今年の飯豊連峰合同保全事業は天狗ノ庭で行われた。天狗ノ庭は飯豊連峰の中でも最奥に位置し保全資材の荷上げは困難を極める。今回は荘内銀行の「
ふるさと創造基金」から空輸経費をいただけることになり、6月15日の各山小屋管理資材空輸にあわせて実施することができた。さらに不足分については「荷上げ祭り」を開催し、皆さんのお陰で準備が整った。
【9月10日】
07:00天狗平ロッジに集合し、用具や資材の振り分け、各班ごとの打ち合わせを行い、07:30から順次出発した。14:00〜14:30梶川尾根上部の施工箇所に到着し、昨年度に研修で補修を行った箇所を確認した。17:30梅花皮小屋に到着し宿泊。
【9月11日】
05:00梅花皮小屋を出発し、08:00天狗ノ庭に到着。早速作業を行い、11:50各班長から施工箇所の説明、その後に菊池先生と川端さんから講評をいただき、15:30梅花皮小屋に戻った。
【9月12日】
本隊は07:00梅花皮小屋を出発。09:30〜10:30梶川尾根上部の施工箇所で、登山道明示用ロープの張り替えなどの作業を行い、04:20天狗平の登山口に到着し、解散となった。
【作業内容】
@ 天狗ノ庭下部の地塘の回復(1836m地点)
天狗ノ庭の下部には大きな地塘が存在しているが、登山道の崩壊等による土砂の流入に伴い、土砂で埋もれた状態になっていた。今回は、この地塘を回復すべく作業を行った。堆積した土砂を除去しながら、地塘を水が溜まりやすい形に整形。作業後から約3時間後には水の滲出が確認できした。地塘の形は周囲の植物に配慮してひょうたん形とし、壁面部には泥炭層を貼り付けた。この泥炭層には池塘の底に埋土していた植物の種子を貼り付けており、発芽するかどうか様子を見る予定である。なお、除去した土砂は取り組みAで土嚢袋に入れて活用している。
A 天狗ノ庭の地盤安定化を促す(1850m〜1832m地点)
取り組みAを行った地点では直近で平成21年に合同保全作業を行っており、緑化ネットの設置や、土留め工を行い、植物が生育する地盤の安定化を試みていたところである。今回は同様の目的でそれをさらに強化、かつ広範囲に実施した。作業は5班で分担し、下記のとおり実施した。
【1班】
現地に生育しているコケの葉の一部を切り取り、挿し木の要領で移植した。移植する場所は石の影など風邪等による影響が少ない箇所を選んでおり、移植したコケがどのように生育するのか試みた。また、移植した場所には対照区を設置し、黄麻ネットを敷いた部分、敷かない部分でコケの生育にどのような影響がでるのかを比較する。
【2班】
以前の作業で、植生の回復が上手くいかなかった箇所において、再度新たな手法で植生回復を試みた。土をならして段々畑を形成し、段毎に植生ネットを敷く、根巻ロールの設置、ふるいにかけた土を被せる、池塘毎度種子の蒔種、クマの糞から得られた種子の蒔種など、試験区を設定した。
【3班】
勾配のほぼない場所で作業を行った。ヤシロールで海苔巻きを作って広範囲覆い、砂防ダムを作成した。海苔巻きの中には土、通常ヤシ繊維を混ぜているが、途中でヤシ繊維が不足した箇所については、登山道の草刈りにより生じていた笹を代用して活用した。なお、1班によるコケの移植等は3班の作業地にて実施した。
【4班】
作業地最下部での作業を行った。水及び土がここから下部へ流出した痕跡が見られたため、ヤシロール等で土留工を実施した。また、上部から水、土の供給が予測される箇所には黄麻ネット、根巻ロールをそれぞれ設置した。これによりどちらの資材でより植生の回復が見られるか比較を行う。また、以前池塘があったと思われる箇所からは堆積土砂を除去したので、今後池塘が回復するか様子をみる。
【5班】
水路にヤシ土嚢を設置し、水流の減速と土砂堆積を図った。また、土留め用土嚢の下部に、種子を多く補充したヤシ土嚢を試験的に設置したので、これによる植生回復の早さを比較する予定である。他班と協力して作成した長大なヤシロールによる土留等も実施した。
作業終了後は各班長からの施工方法や意図の説明、菊池氏(山形大学農学部)と川端氏((株)ニュージェック)による講評により、当日の作業についてふりかえりを行った。