登山者情報857号

【2004年09月23日/石転ビ沢〜丸森尾根/井上邦彦調査】

久々に石転ビ沢を登ることにした。2002年09月01日(第657号)山行時の雪渓崩壊が頭にこびり付いている。木内氏や高貝氏に電話をしてルートをイメージする。
天狗平駐車場には殆んど車がない。05:59上の駐車場から歩き出す。小雨が降ってきたので早めに合羽を着る。砂防ダムを越えて山道に入るとブナの倒木が登山道を塞いでいる。よく見ると2本のブナがもう1本のブナを巻き込んで倒れている。右の藪に入りそのまま進んで登山道に出る。この先、さらに倒木があったが難なく跨いで越える。雨が上がったので合羽の上だけを脱ぐ。06:49うまい水を通過、水は順調にパイプから出ていた。涸れ沢を進んで迷い込まないように、白いロープが張られていた。
登山道にはカメバヒキオコシやキバナアキギリが咲いている。彦右衛門ノ平で下山者の足跡を見る。18日に飯豊鉱泉泊、19日御西小屋泊、20日12:00頃に梅花皮小屋から石転ビ沢を下り砂防ダム付近でビバークし、21日朝にようやく飯豊山荘に辿り着いた登山者のものかと思われた。彼にとっては先ほどの倒木も苦しかったであろう。
道脇にヒラタケやエゾハリタケには目もくれず黙々と進む。07:13-25梶川出合で一汗を拭う。ここでカメラを雨天用から通常用に替える。
07:45-49石転ビノ出合で無線機のスイッチが切れていることに気付き、電池を入れ替える。本日のこう手は危険性が高いので、万一の場合はすぐに無線機を使用できる状態にしておくこと、各ポイントで現在地を山岳会の仲間に知らせておくことは単独行にとって大切なことだと思う。
門内沢はすっかり雪がなくなっている。飛び石伝いに渡って石転ビ沢に入り、適当なところで飛び石伝いに渡る。そのまま沢を詰めることも考えたが、部分的に手間が掛かりそうなところがあるので、素直に右岸の夏道に上がると、案の定、深い草原である。合羽ズボンを穿いているもののスパッツは使用していないので靴がずぶ濡れになる。もっとも最近使用している靴は防水がなされていないのだからしょうがない。
夏道が終わった所で川原に出て食事を取る。雪渓の状態を遠く観察しながら、広い川原を進む。草の生えている所は足元が見えないので捻挫をしやすい。できるだけ石の安定した草のないルートを選ぶ。
川原の真ん中に大きな岩があり、この先からいよいよ雪渓となる。岩の上で雪渓をじっくりと観察する。ここからホン石転ビ沢まで、右岸は切り立った岸壁が続いている筈だ。アーチ状の雪渓は薄く、今にも崩れ落ちそうである。右岸にルートを取った場合は身動きができなくなるであろうし、上流のアーチも不安定の様相を見せている。
もとよりここは左岸を進むつもりであるが、左岸に張り付いた雪渓が何時どのように崩れるのかを予想する。一見しっかりした雪渓でも、他の雪渓崩壊の爆風や支えを失うことにより、連鎖反応的に崩れるのは良くあることである。
本流を左岸に渡り、08:23ピッケルを抜き、ヘルメットを被る。無線機からGZKの声が聞こえた。現在地を伝え1時間半後に再交信することとした。斜面を登りいったん雪渓上に出るが、雪渓は氷の塊となっており、スプーンカットや塵を使っても動きが取れない。さらに数m崎で亀裂が岸壁に及んでいる。
雪渓ぎりぎりのガレ場を慎重に進むと、事前に最大のポイントと考えていた岩場に出る。直登して上の草付テラスに上がるのは容易そうだが、そこからの下降はロープが必要である。雪渓は複数の亀裂が入り崩壊寸前である。雪渓との間を見下ろすと、足元はほぼ垂直に切れ込んでいる。ピッケルを肩に刺し、ゆっくりと岩に取り付く。ルートはほぼ垂直だがホールドは豊富である。ただ岩が濡れているためフリクションが効かない。テラスに登った所でルートを躊躇う。このまま左上することは容易であるが、V字状の岩を下るルートが読めない。テラスから数歩戻って真っ直ぐに下ることとした。傾斜はないがホールドが細かい岩屑で埋まっているらしく探せない。近くで雪渓が崩壊した鈍い音が谷間に響いた。両手のフリクションとツッパリで前向きのまま下り、安定したトラバースルートまで下る。そこからは簡単な三点支持で岩場を抜ける。
次は急なガレ場を突破する。足元から発生した落石が音を反響させて、雪渓との亀裂に落ちて行く。次の岩場はさほど難しくはないがトラバース跡のルートを考えながら進み、ズタズタの雪渓を終える。
ここから沢身を進むことも考えたが、ガレの堆積した急斜面が嫌らしいので、若干ホン石転ビ沢対岸の枝沢側を斜めに登る。岩の上から見下ろすと、ホン石転ビ沢の水流がずいぶん下流で本流と合流しているのが分かる。これが雪渓の窪みに微妙に影響しているのだろう。
08:44-48枝沢で喉を潤し、沢底に降りないように登り、中央のやや盛り上がった部分を登る。最近スノーブリッジが崩壊したばかりと思われる雪渓は、中央突破することとした。氷の塊が積もっており、滑る上に動くので厄介である。転んだり挟まれたら事故になるので慎重に通過する。
目の前に滝が現れた。恐らくは先日木内氏が黒滝と勘違いした滝であろう。上部の様子は見当がつくので、大きく左から巻いて滝を越え、09:14-16ピッケルとヘルメットを仕舞う。
何度かガレに足を取られて転びそうになる。難所を越えたので緊張感がなくなったのだろう、09:23-27北股沢出合の清水で食事を取る。
ここから先は通りなれたコースである。黒滝を左岸から巻いて、すぐに沢に降り、末端から中ノ島(草付き)に取り付く。花は殆ど終わっている。たんたんと登山道を詰めて、10:02-49梅花皮小屋に到着する。温度計を見ると15℃を指していた。
小屋で休憩後、北股岳を目指す。道脇には忘れられたように数輪のウメバチソウ・コゴメグサ・イワカガミ・タカネマツムシソウが咲いていた。11:06-09北股岳に立つと、南の主稜線は雲に覆われているが、北の主稜線が鮮やかな秋色を呈していた。
下り始めると、ミネカエデやミネザクラの紅葉が素晴しい。ハクサンイチゲ・ミヤマキンバイといった春の花も見かけた。
11:42-44門内小屋を通過する。時折霧雨、雲が早く、瞬間的に紅葉景色が広がる。11:58胎内山、12:02扇ノ地紙を通過する。GZKと無線が繋がる。雲が次第に多くなってきた。12:26地神山通過、12:33-40地神北峰で食事を取りながら晴れ間を待つが、回復の兆しがないので下山を開始する。
草紅葉の中を下り、13:00丸森峰。標柱の色が剥げ始めている、今度はペンキ持参の必要がある。13:16崩壊跡地を通過して樹林帯に入る。13:32夫婦清水の水量は十分。13:44-05食事を取る。14:21に765m峰を通過し、14:43飯豊山荘に到着した。

急峻な岸壁をへつった所は電波を受信できなかったので
断絶したり飛んでいる

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