登山者情報903号

【2005年04月30日/大日杉〜飯豊山〜無名尾根/井上邦彦調査】

除雪は大日杉まで終了しているが、雪崩の危険性があるため、上岩倉集落で車両通行止めとなっている。5月2日に検査してOKが出れば開通となる予定である。
大日杉小屋には、登山者2人がいた。聞くところによると昨日入山したが、登り口が分からず大日沢の左岸を登り引き返して来たとのことである。なお1階のトイレも使用できる。
05:49大日杉小屋を出発する。ザンゲ坂はピッケルを抜いてキックステップで登る。朝の雪は硬い。ザンゲ坂の◇形標識のある尾根に出ると、所々夏道が露出していた。新緑の中にマンサクが咲き、足元にはイワウチワが可憐な姿を見せていた。今年初めてショウジョウバカマを見た。ほどなく夏道はなくなり、雪の上を登るが、HZUは前日の結婚披露宴二次会の祟りで酷い二日酔い。NIYと鈴木にやっとの思いで着いていく。
長之助清水の◇形標識を確認する。新緑はこのあたりで終わるが、この上部もブナの花が多く見られた。今年はブナの豊作だろう。06:46御田杉を通過する、標柱は埋まっている。07:10-21食事を取る。剣ケ峰から三国小屋にかけての岩稜には茸雪が嫌らしく着いているのが見える。
調子の悪いHZUと異なり、NIYは快調に登る。鈴木もきちんと登っている。08:06地蔵岳山頂を通過する。ダイグラ尾根を観察すると、やはり嫌らしい雪が着いている。下山コース予定である本山小屋から大岩沢と本社(オムロ)ノ沢の間に伸びている尾根を観察する。最下部は黒くなっている。ブナ林の枝尾根下の尾根から本社(オムロ)ノ沢に下るのが良いようだ。
地蔵清水付近を下っていると、目前の峰をカモシカが駆け登っていった。08:11-14食事を取る。地蔵岳と切合小屋までは登降を繰り返して進むが、雄大な眺めが疲れを感じさせない。HZUの二日酔いもそろそろ抜けてきたようだ。磐梯山の麓に猪苗代湖が見える。
09:09-20御坪の祠は露出していた。日焼け止めクリームを何度も塗り、サングラスを掛ける。草履塚付近を登っている4-5人パーティが見えた。この先、今年HZUが遊んでいる小国町境一周のこだわりで、種蒔山に突き上げることにした。なお、御沢コースは稜線直下の雪庇が崩壊しているので、手前から右に上がることが必要のようである。
ダケカンバの純林を登り、10:01種蒔山に到着する。大日岳・三国岳・七森と展望が広がる。七森の雪庇は見事である。アイゼン跡が続き、所々にデフ棒が立っている。
10:19-35切合小屋の夏入口は雪の山、梯子で南側2階の窓から小屋の中に入り休憩。トイレ1穴はスコップ僅かに突付けば使用できる状態であった。
雪の斜面を登って11:03草履塚山頂に到着するが、ここで鈴木が雪庇の亀裂に腰まで落ちる。ここから夏道を下るが、掘れた夏道に残っている雪は突然潜るので歩きにくい。途中で右の雪上に出て、姥権現手前で再び夏道に戻る。この先は飯豊山まで一部を除き夏道歩きとなる。御秘所は問題ない。御前坂は二段になっており、知らないともうすぐ山頂かと騙される。
11:58一王子に到着すると、小屋が見える。夏道を嫌って右手の雪上を進み、12:05-08本山小屋に到着する。昨秋完成した冬期入口は万全であり、階段を使わなくても夏入口に積もった吹き溜まりから簡単に入ることができる。ここで缶ビールを雪に埋め、三角点を目指す。
12:21-33飯豊山々頂に到着すると先行していた5名の方々が迎えてくれた。ふと見ると、何時もお世話になっている峡彩山岳会佐藤さんである。奈良山岳会のメンバーと共に登ってきたとのこと、さっそく川入方面の情報をお聞きする。お話によると、当初は松ノ木尾根を登ろうと思ったが、昨日朝の雨で増水が激しく、止むを得ず地蔵山経由で登ってきたとのことであった。剣ケ峰は雪の状態が嫌らしかったが、何とか通れないこともなかった、でも下山は通りたくないとのことであった。
12:45-13:35本山小屋に戻り、ラーメンを煮て乾杯。喉が痛くなるこの瞬間に満足。小屋の内部を確認すると、1階入口には吹き込みはなく、引き戸も凍り付いていないので、掘り出せば使用できるだろう。一方、トイレは入口にびっしりと雪が積もっているので、本格的に掘り出す必要がある。
腹もふくれて、下山を開始する。小屋の正面から尾根が続いている。撮影しようとして、2枚目のメモリに余裕がなくなり、18mbの予備用に換える。以後は、撮影を最小限に留める。快適に高度を下げる。振り返ると本社ノ沢源頭部が銀色に輝いている。NIYは頻繁に地図とコンパスで方向を確認する。視界が良く、地蔵岳から観察した地形が頭に入っているので、どんどん降る。
予定通り右手にブナの疎林がある尾根を分けた鞍部から右手の沢に入り、トラバースして先の尾根に上がる。さらに降りながら、地蔵岳へ登るコースを確認する。大又沢本流に穴が開いているのが見え、一瞬緊張する。適当な所でさらに右の斜面を下ると、本社ノ沢対岸にカモシカを見つけた。本社ノ沢に降り合流部を目指すと、多少窪んでいる所があったので右岸から巻くように通過する。
14:36大又沢に出る。下流部は窪んだり穴が開いている所がある。大又沢右岸を下流に向かって斜上する。適当な所からキックステップで直上する。汗が滴る。藪を避け、15:09-19平坦なブナ林に到着し、休憩とする。対岸の降ってきた無名尾根が美しい。
単調な尾根を忠実に詰め、15:44地蔵岳北の分水嶺に到着する。あとはひと登りで15:59-16:00地蔵岳山頂に着くと、東京アルコウ会と書かれたテントがあり、大勢の方が食事をしている所だった。三角点にも1パーティがおり、地蔵岳山頂は大賑わいである。
あとは降る一方である。谷間の新緑が次第に近づいてくる。鉄砲の音が数発、聞こえた。熊狩りであろう。熊がいて、弾が外れた可能性がある。すると慌てた熊がいきなり現れるかもしれない。注意深く周囲を観察しながら降る。スパイク長靴の足跡を見つけた、熊狩りの方だろう。さらに降ると、左下の谷間にオレンジの帽子を被った人間が見えた。猟友会のメンバーだろう。さらに数人が松尾根に集まり、相談しているようである。
16:34御田を過ぎると、新緑に包まれる。16:52ザンゲ坂を通過する。HZUは面倒なのでストックで降るが、結構雪が硬く、腰が着いてしまうが何とかバランスを立て直した。続いてNIYと鈴木がグリセードで滑る。案の定、滑落の訓練となった。何度か滑っているうちに鈴木が起き上がった時、顔に無数の擦過傷が見えた。うろたえて近寄ってみると、ブナ芽の弾けた殻が張り付いたと分かり、一安心。17:10無事に大日杉小屋に到着した。

全行程
本社(オムロ)ノ沢左岸の尾根を下山した

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