登山者情報853号

【2004年09月11-12日/湯ノ平〜梅花皮小屋/井上邦彦調査】

当初は湯ノ島小屋から御幣松尾根を予定していたが、12日午後から用事が入ったので、コースを変更した。
蒜場山登山口にあるのが「加治川治水ダム」で、林道終点にあるのが「加治川ダム」で、少々ややっこしい。ともあれ加治川治水ダムに車を停め自転車を下ろす。今回のメンバーはKZMと2人である。右に下る道路を分けると、頑丈な遮断機が設けられている。パイプで補強され仰々しい。後から「バイクを乗り入れて事故を起こした人がいたため、バイクや自転車が入れないようにした」のだそうだ。なるほど自転車を持ち上げて崖上の縁石を通らないといけない。とても重いバイクでは通過できそうもない。鍵も南京錠が筒の内部に隠されており、合鍵がない限り通過は不可能である。さらにすぐ先には以前からある旧型の遮断機が設置されており、ここでも自転車を担いで通過する。
公園のトイレは使用禁止になっていた。確認すると水が出ない。これでは使用できない筈である。
行きかう人のいない車道を自転車で進む。私の自転車は変速機がついているが、KZMの自転車は整備不良でトップしか使えないとのこと。数箇所の急坂では自転車を押して歩く。新しい黒い糞が10数個車道上に散在していた箇所があった。熊狩りをしているKZMによると小熊が遊んだ後だとのことである。翌12日朝に通った時は乾いて色が変わっていたことから、10日夕方から11日朝にかけてのものと思われる。
右手にダムを見てすぐ、06:57-07:00林道終点の駐車場に到着する。広い駐車場にはバイクが1台止まっていた。ここで自転車を降り、鍵を掛ける。登山道入口にはロープが張られていた。これより先に入るなという強い意志を感じた。
もしかしたら橋が外されているのではないかという危惧は不要であった。快適に登山道を進む。足元で今年始めてナラタケを見つけた。07:36北股沢の吊橋を渡る。この橋への上り下りが山荘までの最大のポイントである。
水天狗から鎖と鉄手摺りが付けられた急坂を下る途中から女風呂が見えた。屋根も囲いもなく風呂が丸見えである。ただし誰も入浴してはいない。赤茶けた温水が流れる側を通ると熱さを感じる。足元のパイプから浴槽に湯が引かれている。右手に先程の女風呂を分け、08:03-19湯ノ平山荘に到着する。
小屋内にはザックが置かれている所をみると、釣り人が泊まっているようだ。スパイク地下足袋姿の方に会う。訛りからすると新発田付近の方のようだ。バイクで来た、これから帰るとのこと。私達は宿泊道具を小屋にデポし、北股岳を目指すこととした。
小屋と水場の間から登る登山道はいきなりの草薮となっている。左に昔のキャンプ場を見て右に折れる。ここからトラバースするのだが、草丈は首まであり、道は全く分からない。記憶を頼りに進むが、足場が割れた岩のガレ場状なので大変に不安定である。初めての方はかなり不安になると思う。さらにガレ場の窪みを登り、途中で左の踏み跡に移る。ここでやっと道になる。
すぐに鉄梯子となる。鎖場は鎖を使用せずに登る。みるみる足元の渓谷が遠ざかる。両手を使って大きな岩を越えていく。先程の方が助言してくれた蜂の巣は気付かずに通り過ぎた。キタゴヨウ(松)の樹皮が大きく上から下に剥ぎ取られ、裸の幹は透明な樹液で覆われていた。現役マタギであるKZMによると、昨秋、熊が冬眠する直前に糞が出ないように栓をするため松脂を食べた後だとのことである。
ブナが出てくると、ブナ林を左にトラバースする。キバナアキギリやオクモミジハグマが咲いている。北股沢出合から伸びてきた尾根に出て、ナラの尾根を登る。傾斜が緩くなり一気に視界が開ける。08:55-08鳥居峰である。食事を取り無線を開局すると、御西小屋のGZKと繋がった。大日岳往復者の荷物番をしているとのことである。
登りきった最初のピークが鳥居峰であり、数個の小峰を過ぎて、最後の884m峰は左手を巻く。トラバース道は藪化し足元が不安定である。だらだらと進み、松尾根を登る。
09:54鞍部で標識に従い尾根からはずれ右に折れる。深い溝の中を進むと二手に分かれるので右の溝を進む。湿地を過ぎると、登山道は斜面を横切るが草薮となる。10:04登山道脇に置かれた標識を過ぎる。小さな突起を越えて行く、高度はなかなか上がらない。
