登山者情報858号

【2004年09月25-27日/御幣松尾根-飯豊山/井上邦彦調査】

前日に湯ノ島小屋まで入る。車道の終点では取水施設の工事を行っている。小屋周囲のブナ林を散策すると苔生したブナの倒木に熊の糞を見付けた。
車道からブナ林の中に建つ湯ノ島小屋までは幾つかの歩道があるが、標識はない。小屋の脇には2穴の便所があり、蚊取り線香が燃えていた。何かの本で「湯ノ島小屋の別名は蚊ノ島小屋」という一節を読んだ記憶がある。確かに蚊は多い。小屋の後ろには木の箱に沢水が引かれている。木のベンチとテーブルで1人夕食を作る。残念ながら沢水はビールを冷やすには温い。
食事をしていると釣り人が1人現れた。沢を泳ぎながら釣ってきたが、尺(岩魚)はいなかったと言う。これから帰るという彼を見送って、晩酌を続ける。
今度は何処か見かけた方が1人現れた。以前杁差岳で会ったことがあるという。山の話をして、今回は下見と言い残してブナの森に消えた。
小屋の中に入り、寝袋に潜り込む。ビールが効いたのかトイレに立つと、真っ暗なブナ林の樹間に灯りが見えた。軽く声を出して、ドアを開けたままランタンを点けた。ほどなく胸に蛍光灯をぶら下げた2人の男性が現れた。小屋で休憩した彼らは茸採りだという。こんな暗い中、よく探せるものだと呆れる。話しているうちに、小屋のノートに記載されていた加藤政嗣氏と気付いた。彼は時折訪れては湯ノ島小屋の清掃に精を出しているようだ。そう言えば、以前に頼母木小屋で同じように管理人がいない時に自主的に清掃管理をしている方と会ったことがある。このような方々によって飯豊の維持管理がなされていることを改めて感じた。
加藤氏が去って、眠れそうもないのでそのまま食事の準備を始めたが、食欲は殆んどない。02:55ヘッドランプを点けて歩き始める。03:06芦沢に架かる橋を渡る。橋は工事用パイプに足場板で作られていた。狭い急な尾根を登りきって河岸段丘に出る。ここも素晴らしいブナ林である。
03:44尾根に登り始める。星も出ておらずライトを消すと真黒で何も見えない。04:03-13休憩を取る。左手に見覚えのある幕営跡地を過ぎるとすぐ、04:34-45月心清水で梨を食べる。ここからロープのある急登を登りきると尾根上に飛び出る。ライトの光がガスで乱反射している。05:00過ぎにライトを消す。05:25-38空腹が酷くなったので、お握りを食べるが吐き気がする。無理やり水で流し込む。05:58一服平に到着、大江勝広記念碑がある。ここで左手に折れて視界が効く筈の尾根登りとなる。06:24-34お握りは無理なので僻地田楽を食べる。これは小国町の菓子店のヒット作だが、腹持ちも良く山には適している。ガスの中に二つの峰が見える。尾根を忠実に登り、最後は草地の斜面を登りきると主尾根の鞍部に出る。
06:47早川ノ突キ上ゲである。菱形の標識が置かれてあるが、櫛ヶ峰の文字が消えている。ここから紅葉の岩稜歩きとなる。残念ながら視界は20m程度で写真にはならないが、ミネカエデの紅葉と黄葉が見事である。ミネザクラ・ナナカマドも色づいている。ここは飯豊連峰随一の素晴らしい岩稜歩きである。07:13牛首山の標柱を通過する。
07:26-36食事を取る。07:51鞍部手前に「牛ヶ首」と書かれた菱形標識がある。07:54鞍部を通過する。ここからルートは正面の急峻な尾根を避けて右手の草原となる。残雪がある時は嫌らしい部分だ。登山道に草本植物が侵入し、登山者の少なさを感じさせた。主尾根に戻ると岩場を登り、右斜面が切れ落ちた痩せ尾根を進む。足元の岩隙からコースが空中に飛び出ていることが分かる。
