅花皮小屋が見えなくなるので悩むところである。開き直って、雪が積もった紅葉の写真を楽しむ。雲が薄くなりヘリが再度近づいた瞬間に視界がなくなり、そのまま立ち去る。
 10:32扇ノ地紙、新潟東港は見えるが、ギルダ原から南は雲の中。PWDから携帯に「本人をピックアップした場合、彼の荷物を回収して欲しい。」との連絡が入る。どうやら梅花皮小屋までどうしても行かなければならないようだ。
 10:54門内岳を通過してギルダ原に入ると、雲が薄くなりはじめ期待を抱かせる。鞍部から登りになると、新潟県側になるので、携帯電話も無線も効かなくなる。
 次第に濃くなる雲の中、11:46北股岳山頂に立つと頭上が心なしか青い。携帯電話を見ると11:26付けで航空隊からの着信跡。下降を始めた途端、凄まじい爆音が響いた。ヘリが来ている。まさかこの視界のない状況で信じることはできないが、間違いなくすぐ近くである。私がメール確認や交信をしている間に、3人は梅花皮小屋をめがけて下っている。私も後を追いかける。梅花皮小屋から誰かが出ていく人影が見えたと思ったら、姿が消えた。ヘリの姿は全く見えない。吊り上げ成功したと3人からの無線が届いた。
 11:56私が梅花皮小屋に到着すると、雲が次第に消えていった。ともあれ要救助者は無事にヘリで収容されたことは確かである。本棟に行ってみると、1回に寝袋やザックなどがそのままに放置されていた。登山靴まであるところを見ると、寝ていた所を突然航空隊に起こされて、スリッパか裸足のままで小屋の外に連れ出されたのだろう。管理棟を開けて水を汲みに行く時に確認すると、本棟のすぐ近くで足跡が消えていた。ここで空中に吊り上げされたのである。
 私達は、管理棟で食事をし、彼の荷物を分散して、13:35梅花皮小屋を出発したが、その頃には再び付近は雲に覆われていた。
 帰りはまた雲の中を歩いたが、14:01北股岳標注の海老の尻尾は消えていた。14:39門内小屋を通過し、15:03-16扇ノ地紙で一息を入れる。湧いては消える雲の中から梅花皮小屋が再び姿を現したのは、15:43梶川峰まで下ってからのことであった。
 16:00三本カンバの雪はすっかり消え、16:10-23五郎清水、17:00-07湯沢峰と下る。17:36楢ノ木曲リ付近からは細い三日月の光を頼りに、17:59湯沢ゲートに帰着した。
登る途中で温身平を見下ろす
丸森尾根上部は白い
湯沢峰まで登ると、飯豊山が白くなっていた
肝心の梅花皮小屋方面は
烏帽子岳以北が雲で覆われている
滝見場にて、梅花皮小屋は見えない
中ノ島(草付キ)最上部から上は雲の中だ
石転ビ沢の状況
梅花皮大滝
三本カンバを仰ぐ
五郎清水にて
雲が広がってきた
三本カンバで雪となる
トットバノカッチと杁差岳方面
雲は動きが激しい
下界は良い天気なのだが・・・
倉手山
本格的な雪道となる
梅花皮小屋が微かに見えた、情報を送る
梶川峰
雪と紅葉のバランスが素敵だ
飯豊山方面
カエデ
空は青空
絶景です
雪をまとうカエデ
門内小屋が見える、でもその先は雲
ケルンに向けて
施工箇所
キツネの足跡
これは何かな?
この時期ならでは姿です
氷柱を見ると、水食の様子が分ります
下ってきた登山者の足跡も参考になります
GCS
LFDとEHJ
凍りついたナナカマド
梅花皮小屋はまだ雲の中
薄らと小屋が見えた、今がチャンス!
地神山
飯豊山方面
地神山
扇ノ地紙、ここまで来ると梅花皮小屋を確認できない

続く ⇒