登山者情報1,644号

【2013年05月03-06日/加治川治水ダム~蒜場山~烏帽子岳~大日岳~飯豊本山~三国岳~川入/加賀谷亮調査】
《メンバー》
 加賀谷亮 DCU
《行動概略》
 今回の山行は、昨年の「小屋烏帽子~栂峰~日中飯森~谷地平~五段~地蔵~川入」一昨年の「吾妻東鉢~旧大峠~栂峰~日中飯森」に続く会津~越後横断縦走第三弾となる。過去2年は大量の残雪と安定した好天に恵まれたが、今年は4月20日頃からの不安定な天候で稜線上では新しい積雪による難渋が予想された。
【5月2日 曇り】 
 ・夕方、川入登山口に車両を1台デポし移動、加治川治水ダムへの送迎を買って出てくれた下越山岳会:笹川氏と合流しテントにて軽く前夜祭を行う。翌日に備えアルコール控えめで10時過ぎ?に就寝。
【5月3日 曇り時々雪:気温低し 】
 5時前 小雨がテントを叩く音で目覚める。上空には寒気が入っていて、今日が最も冷え込むとの予報なので上部は雪になっている事だろう。ここ最近の異常低温と天候不順で、上部は比較的新しい積雪が相当量有ると考え、スノーシューと輪環(ワカンジキ)を準備してきたが、思案の末、輪環をチョイスする。この選択は結果として正解だった。
 暗雲が立ち込めて小雨が続く中、笹川氏の車両で加治川治水ダムへ移動する。助手席で外の景色を眺めながら、以前正月山行で雨に祟られ、標高が上がって吹雪に叩かれた記憶が頭をよぎり、全くテンションが上がらない。
 途中、阿賀野市辺りから空が明るくなってきて、雨も上がる。携帯電話での情報では、新潟平野は晴れている様子で、多少気分が上向いてくる。
 加治川治水ダムに着くと、ダム管理所を開きに来た職員が居て雑談を交わしながら身支度を整える。 この間に地元山岳会の3人(烏帽子往復)と3人(内2名は日帰り)が先行していった。気温は7度程度だろうか。
 7:28 雨は無く肌寒い中、加治川治水ダム左岸登山口を出発する。途中、登山道脇の鉱山軌道跡やイワウチワの群落を眺めながら歩き出すがいつも通りの大荷物で一向にペースが上がらず、先行パーティーと度々前後して登る。
 8:27 734m独標:軽く休憩とする。この時点では比較的視界が利き焼峰や俎倉山が望めるが、上部はガスで覆われている。
 9:21 932m岩岳:ここで先の4人パーティーと共に小休止する。雪に覆われた小ピークで標識は見当たらない。先に見える烏帽子岩の辺りから上はガスの中で視界は無さそうだ。この手前辺りから小雪が舞い始めるが、風が弱いのでさほど厳しくは無い。
 10:00 少しずつ積雪が増える中、鎖場を這い上がり烏帽子岩に到着。比較的新しい積雪は10cm弱、ガスで視界は利かない。
 10:14 兎戻しに差し掛かる。ここも岩場で鎖を頼りに這い上がる。 この先片側が崩落した痩せ尾根が数箇所あり、積雪次第では注意が必要だ。
 11:03 水場を通過。積雪は着実に増え、樹木の枝は霧氷やエビの尻尾に覆われていてまるで初冬の山の様相だ。気温は零下3度程度だろうか。
 11:14 1330m山伏峰を通過。ここからは山頂までは標高差で30m程度しかないが水平距離はまだある。
 11:32 1363m蒜場山到着。少し下った所で風を避けて休憩している間に3人パーティーも到着する。
 12:00過 山頂を出発するが、ガスの中でルートを間違え若干時間をロスした。すぐにルートミスに気付き大したロスは無かったが反省である。山頂に戻った時に丁度、単独の若者が登って来て、軽く言葉を交わした後磁石も振らずに3人組のトレースを追って先行して行った。
 13:00頃 境界尾根の北側の沢を1066m鞍部を目指して下降する。時間ロスの間に先行した3人パーティーの旗竿が数本設置されていた。新雪は30cm以上は有りそうだ。
 13:23 沢から1066m鞍部付近の尾根へ這い上がると、先行した3人パーティーが見える。時折視界が開けて、これから目指す高立山方面が望めるが、なかなか手強そうな藪になっている様である。ここで小休止とする。先行パーティーのトレースに導かれながら登ると程なく藪漕ぎとなるが、獣道にしては明瞭な藪の薄い部分が有り、昔の道跡かと思案しながら高度を上げる。
 14:40 1017m付近で3人パーティーに追いついた時点で藪が途切れ、共に小休止とする。遠くに見える山が只見の御神楽岳だと教えられたりと暫し雑談を交わす。ここ数年のGWは誰一人として人に会わない山行をしていたので新鮮な気分である。ここでブナの木に打ち付けられたブリキの標識が目に入り、以前道が有ったことが判る。この頃からガスが上がり、視界が利くようになってくる。