08:22正面上部は笹原になると、ここから左にトラバースし、惣十郎清水となる。雪は全て消えており水はない。ここから真直ぐ斜上する踏み跡があるのだが、荒れているので近づかないほうが良い。その先で白骨死体が発見された記憶がある。確か今も身元不明かと思う。コースは右に折れ直上する。幕営跡地のような台地まで行くと山頂の標識が見え、08:30-38大日岳山頂となる。風を避けて休憩を取る。山頂から西大日岳に向かう踏み跡は完全にハイマツに覆われている。廃道と記載すべきだろう。
視界のないまま文平ノ池を過ぎ、09:34-10:25御西小屋で食事を取る。登山者2名が入ってきて今夜は泊まるとのこと、一人きりの夜は避けることができそうだ。荷物を軽くして本山小屋に向かう。草紅葉の草原を進み、10:56-58弘法清水で水を補給する。先ほど無線でGZKから「11時より雨」と連絡があったが、11:11駒形山を過ぎると、本当に雨が降ってきたので慌てて合羽を着る(まもなく止んだが)。11:30-35飯豊山々頂でQVHと繋がる。現在ギルダ原を下山中とのことである。11:47-12:01本山小屋では改造工事の真最中であった。主な工事としては、背後の冬期出入口を完全に塞ぐ、正面玄関の左上に新たに冬期出入口(梯子付)を設け内部に風除室を設ける。外では立派なトイレがほぼ完成に近い状態で仕上げに取り掛かっていた。工事が終了したら新しい小屋を訪問したいと思い、工事の邪魔にならないように早々に退散した。
12:14-16飯豊山々頂に戻る。時折ガスが切れて一部だが視界が広がる。その都度カメラを出す。12:31駒形山々頂を通過する。ウラシマツツジの紅葉が印象的である。12:40-57弘法清水で缶ビールを冷やし、食事とする。13:11草月平では花の終わったタカネマツムシソウが林立し、足元には季節外れのミヤマキンバイが咲いていた。「御西」標柱を過ぎると御西小屋が見え、13:30御西小屋に到着する。
小屋には幾つものザックが置かれていた。大日岳に向かったのだろう。早めの夕食(晩酌)を始めていると、戻ってきた登山者は昨夜門内小屋に泊まり、今日は本山小屋泊、ダイグラ尾根を下るとのことである。残った2人も2階に上がりアルコール抜きとのこと、今日も寂しい夜となった。
04:43餅を2個食べ、ヘッドランプを点けて御西小屋を出発する。倒れている文平ノ池の標柱を脇目に見て、次第に明るくなる登山道を登る。05:49-06:04大日岳山頂で休憩、靴紐を締め直し膝バンドを巻いて下山を開始する。06:07惣十郎清水、06:29牛ヶ首を通過する。フリクションがなく岩が滑り転びそうになる。
07:13早川ノ突キ上ゲから下りかけた時、右手の丈が高い草が動いた。動物である、カメラを片手に下り、滑って転ぶ。幸いカメラに異常はない。「ガッガッ!」と威嚇する声を聞き猿と判断する。右手の岩場で何かが動いているがガスのため確認できない。
07:36-44一服平で梨を1個食べ高度計を1,550mに合わせる。100mほど下った1,440mにはロープが設置された広い急斜面がある。足場を確認しながら慎重に下る。潅木は濡れているので掴むと頭から水を被ることになるので、触れないように下る。1,240m08:07からブナが出てくる。急斜面が多く気が抜けない。
08:18-45月心清水の地蔵尊から左の踏み跡に入ると足場が崩壊して悪くロープが張られている。水場は沢水を使用する。分岐から沢まで1分40秒であった。
月心清水を過ぎるとブナ林になる。どんどんと高度を下げ、アシ沢を渡って、08:33車道に出た。

コース全体
牛ヶ首から大日岳
弘法清水 月心清水
車道から御幣松尾根への取り付き

画像1 画像2