ようやく登りとなり、10:10-20珍しくKZMが疲れを訴えてきたので休もうとすると目の上の松に「滝見場」の標識が針金で付けられていた。ここで食事を取る。藪の間から不動滝が僅かに覗けた。無線で呼ぶと大日岳から下山途中のVQOが応答してきた。
10:41-51登山道脇の枯れ木に寅清水の標識がある。左の踏み跡を下っていくとテント場があり、さらに沢に下ると若干の水が流れていた。コップで汲み出納に補充する。10:58登山道は比較的大きな池を巻く、流入する水のない池は半分ほど干上がっていた。
雨量観測所が見えると道は尾根の左側を巻く。涸れ沢の源頭部から左下の草原に下る踏み跡があるが、これは融雪水を利用するためのものである。下山時に誤って入り込まないように注意が必要だ。11:10中峰の標識は破損している。コンクリートの建物跡がある。右の尾根を斜めに上がる踏み跡は水場への道であるが、今回はパス。
森林限界を越えると、藪が次第に酷くなって行く。疲れが溜まって来たので11:35-46食事を取る。草地では登山道の脇に別な道ができている。熊の歩いた跡が道になっているのだ。それまでの好天と変わり、雲が次第に多くなって行く。藪の合間には一面のコゴメグサが道を覆っている。
先を仰ぐと笹原に線状の僅かに窪んだような模様がある。近づいてみると、これが登山道であった。胸までの笹を両手で掻き分け一歩ずつ登るが、かなり体力を消耗する。
12:19二俣には標識が置かれていた。洗濯平を経由する廃道との分岐点である。土砂が動いて裸地化した場所では登山道を見失いやすくなっている。次第に笹が低くなり傾斜が緩くなる。
12:49進入禁止のロープを跨いでガスの中、北股岳山頂に到着する。山頂の標柱には「北股湯ノ平登山道は未整備のため下山しないで下さい」と書かれた標識が立て掛けられていた。
13:01-14:04梅花皮小屋でラーメンを食べ、缶ビールを飲む。AQLが石転ビ沢を登っている。かなり雪の状態が悪く苦労しているようだ。彼が到着すれば、さらに休憩時間が長くなるので出発することとした。
帰りは洗濯平の廃道状況を確認しようと分岐から笹薮に入るが、10mほど進んだ所で道が全く分からなくなり転倒する。視界もなく帰りの時刻も気になるので、ここは急がば回れと戻る。14:31-37北股岳山頂でBBZや杉原氏達と出会う。
14:54二俣を通過、足元が見えないので足首を捻る事のないように慎重に下る。15:32中峰、15:46池、15:52寅清水、16:09-20滝見場を通過する。16:21標識を過ぎ、溝を下って16:33尾根に戻る。17:14-18ようやく鳥居峰に到着する。後は一気に下るのみである。順調に下っていたが、岩場の途中で突然左足首を誰かに掴まれたような感じがして動けなくなった。眼の下は急斜面でこのまま倒れれば大怪我では済まないかも知れない。とっさに右足でバランスを取りたたらを踏むと左足が抜けた。KZMから鎖に足が絡まったと教えられた。
最後の鎖を下るとまた嫌らしい草薮が待っていた。始めての方には道は分からないだろう。17:45湯ノ平山荘に到着すると、釣を終えた2人が夕食の最中であった。
なにはともあれ缶ビールを水に浸け、上流の露天風呂に向かう。露天風呂は砂に埋もれ、湯は途中で止まっていた。恐らく大雨の時に砂が流れ込んだのだろう、時間があれば直すことも可能だが、戻って小屋の下流にある露天風呂に向かった。風呂は屋根こそないものの底も清掃されており温度もちょうど良い。両手両足を伸ばし、満喫する。
小屋に帰って缶ビールを飲み干す。これがあるから山歩きは止められない。釣り人のお2人は河野さんと梶山さん、岩魚汁を頂く。釣れたての尺岩魚が1匹ぶつ切りにされて入っていた。今朝のナラタケを入れて煮込み、4人で山話が弾んだ。
ひたすら飲み、ひたすら話し、ふらふらと1人で露天風呂に入る。頭上は突き抜けたような一面の星空だ。飯豊川の瀬音を聞き、湯ノ平の夜は更けた。
翌日はのんびりと起床。2人と別れ07:30山荘発。07:58北股沢通過、08:37駐車場で自転車に乗る。林道の傾斜は思ったより急だ。快適に風を切り、09:17車に戻った。

コース全図
登山道全図
湯ノ平〜梅花皮小屋

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