 15:25頃 1089m高立山を通過。ここにもブリキの標識があった。
 15:45 高立山から下って、1036m稲葉ノ平を通過。 ブナの純林が見事な最高の幕営地である。ここでもブリキの標識がブナの木に設置されていた。4人組と単独若者はここでテントを設営していたが、我々は50mほど標高を上げた見晴の利く台地を選んで宿泊地とする。ブロックを積んでテントを設営していると更に視界が開けて、只見の御神楽岳や浅草・守門と思われるひときわ白い峰々、遠く那須連山北部までが見渡せた。風も弱く快適な一夜を過ごす。
【5月4日 曇り一時晴れ:風強し:気温低し】
 単独の若者は我々が目覚めて程なく4:30頃に先行していった。予報では午後から天候回復傾向とあるので、我々はゆっくり出発と決め込む。朝食を摂り、昼の弁当を仕込んでテントを撤収していると、3人組が上がって行った。
 6:45 幕営地を出発、先行トレースを頂戴して進むと僅かに登った所からガスの中となり全く視界が利かなくなる。気温は零下2度程度と思われる。
 7:20頃 1351m丸子カルへ登る標高1250付近で、先行していた3人組+単独若者が引き返してきた。単独者と言葉を交わすと、上部は全く視界が無く行動不能と判断して往路を戻るとの事。我々は「そのうち晴れてくんべ~。気~揉まねーでのんびり行くべ」とゆるり高度を上げてゆく。
 7:50頃 1351m丸子カル手前のカーブへ差し掛かる。ここで単独のトレースが途切れていてこの先は我々のみの世界である。磁石を振ってルートを定めていると、一瞬ガスが切れ、同定した方角の先に小ピークが現れてルートを確信する。丸子カルを降りて烏帽子岳との鞍部へ差掛かると一気にガスが晴れてくる。この先烏帽子岳までの登りは所々藪になっていて手強い様相だ。藪を巻いたり、強行突破したりしていると青空も覗き始め、烏帽子岳が見渡せるようになってくる。こうなってくると俄然テンションが上がるが、気持ちに反して足取りと荷物は重くなかなか標高は上がらない。
 9:58 烏帽子岳双耳峰の鞍部へ到着し小休止する。烏帽子北峰の肩を巻いて、町境上へとルートを戻し、1457mを経由して急斜面を下る。40度近いかなりの急斜面で、雪質次第では極めて危険なところだ。
 10:45頃 1410m鞍部を通過。実川山への登りに掛かると烏帽子岳東面の全容が見渡せる。
 11:00頃 1614mに向けて、藪を避けて北側斜面をトラバースして登っていると、150m程先に熊を発見!! 残念ながら写真に収める事は出来なかったが、逃げた足跡を追ってみると尾根を北から南へ越えて行った模様で、途中小さな落し物(糞)が8個程散りばめられていた。恐怖の余りお漏らしして行ったのだろうか。 この先少し行った辺りでカンジキを履いた。ここで烏帽子方面に8人近い蟻の行列の如し御一行を確認する。のちに新潟山岳会のみなさんと判明。
 11:40頃 1614m付近にて大休止とする。烏帽子岳方面が望めるが、この頃からにわかにガスが降りてきて視界が利かない時間帯が多くなってくる。
 14:20 1860m実川山通過 視界は100mに満たない。この辺りから風が強くなってきて、氷の礫が時折吹き付ける。気温は零下5度位だろうか。
 15:20頃 2030m薬師岳通過。視界全く無し。
 15:50 2091m西大日岳通過。視界が利かない中でも時折、オンベ松尾根が望め、牛首の下に4人パーティーが確認できる。大日岳直下の町界褶曲部でホワイトアウトの中しばし右往左往して5分程度をロスする。こんなときGPSの存在は心強い。
 16:18 大日岳山頂に到着。強風で長居は出来ず記念撮影をそそくさと済ませ早々に風下に移動する。たいして風は避けられない中、この先の下りに備えてアイゼン+ピッケルに換装する。
