登山者情報884号

【2005年02月08日/860m無名峰/井上邦彦調査】

7:45から8:30までの会議に出席し、職場を抜け出すが、16:30から再協議となってしまったので、下山時間の枠をはめられた。
県道の両側は壁になっており車を停める所がなかなか見当たらず、取り付きから若干進んだ所に車を停める。ザックとスキーを担ぎ09:12出発、前回下山したポイント(大姉沢と小姉沢の間)から取り付こうとするが、雪壁が高く四苦八苦して強引に登る。ここでシールを付けるが、今回はスネークシールを使用した。高度計を180mにセットし、09:26尾根に取り付く。09:52高度計290mで杉林を抜け、10:06高度計350mから痩せ尾根となり松が出てくる。尾根沿いに登れない所は左を巻いて登るが、結構な急斜面であり、何度もストックで雪面を叩いて雪崩層の有無を確認する。大朝日岳から以東岳まで朝日連峰が連なっている。前回同様、雪面にはカモシカの足跡が縦横に描かれている。
10:31高度計470m右上方の急斜面を横断するつがいのカモシカを見つける。撮影しながら進み、ふと左手眼下に目をやると、顎鬚だけが白い黒い1頭のカモシカがこちらを見ていた。10:44高度計530mで松が終わり、ブナが出てくる。11:00-13高度計600mで食事休憩とする。
11:25高度計660mナラの巨樹が出迎える。ここで今冬始めて雪虫を見る。11:29高度計680mでこんもりとした峰に上がる。地形図では620mの平坦地である。ここはブナ林に時折太いブナが混じる。ひと登りで11:44高度計750m上の平坦地(地形図690m)ここもブナ林で太いブナを散見する。ブナの樹下に弾けた芽の殻が散乱している所が数箇所ある。沼山から大きな雪庇の塊が落ちてきている。鞍部に向かって林が続いているが、ここは安全の様子。雪塊で垂れ下がったブナの枝は、膨らんだ新芽となっていた。雪虫、芽の殻、膨らんだ新芽、どれもが春の予感を漂わせていた。
前回同様に最低鞍部には雪庇が出ておらず、11:56-12:00高度計810m難なく県境に出ることができた。県境に出るとすかさず風が吹き、雪も混じってきた。これまでの下着1枚では耐えられず、カッパ上と冬帽子を被る。観察すると、二重稜線的な地形になっているため、雪庇が発生しないようである。
ここから県境稜線を南に向かって登る。新潟県側はウインドクラストしてスキーがシールの効きが悪い。稜線には比較的背の低い林が続いている。山形県側には巨大な雪庇が出ており、亀裂も確認できた。雪庇と亀裂に注意しながら進むと、知らず知らずに高度を重ね、12:25-30高度計935m山頂に到着する。大境山は視界が悪く見えない。セルフタイマーで記念撮影を行う。
夏道の尾根は確認できるが雪庇の様子が分からない。ストックで雪面を叩いて、4m程度垂直の壁になっている箇所を発見する。スキーとストックを放り投げ、思い切って飛び降りる。雪が締まっているので、さほど身体は沈まない。
尾根分岐を過ぎ、ブナ林の小峰まで進む。12:38-44山頂に到着。高度計935mを地形図の870mに調整する。晴れていれば眼前に大境山が立ち塞がるのだろうが、うっすらとしか見えない。ここで地図とコンパスを合わせる。
12:50-13:01尾根の分岐まで戻り、ODDと交信する。下界も同じような天候とのことである。シールを外し、滑降の準備を整える。木1本ない真っ白な尾根が空中に伸びており、その先は千尋の谷を思わせる。先ずは斜滑降とキックターン、さらに片足は進行方向もう片足はブレーキという変則的な滑りで降りる。私のスキーは小さな頃から勝手に身に付いた典型的な我流でとても格好が良いとは言えない。
右手下にブナ林が見える。通常ならそこを目掛けて快適に降りるのだが、今日は勘四郎沢と大姉沢の間、つまり車から離れていない所に下りるつもりである。しかし地形図を見ると複雑怪奇、しかも始めてのコースなので波乱も予想される。幸いにある程度の視界はある。左手は急激に落ち込んでいるので、ストックで雪面を叩いたり弱層テストを行って雪崩の危険性が少ないことを確認し、尾根から外れないように心がけて右手の斜面を下る。
GPSで現在地を確認すると、右により過ぎている様子。左にトラバースするが、左上の尾根は遥かに高い。高度計と地形図から、尾根は急激に落ち込んでいるのだからこのままトラバースを続ければ尾根に出ると判断し、徐々に高度を下げながらトラバースを続行する。
ようやく尾根上に出るとブナ林の快適な滑走となる。雪質はやや重いが、思うように回転ができ、ついつい滑りすぎ気が付くと枝尾根に入り込んでいた。13:40-51高度計270mシールを付けて沢を渡り右の尾根に上がりピークに登ると、雑木林の緩く広いスロープが待っていた。すかさずシールを外し、ターンを楽しみながら下る。
ところが、またもや両側から沢が迫ってきた。14:00素直にシールを付け僅かに戻って右の尾根に上がる。尾根の側面には林道と思われる地形が伸びており、ここを登ると雪原があり杉の植林地であった。送電線と鉄塔があったので、地形図で現在地を確認する。なおも下り、県道が見え始めた時点でGPSにより車を置いた地点を確認する。右に折れて暫く進むと人家の脇に小沢があったので、14:24県道に飛び降りる。除雪された県道を進み、14:26車に無事戻った。

今回のコース

画像