登山者情報615号

【2002年04月13日/石転ビ沢/井上邦彦調査】

先週、西俣尾根から覗いて、大淵・天狗平間の林道は歩けると判断し、今週は石転ビ沢に入った。
05:30大淵橋手前の駐車場に車を止める。林道入口に除雪車が置かれていたがまだ除雪作業は始まっていなかった。それもその筈で、すぐ先の岩場の雪崩はまだ治まっていない。除雪が始まる前は、梅花皮荘裏の吊橋から入った方が無難であろう。天候が良いので堅雪となっている。スキーをザックに点けてスパッツなしで歩き始める。05:48倉手山登山口を通過する。車道の一部が露出している所も多いが、凍結しているためスケートリンクを歩いているように滑りやすく、むしろ雪の上の方が歩きやすい。官民境(右手にここから国有地である旨の看板がある)から先は雪崩注意地帯となる。かなり雪崩は進んでおり、この時期にしては危険度は低いものの、砂防ダム周辺はやはりまだ雪塊が引っ掛かっており、神経を使う。オフタガリ沢のスノーブリッジは平年並みといったところ。通称吹キ付ケに取り掛かる前に、ピッケルを何時でも使えるようにザックから外し、腰に差す。プラスチックブーツなので、軽いキックステップで難なく通過したが、この堅さならアイゼンなしでは通過できない方も多いと思う。吹キ付ケの核心部は路肩が出ており、これも難なく通過する。全体として、熟達者以外はまだこのコースは危険と言える。天狗橋手前の清水は水量も充分で使用できる。天狗橋で夏道は終わる。ここまでは夏道が半分近い。
06:35〜45天狗平で食事とする。この辺りのブナ芽は膨らみ始めている。快適に堅雪の上を進む。温身平のブナ芽はまだ堅そうだ。07:13砂防ダムの階段を登り、再びブナ林の中を進む。進路を幅11cm程度の足跡が横切っている。爪の跡がくっきりしている。昨日、熊がここを通ったのだ。次回の山行からは装備品に熊スプレーを持つことになるだろう。下ツブテ石付近の状況が分からないので、一旦夏道どおりに左岸を登り確認する。部分的に露出している夏道は荒れている。雪渓は一箇所穴が開いているものの、充分歩けそうだ。07:37下ツブテ石に下って雪渓を横切り、右岸沿いに進み、頃合を見計らって左岸に移り、上ツブテ石と左岸の間を登る。後は平坦な雪渓となる。07:50地竹原で何らかの気配がしたので、探してみると前方約50m程の所にカモシカがいる。カメラを出し近づきながら何枚か撮影する。一度カモシカから目をそらしたので、カモシカはゆっくりと右岸の急斜面を登り始めた。滝沢を見ると、入ってすぐの所に段差ができている。恐らく梅花皮大滝方面は通行不能であろう。08:03〜13梶川出合で食事とする。途中の自動販売機でテルモスに入れてきた紅茶が美味い。空は抜けるように青い。休んでいる間に雪質が変わり表面がザケ始めた。08:17梶川出合のすぐ上、左岸の水場は使用できそうだ。水場下の大岩は全く出ていない。この付近の右岸はこれからの崩壊となる。赤滝から石転ビノ出合にかけて、左岸の雪崩が活発化し始めている。08:33石転ビノ出合を通過、08:42〜53通称キジガ丘の上端で軽い食事とする。気温7℃。一度スキーを履いてみるが、やはり担いだ方が効率的なのですぐにザックに付け直す。なおも登るとすぐ上部で左岸から2度ほど雪崩が発生したが途中で止まった。左岸の雪崩が活発化しており、右岸はまだ雪面が続いている。日差しが強いため、首筋にタオルを当てる。黄砂色の雪上に薄っすらと新雪が積もっている。09:42〜56ホン石転ビ沢対岸枝沢を過ぎた雪崩の来ない場所を選んで食事とする。PWDと無線が繋がる。ODDやQVH達が雪上訓練のため横根山に登っているとの事である。