 16:25頃 大日岳山頂より御西岳へ歩き出すと一気にガスが晴れてきて、主稜線や御西、飯豊本山までが望める様になる。 これまで上空の雲が取れず、重苦しい景色だったのが一変して、開放的な青空が広がり陽光が降り注いで来る。最高に気分がいい。写真を撮りながらゆっくりと下って行くと、山頂台地の端でオンベ松尾根から僅かに先行していた年輩の単独行者に追いつく。 山頂台地からの尾根上の下りにかかる。ここは堅雪だとハイリスクな急斜面だか、今日は柔らかな新雪が安定して付いているので楽々下れる。急斜面の途中でも写真を撮りながらゆっくりとパノラマを満喫する。蒲原平野を望むと、日本海に加えて水の張られた水田が赤く輝いていて美しい。この水田の水はここ飯豊と只見/会津/奥只見を源とする阿賀野川水系を主な源としている。その峰々に神を見出し、畏れ奉る精神を我々は忘れてはならない。が、物的豊かさの為に乱開発と過剰利用が横行し、その結果が災害という形で因果応報しているのだろう。ハイテク素材のヤッケを纏い、石油化学製品の靴を履いて来ていて言える事でも無いかもしれなないが・・・・。文平の池から御西への本日最後の登りに掛かると、再びガスが覆い始め、視界が利かなくなってくる。時折見える小屋の影で念のためコンパスを定めて一直線に歩く。後ろからは先ほどの単独行者も追随してきているのが確認できるが我々のトレースが有るので問題は無いだろう。
 17:57 御西小屋に到着。小屋は全体が露出している上に、1階の入口も掘出して有って大変有り難い。 小屋脇でアイゼンを外していると、2名のスキーヤーがやってきて、ガスの晴れた16時頃から1本滑ってきた、それまでは小屋で沈殿していたとの事だった。結局宿泊者はこの2名と我々、それにオンベ松からの単独の若者(大日で抜いた方とは別人)で合計5名、1階は我々のみの貸切となった。大日山頂で会った年輩の単独はその辺で好きでテントを張っているのだろうか?牛首の下に見えた4人組みは何処に幕営したんだろう?などと話していると、二王子からの下越山岳会とメールが繋がり、梅花皮小屋前で幕営との事??どうやら小屋が開かないらしく、なんとも気の毒な事である。とにもかくにも我々は今回山行の核心部分を終え、翌日は晴天の予報、後の行程は勝手知ったるお散歩コースである。 絶景を楽しむ事も出来、気分上々でゆるりとアルコールを嗜むのであった。
【5月5日】
 4:00過ぎに単独の若者は出発していった。昨日交わした話によると三国経由で弥平四郎へ下るとの事である。 我々は三国までなので再び朝寝に落ちる。
 5:00過  明るくて寝ていられなくなり渋々起床すると、外は強風+ガスで視界ゼロ。のんびり湯を沸かして茶やウイスキーをすすりながら朝食と弁当の支度にかかる。予報では9時頃から晴れが広がるとの事なので、その頃に出発しようとゆっくり支度する。
 6:15頃、用足しに外へ出ると突然ガスが開けて、大日岳や北又、烏帽子、梅花皮が姿を現し、暫し撮影タイム。清水が大日方面を眺めていると、すぐ先に単独の人影が有ると言う。我々が小屋に戻ると、その単独行者が入ってきて、昨日大日山頂で追い越した年輩の方ではないか! 我々のトレースを見失ってホワイトアウトに巻かれ、小屋までわずかの所でテント泊を余儀なくされたとの事。あの強風の中、風下に下りもせずに風衝地にテントとは大変で御座いました・・。入って来ないから好きでどこかにテントかと思っていたが、こんな事なら探しに行けばよかった等と湯を差し出しながら雑談した。無事でなによりである。
 8:00頃 パッキングをしていると、二王子から馬蹄縦走の下越山岳会一行3名が到着。昨日は小屋を目の前に烈風の中での幕営、これまた大変で御座いました。暫し雑談の後、皆で集合写真を撮影して 8:28 快適な一晩を過ごした御西小屋を出発。この時点ではカンジキの足拵えである。
 9:32  大パノラマを満喫しながら写真撮影で頻繁に立ち止まり、遅めの駒形山山頂到着。この登りに差し掛かる地点でカンジキを外しツボ足とする。
 9:51 飯豊本山に到着。何十回も来ている山頂だか、ロング縦走途中での登頂は感慨が異なるものである。ここは正月以来、相方は残雪期初であるので、まず撮らない記念撮影をして山頂を後にする。
 10:27 本山小屋到着。小屋廻りの残雪は例年より少し多い位だが、トイレは例年よりもダイナミックに埋没していた。 ここで暫し大休止とする。
 11:11 本山小屋を出発、スキーヤー、ボーダーが計4名程いた。
 11:22 一王子水場の分岐を通過
 11:47 御秘所を通過。普段ゴム長or地下足袋で足裏感覚を頼りに駆けているので、重登山靴での岩場通過にはかなり緊張。かえってアイゼンを付けていた方が慣れているのでましである。
 11:55 姥権現通過 御婆様は頭のみが雪から出ていた。
