登山者情報631号

【2002年06月15日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

先日来、膝の調子が良くない。事ある毎に周囲から「年を考えて無理するな」と言われて少々ふて気味である。始めはダイグラ尾根・石転ビ沢日帰りを考えたが、今回は忠告を素直に聞いて、梶川尾根・石転ビ沢とした。天気予報によれば朝まで雷雨、午後は良くなるとのことである。深夜、屋根を激しく叩く雨音と雷鳴で目覚めるが、のんびり出発しようと、再び眠る。雨が止んだ頃を見計らって起床、装備をザックに詰め込み自宅を出発する。泉岡地内で突然、動物が車の前を走って横切る。慌ててブレーキを踏み何とか事なきを得た。鮮やかな橙色の細い身体に黒い顔、大きさからしてもテンである。
登山者カードに記入し、05:47天狗平の駐車場を出発する。今回は特に意識してペースを落とし、ゆっくりと登る。06:12左手から尾根を合わせて右に折れると傾斜が落ちる。登山道を塞いでいる何本かの枝を鋸で切っていると雨が降ってきた。カッパを着て、06:55旧湯沢峰を通過する。手前右下の船窪には残雪が見える。ヤマツツジ・オオイワカガミが咲いている。花の終えたカタクリは実をつけた茎が直立し、花白く融けかけて地面に張り付いている。こうしてカタクリが姿を消し、夏の植物が地表を覆っていくのだ。07:01〜09湯沢峰(1,021m)で食事を摂る。幸い雨は大した事ないが、主稜は雲に隠れている。鞍部に下り谷地を過ぎる。ムシカリ・チゴユリ・マイヅルソウ・ウゴツクバネウツギ・ムラサキヤシオ・ガクウラジロヨウラクが咲いている。尾根道を登ると暑くなりカッパを脱ぎ、07:35〜41(1,145m)滝見場で休憩とする。前夜のアルコールでドロドロになった血液を薄めるために大量の水を飲む。休んでいるとブヨが寄って来るので、ハッカ油を首筋に吹き付ける。滝見場の先の池は残雪に覆われている。イワウチワ・タムシバ・カタクリがまだ咲いており、右下で水の流れる音がする。すぐ上で今日始めて雪を踏む。1,235m残雪末端に融雪水が流れている。次に残雪は左上に斜上する。ショウジョウバカマ・ウスバサイシン・ノウゴウイチゴが咲いている。蒸し暑いのだが、汗をかかない速度でゆっくりゆっくり登る。呼吸も殆ど乱れない。サワハコベ・オオバユキザサを見て残雪を踏み、シラネアオイ・ミヤマスミレを加える。08:09〜15五郎清水に到着する。水場に下ってみるが、まだ雪に埋まっている。来週になれば使えるかもしれない。無理すれば汲めない事はないが、登山道の融雪水で充分間に合う。ズダヤクシュ・ツクバネソウが咲いている。1,465m残雪の末端にも融雪水がある。この残雪は北側斜面が落ち込んでおり、下りは左に入らず右端に露出し始めている登山道から外れないように慎重に行動することが必要である。目印として潅木の枝に黄布を結びつける。風化が進み軟らかくなった岩場を登り、08:40三本カンバ(仮称)に着くとナナカマドが咲いていた。08:49トットビ沢源頭は1,605mから1,655mまで一面雪で覆われており、融雪水が勢い良く流れている。左側の潅木沿いに進み、潅木がない所は尾根上を登って夏道に入る。下りは左右両側とも滑落の危険があり、視界のない時は充分な注意が必要である。
09:00(1,692m)左手に三角点を見て、09:02〜11梶川峰の標柱で食事とする。何処かしらムックリの演奏が聞こえてくる。耳をそばだてるとカエルのようである。ミツバオウレン・イワカガミ・ゴゼンタチバナ・イワイチョウ・チングルマ・ムシカリ・マイヅルソウ・ツマトリソウ・ハクサンシャクナゲが咲いている。09:21ケルン付近のハクサンイチゲとミヤマキンバイは終りかけている。平坦な尾根をチングルマ・ウズラバハクサンチドリを見ながら進むと、1,790m地点で登山道が雪に覆われている。シラネアオイ・バイカオウレンが咲いている。1,860mから雪の上となり、09:44〜50(1,889m)扇ノ地紙に到着する。広場の標柱は僅かに頭だけ露出していた。広場で携帯電話を試みたが、繋がらなかった。ここから主稜線歩きとなる。頂稜の登山道は全て露出しているが、暫くは雪の上も歩ける。ショウジョウバカマ・ミヤマキンバイ・イワカガミ・アオノツガザクラ・ウズラバハクサンチドリ・シラネアオイ・ミツバオウレン・ミヤマキンポウゲ・ハクサンイチゲ(盛)・コマノツメ・ミヤマキンバイ・ハクサンチドリ・イワハタザオ・ミネザクラ(終)・ヤマガラシ・ミヤマダイコンソウが咲いている。10:11〜13門内小屋は何時もどおりトイレは鍵が掛かっている。水は船窪から手前の鞍部の融雪水が利用できるが、お腹に自信のない方は沸騰させてから使用した方が良いだろう。10:16〜24門内岳山頂で食事を摂る。携帯電話が使用できた。ハクサンイチゲのお花畑を進むヒナウスユキソウも咲き始めた。ペースの落とし過ぎで、体調が狂い始める。11:04〜11北股岳山頂で休憩すると、門内岳方面の雲が切れてきた。湯ノ平方面の登山道は藪化している。LFDと無線が繋がる。露出して間もない登山道を下る。バイカオウレン・ショウジョウバカマ・イワカガミ・ミツバオウレンが咲いている。梅花皮小屋が近くなると、ハクサンイチゲ・ミヤマキンポウゲ・オヤマノエンドウ・イワハタザオ・ヒナウスユキソウ・ミヤマキンバイのお花畑となる。
11:29〜12:23梅花皮小屋には登山者が1名のみ。早速缶ビールを冷やし、中華丼とラーメンを煮る。ピッケルを抜き、小屋から雪渓を下り、草付キノ広場に出て、登山道を下る。今回使用した軽登山靴は靴底の凹凸が磨り減って無くなっている。キックステップで草付キ(中ノ島)に下るが、雪が夏に向けて堅くなり始めている。1,755mから1,675mまで草付キ(中ノ島)の登山道を下る。右側の雪渓は亀裂が入り穴が開き始めているので、登ってきた時は早々に草付キ(中ノ島)に取り付いたほうが良い。また小屋で会った登山者は草付キ(中ノ島)の下で左の枝沢に迷い込み、梅花皮岳方面に登ってしまったとのことである。幸いまだ雪渓が安定していたので登りきれたが、状態が悪かったら危ない所である。北股沢出合までグリセードを楽しみ、何人かの登山者とすれ違い、13:03石転ビノ出合に到着する。頂上の平らな大岩が露出して良い休み場になっている。また合流点の大岩も頭が微かに出始めた。13:14梶川は雪渓が無くなっており、滝沢も入口の滝が露出している。先日の事故現場から左の台地夏道に上がり、13:22慰霊碑を通過する。サンカヨウ・ニリンソウ・タニウツギが咲いている。地竹沢の雪渓が殆どなくなり、全て夏道となった。婆マクレ(仮称)の今冬崩壊した岩に被さっている枝を切り、13:58砂防ダム通過、14:21天狗平駐車場に着くと同時に雨が本降りとなった。

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