登山者情報第2,304号

  【2023年3月10日/登山道フォーラム/井上邦彦発表】

 山形県みどり自然課の主催で「登山道フォーラム(登山道保全のあり方)」が開催されました。(社)北杜山守隊の花谷泰広氏の講演に続いて、大江山岳会の木村会長と共に事例発表をしたので、その内容を掲載します。

井上です。よろしくお願いします。

まず作業に取り掛かる前にお願いしたいのは、その場所の地権者は誰か、保安林など許認可の網はかかっていないかということです。
特に低山では一つの山に幾つかのコース、山頂などに他の団体や個人が絡み合っている場合があります。
作業の前にそのような方々との調整をお願いします。

限られた時間です。高山帯については2月に話しています。
今日は森林限界より下部、浸食された登山道の階段の施工方法について話しをさせていただきます。

テキストは、高山帯は私達が作ったこのテキスト、環境省のホームページからダウンロードができます。

また今日話しをする、先ほど花谷さんが話された樹林帯、については信越自然環境事務所からダウンロードできます。
これは私が維持管理している「飯豊朝日連峰の登山者情報」です。「飯豊朝日連峰」で検索できると思います。
その始めの画面の右上をクリックしてください。ここでダウンロードできますし、登山道を直す「近自然工法」についての動画を幾つか見れるようにしておきましたので、確認してください。

 

登山道の階段ですが、皆さんはこんな経験はないでしょうか?段差が高くて疲れる、リズムが一定なので疲れるとか、降りる時に杭などに足を引っかけそうになってしまう、転びそうになってしまうということですね。

 

これは擬木による階段ですが、膝に負担が大きいです。

 

これは今にも上からどんと、トレランのように走ってきて、この辺に足を置いたなら崩れそうですし、雨でこの辺がやられそうですね。

 

実はここの部分の杭がすぐ壊れるといけないので、鉄筋を使っているのですね、そうしてこの丸太が腐ってくるので、にょきにょきと鉄筋だけが登山道に露出している、上から降ってくると非常に怖い登山道でした。

 

それから、霜柱の関係もあるのですが、霜柱と登山道が掘れていくことによってほとんどハードルになっているような階段もあります。

 

その結果どうするかというと、登山者は、先ほど花谷さんが言われたとおり、楽な所を通るので、階段ではなくその脇を歩く、そうすれば当然歩いているここ、水道になるので、水がここを流れてどんどん浸食をして行くことになります。

 

それから木道も良くありますが、地質やど土壌の関係もあるのですが、概ね霜柱によって傾いてしまいます。
傾いて歩きにくい、特に秋などはつるつるに滑るので、その脇を歩く方が多くなります。

 

私達が使っている資材については、現地調達するものと荷揚げするものがあります。現地調達については、枯損木、倒木、それから笹、それから小ダムを作って土砂を溜めて使います。
石も使うのですが、石は使い方を誤ると逆効果がよく出てきます。

 

これ笹の所ですが、2017年に飯豊連峰の稜線で許可を得て刈り払って、登山道の保全をやりました。
これはその翌年に撮影したものですが、翌年に復元が始まって5年後にはどこが刈り取ったか分からなくなっていました。

 

これは笹ダムを、その笹で作ったダムですが、5年後には植物が出てきています。

 

今度は私達が使っている、荷揚げ祭と言ってますが、荷揚げしている物、全部ヤシ製です。

 

ヤシ土嚢、ヤシロール(ネット)、ヤシ繊維、です。
先ほど花谷さんが話された通り、一番大事なのはその場所の観察です。
その場所をどのように見るか、ということが非常に大切です。

 

その中でも、踏圧と川、というか水の力ですね。これが非常に問題になるので、この4点を十分に考えてください。

 

ここが非常に大切なポイントです。登山道保全のポイントは、登山者がどのように、どこに足をかけて登り降りしているかと、水のコントロールです。

 

ジグザグの登山道は、掘れにくいです。水は上からきて、そのまままっすぐ行きやすいからです。
ここで簡単に排水ができます。
ただ登山道の脇を掘ったりすると、場合によってはそこで流速が速くなり、掘れて行ってしまうことがありますし、流出先の植生を駄目にすることがあることを考えてください。

 

私達は流れに丸太やヤシロールを作って、登山道の地面よりも少し高くし、さらにもう一個入れます、そうするとここに土砂が溜まります。その土砂を次にまた土嚢などに使います。水は排水して土砂は溜めて活用していきます。

つづく ➡