 12:08 草履塚北峰、ここからの駒形~御西の眺めは絶景である。5月1日にオープンしたバーボンTakeda(http://yoimachigusa.whitesnow.jp/)の店「山形屋やじろべい」(長井駅前) に寄贈した写真もここから撮影した一枚である。
 12:12 草履塚本峰着 12:15発
 12:38 切合小屋着、2名が大日杉方面へ下っていった。大日杉小屋まで車が入るとの事である。
 12:55 種蒔山にてパノラマを楽しみながら大休止とする。七森方面を眺めると、例年より雪尾が大きく、リッジも鋭い様な気がする。
 14:16 種蒔山を出発。種蒔山直下は例年だとかなりの急斜面になるのだが、今年は随分と傾斜が緩く感じる。
 14:23 例年より上部まで着いている積雪を利して普段は上がれない七森山のピークに立つ。 障害物の無い360度のパノラマを満喫。さらに三国方面に向かうと、やたらと西面に下がった藪にルートを取ったトレースが引かれている。随分と雪庇を警戒しているようだが、かえって踏み抜きが多くて歩きづらく、例年のルートに修正しながら歩く。 駒返しの急斜面は例年より急な感じだが、西側の雪が繋がっていてそちらを迂回して降りられた。 が、これもじきに雪が切れるので、今後は注意が必要な難所である。
 15:29 三国岳到着。本日はここまでである。結局本山以降で見かけたのは切合での2名のみで異常に少なかった。山が静かなのは結構だが、なんだか狐に摘ままれた様な奇妙な気分である。下山ルートの剣ヶ峰を見ると、例年より積雪がかなり多くリッジも鋭いが、雪割れは少なく歩きやすそうだ。我々以外の宿泊者は無く、貸切状態である。暖かな2階に陣取り正月山行のデポ残りも使って豪勢な夕食とアルコールを楽しみながら夜は更けていった。
【5月6日】
 本山行最終日である。
 4:50頃 起床して、朝の景色を見に表へ出ると、本日も快晴である。撮影、朝食をゆっくりと行い、ドリップコーヒーで締める。
 8:20過 三国岳を出発、雪が腐らぬ内に出発しようと話してはいたが、遅い出発になった。
 8:35  護摩壇を通過。雪と岩のミックスを下降する。下降するに従い気温が上昇していき汗が額を伝い始める。所々、雪庇の亀裂に片足を捕られながらも快調に下降する。全般に雪の落ちは遅く、登山ルートを横切る亀裂は少なめで歩きやすかったが、日一日と状況が変化するので、今後20日間程度は厄介な部分があると思ったほうが懸命だ。
 8:55  赤岩を通過、少し先でアイゼンを外してツボ足とする。ここから水場道をトラバースするトレースが有るが、かえって疲れるので地蔵山頂へ向かう。
 9:34  地蔵山頂に到着して小休止。大型テントを張ってブロックを積んだ形跡があった。ここで2名とも半袖シャツ1枚となる。青空と雪面にブナのシルエットが映える中を快調に下る。
 10:08 横峰茶屋跡を通過、標柱の頭はまだ出ておらず、積雪は多めだ。 笹平は標柱が埋没していていつの間にか過ぎてしまっていて通過時刻不明である。
 10:27 上十五里を通過。ここの標柱もほぼ埋没しており積雪は例年比30cm程度は多い。ここで大休止する。
 11:14 中十五里を通過。昨年は多くの倒木が見られたが今年は少なめである。
 11:26 下十五里を通過、次第にブナの芽吹きが見られる様になってくる。
 11:48 御沢登山口。今日は結局登山者に全く会わなかった。普段であれば日帰りで三国や地蔵をピストンする人が数人いるのだが・・・。下界で何かあったのか?などと冗談を言いながら川入へと歩を進める。 御沢~川入間の林道は8割方舗装されているが、残りの部分を時間帯通行止めで舗装する予定である。施工時期は未定だが川入登山口利用の際は念のため喜多方市役所山都総合支所に確認するなり、役所のHPを確認するなりした方が無難だろう。
 11:58 御沢野営場通過
 12:23 川入地区に到着。民宿の主人に挨拶に伺い、茶とコゴミのおひたしをご馳走になりながら暫し雑談。話によると、天気予報を聞いて登山そのものを中止したり、剣ヶ峰を目の前ににして引き返して来たりした登山者があわせて20数名はいるとの事。大日杉登山口が開いている為、剣ヶ峰を避けてそちらに流れる登山者も少なくないので、どうりで本山~川入間に登山者が見当たらないわけであると納得した。 
 13:00過 一の木温泉「飯豊の湯」にて喜多方警察署に下山報告をして4日間の汗を流し、岐路についた。

つづく ➡