登山者情報1,494号

【2011年10月12日/古寺鉱泉〜大朝日岳(ハバチ調査)/井上邦彦調査】

 06:37古寺鉱泉駐車場から4人で歩き出す。登りながら草刈氏から様々な話を伺い、3人とも疲れも忘れてしまう。例えば「この辺にあるシラカバに似た樹木はウダイカンバで、皮を剥いで火付けに使える。ハナヌキはハナノキが訛ったもので、ハウチワカエデのことを指す。カヤツリグサ等スゲの仲間は茎が三角だけど、イネ科の植物は丸いので、触ると容易に判別できる。フキバッタは羽が退化しているので、山によって異なる種になる等々。」
 07:42一服清水と、08:24三沢清水で喉を潤す。08:49古寺山で大朝日小屋のGXKと無線が繋がる。風のない所で休憩を取り、09:01巻き道に入る。09:26小朝日から下ってくる道と合流し、熊越から暫く登り、ハイマツが出てきた所から虫を探し始める。
 すぐにマツノクロホシハバチを発見。紐を出して5m四方のコドラートを設置し、食痕にテープを結び、虫の数を数える。うじゃうじゃいるという感じだ。さらに高度を上げると、あらかじめGXKが印しを付けてくれて置いてくれたので、簡単に食痕を探すことができたが、虫の姿が見えない。林床を探っても蛹はいない。そのうちに、黒くなって死んでいる個体が見つかった。
 銀玉水を過ぎるとさすがに風が強く、素手では冷たくて作業ができない。目印のテープはあちこちにある。小屋の手前でハイマツの樹高が低い所をコドラート設置箇所に決め、大朝日小屋に逃げ込む。早速、小屋であらかじめ確保してもらっていた虫を見せて貰う。既に繭に包まれている虫も複数いる。確認後に、管理人のGXKが作ってくれた納豆汁で身体を温める。
 あらかじめ依頼のあった大朝日岳直下の枯れたハイマツ群を観察に行く。そこだけ登山道の両側のハイマツが葉をつけたまま枯れている。あきらかにマツノクロホシハバチとは関係ないことが分かる。その上部にも目印のテープがあるので、調査を行い、その後9月24-25日に合同保全事業で行った施工地を観察する。
 登山道の風侵溝に詰めたヤシ繊維が数箇所外れていたので補修する。下に下りてみるが、若干砂が溜まり始めたダムがあるものの、たいした変化はなかった。帰ろうとした時、風侵溝に水制の意味で入れたヤシ繊維と石の周辺に砂礫が溜まり、埋没しかけている!ことに気付いた。しかも最も効果が期待できない駄目もとで試みた風が正面から当たる場所である。良く見ると、風が斜めにあたる場所でも、若干の堆積が始まっているようであった。
 帰途は登山道周辺の食痕を観察しながら登ったが、どうも今年始めて食害が発生したのではなく、昨年に被害を受けたと思われるハイマツもあった。仮に以前から生息しており、生態系のバランスの中で生きているとすれば、特段問題にする必要はない。できればそうであって欲しいと願う。しかし、今年異常繁殖をし、来年も際限なく食害が拡大するとすれば、早急に手を打つ必要がある。その判断をするために、今回の調査は極めて有効であると考える。
 小屋に戻り、身支度を整え下山を開始したのは、15:13になっていた。15:56熊越で着替え、16:12分岐、16:28古寺山、16:43ミサワ清水、17:04ハナヌキ分岐を通過し、一服清水で腹ごしらえを行いライトの準備をする。18:05暗くなった古寺鉱泉駐車場に到着した。
 なお今回の調査は、朝日山地森林生態系保護地域の巡視員であるHZUとGXKが、朝日庄内森林環境保全ふれあいセンターならびに置賜森林管理署と連絡を取り合い、その指導のもとに実施させていただいたことを付記しておく。

素晴らしい紅葉に包まれて登る
ハナヌキを過ぎ、この先から急登になる
急登をクリア
小朝日岳が見えた
眼下のブナは全て落葉している
古寺山から小朝日岳を仰ぐ
大朝日岳は雲の中
見事なサラサドウダンの紅葉
古寺山を振り返る
フキバッタ 羽が殆ど退化している
熊越にて
紅葉に目を奪われる
小朝日岳南面
大朝日岳

マツノクロホシハバチ

保全施工箇所

下山時に古寺山を見下ろす
紅葉の中に入っていく
古寺鉱泉朝陽館