傾斜がやや急になり、新雪も徐々に深くなってくる。雪虫が私の前を登っており、追い越す時に雪がかかると身体を丸くする。雪無視は昆虫の筈だが、雪の上で体温が下るということはないのだろうか。見上げると、新雪がカーテン状に雪崩れている。10:30〜39北股沢出合で食事。雲が多くなってきた。気温は3℃、朝日連峰の背後に月山が姿を見せている。北股沢出合はすり鉢の底のような形状になっているが、周囲を新雪表層雪崩が取り巻いている。ここから急になる。北股岳からの雪崩と、正面にある一部露出している尾根の間を登り、凹状の部分にルートを取ることにする。ここから上は視界がないとルート選定に大変苦労する所だが、今日は大丈夫だろう。ピッケルをザックから外して腰に差す。ここ暫くは、山スキーばかりで、長時間のキックステップを行っていないせいで、脹脛の負担が強く感じられる。新雪は3〜4cm程度、新雪には支持力が全くないので、堅い下雪に真面目に蹴り込まないとステップが刻めない。手を抜くとステップが壊れて余計な労力を使うことになる。11:03ストックをザックと腰の間に挟み、ピッケルを抜く。疲れが出てきたので登山靴のサイドを使って登るが、傾斜がきつくなるにつれ蹴り込みの強さが要求されてきて、50歩毎に息を整える始末である。爪先だけで登るトレーニング不足が顕著に現われている。ザックの中にアイゼンが入っているのだが、スキー滑降を考えると、雪質の確認は欠かせないし、キックステップで登降が可能な場所でアイゼンを使用するのはプライドが許さない。11:33傾斜が緩くなり、凹部に小屋の屋根が見えた。左下から緩やかに登って凹部を新潟県側に越えているはっきりとした足跡が見える。近づいて観察したが、時間が経過しているため判断はできないが、恐らくは熊の足跡と思われた。11:38ようやく梅花皮小屋に到着する。
本棟・管理棟ともに入口は雪で覆われている。本棟の二階から小屋の中に入り、ザックから管理棟の鍵を出す。雪が硬く持参したアルミスコップでは歯が立たない。二階への梯子に括り付けておいた剣スコを使い、先ずは管理棟の入口を掘り、持参したストーブで雪を解かしてラーメンを煮る。その間に今度は本棟の一階入口を一応使用できる状態にする。本棟・管理棟ともに異常はないが、コンクリート枠の一部に凍結によるものなのか破損が見られた。管理棟で一人食事を楽しんでいると、MXLと無線が繋がる。今晩、山岳会の総会での再会を確認しているとODDとも無線が繋がった。彼らの訓練も順調で、昼食中とのことである。今晩の総会が楽しみである。
13:13スキーを履き小屋を出発する。傾斜に慣れるまで何回か斜滑降とキックターンを行い、いよいよ滑降を楽しむ。今回も登りを重視したので、登山靴を使用した。兼用靴と違い、登山靴による滑降は大腿部にかなりの負担がかかる。特に雪崩跡でのターンはきつい。ルートを選びながらゆっくりと下る。13:27北股沢出合通過、13:33ホン石転ビ沢出合通過。雨がぱらついてきたが、面倒なのでそのまま滑り、13:42石転ビノ出合、13:46梶川出合、13:46時竹原を通過する。上ツブテ石から下ツブテ石までは登りと同じコースを使い、13:52下ツブテ石からそのまま右岸に登り、13:57スノーブリッジまで下る。左岸に移り、ブナ林を滑って、14:07砂防ダムの階段のみスキーを担ぎ、踵を開放する。14:30飯豊山荘のピロティにいる2人の登山者に声を掛けただけで通り過ぎる。その後は、スキーで滑ったり、両手でスキーを持ったりを繰り返し、15:13倉手山登山口を通過し、15:27大淵に到着した。

写真

注:右岸左岸は上流から見る。